不妊治療にはどんな方法があるの?~タイミング法から顕微授精まで
「なかなか赤ちゃんが授からない…」と悩む人は、まずは早めに夫婦で検査を受けに行きましょう。その結果に応じて、おこなうべき不妊治療も変わってきます。
ここでは現在、日本で実施されている基本的な不妊治療についてご紹介します。
夫婦とも特に問題がなかった場合→「タイミング法」
検査の結果、特に大きな異常が見つからなかった場合は、自然妊娠できる可能性があります。そこで排卵日をなるべく正確に予測し、それに合わせて性交渉を持つのが「タイミング法」です。
基礎体温表をチェックするのはもちろんのこと、エコー検査や血液検査、尿検査などもおこなわれます。エコーでは卵胞の成熟具合を確認できますので、排卵の目安をつけることが可能です。
また血液や尿の中には、排卵直前になると「黄体形成ホルモン(LH)」が増えますので、これを測定することで排卵日を予測します。ちなみに月に1度までなら、こうした検査には保険が適用される病院が多いようです。
最近では薬局で購入できる「排卵日チェッカー」もありますが、より正確に予測したい場合はやはり病院で診てもらったほうがいいでしょう。
タイミング法で妊娠できれば、もっとも望ましいといえます。
女性側に排卵障害がある→排卵誘発剤
検査の結果、排卵が安定していなかったり、排卵をうながす「黄体形成ホルモン(LH)」の分泌量が少なかったりした場合は、排卵誘発剤の使用が検討されます。人工的に排卵を起こした上で、通常のタイミング法をおこないます。
代表的な薬は、内服薬の「クロミッド」と、注射薬の「hMG」です。クロミッドのほうが費用も安く手軽なため、まずはそちらで様子を見てから、必要に応じてhMGに切り替えることが一般的です。また両方を組み合わせておこなう場合もあります。
タイミング法で妊娠しない、子宮頸管に問題がある→人工授精
一般的に半年間、タイミング法で妊娠しない場合は次の治療を考えます。女性側に大きな不妊原因がなく、また男性からも質のいい精子を得られる場合は、人工授精が検討されます。
人工授精は、精子を子宮に注入する治療法です。特に原因がないのに自然妊娠しない場合や、女性の子宮頸管に精子をブロックする抗体がある場合などにおこなわれます。
まずはタイミング法と同じく、排卵日を予測します。必要に応じて排卵誘発剤を使うこともあります。そして精液を遠心分離にかけ、運動率の高い質のいい精子だけをより分け、子宮に注入するという流れです。
人工授精の成功率は病院によっても異なりますが、1回につきおよそ5~10パーセントといわれています。また排卵誘発剤を使って複数の卵胞を育てたほうが、確率は上がることが分かっています。
一般的に5回ほどチャレンジして妊娠しなかった場合は、次の体外受精に進むケースが多いようです。ただし病院によっては1~2回で体外受精をすすめることもありますし、体外受精と人工授精を併用するところもあります。
人工授精で妊娠しない、卵管が閉塞している→体外受精
人工授精でも妊娠が成立しない場合や、女性側の卵管が詰まっていて受精卵が移動できない場合などに検討されるのが体外受精です。
今度は精子のみならず卵子も採取し、人工的に受精させて培養してから、子宮内に移植します。
条件としては、女性の子宮に異常がないこと、また男性側の精子の質がいいことです。まずは採卵をおこないますが、自然な排卵では採取できる数が少ないため、確率を上げるために排卵誘発剤を使うことがほとんどです。
また自然な排卵を一時的にストップさせるために「スプレキュア点鼻薬」という薬を使います。
複数の卵子を採卵したら、同じ日に採精もおこないます。人工授精と同様、精液の中から運動率の高い精子だけをふるいにかけ、シャーレの中で卵子にふりかける形で受精させます。そして培養させ、うまく育っているものだけを2~5日後に子宮内に戻します(胚移植)。
多胎を避けるため、基本的に移植する受精卵は1つだけです。使われなかった受精卵の中でも質のいいものは、今後のために冷凍保存されます。
体外受精の成功率は25~30パーセントで、人工授精よりはやや高くなります。特に受精卵の質の良さが重要ですので、女性が40歳を過ぎると確率は低くなるといわれます。
また体外受精は、1回につき費用が50万近くかかってしまう点が大きなネックです。自治体からの助成などを活用しても半分近くは自費になるため、経済的な壁が立ちはだかるケースも多く見られます。
精子の量や運動率に問題がある→顕微授精
人工授精や体外受精をおこなうためには、精子の質がいいことが条件となります。検査の結果、精子の量や運動率に問題があった場合は、卵子の中に直接、精子を送り込む「顕微授精」が検討されます。
卵子と精子を採取し、それをシャーレの中で受精させて子宮に移植するという流れは、体外受精と同じです。ただ受精の仕方が、通常の体外受精では卵子に精子をふりかけるのに対し、顕微授精では卵子の中にガラス管を使って直接、注入します。
運動率の低い精子は、自力で卵子の壁を破って入っていくのが難しいためです。
顕微授精の成功率は、およそ20パーセントといわれますが、もちろん病院や夫婦によっても異なります。
これらの他にも、妊娠を持続させるためにおこなうホルモン剤の投与や、男性側の手術(精子の通り道が塞がっている場合など)、女性側の手術(子宮筋腫や子宮の形態異常)など、さまざまな不妊治療があります。
いずれにしてもまずは検査を受け、不妊原因の特定から始めることが大切です。
By 叶恵美