牛乳は健康にいいのか悪いのか?~意見が分かれますが本当はどっち?
情報過多の今、特に誰もが気になる「食と健康」については、さまざまな意見が入り乱れています。
その中でもヒステリックに議論が巻き起こっているものの1つが「牛乳」です。
果たして牛乳は体にいいのか悪いのか、なるべく冷静な視点から考えてみたいと思います。
栄養豊富な食品であることは、間違いない!?
私たちは子どもの頃から「骨が丈夫になるよ」「背が伸びるよ」などと言われて、牛乳を半ば強制的に飲まされてきたと思います。
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とにかく牛乳=体にいいもの、として教えられてきました。
確かに牛乳には「タンパク質・脂質・炭水化物」の3大栄養素のほか、ミネラルやビタミンもわりとバランスよく含まれているのは事実です。
というのも、もともと子牛を育てるための食糧ですから、人間の母乳と同様、さまざまな栄養素が豊富に含まれていて当たり前なのです。
ただしビタミンCは子牛が自分の体内で合成できるため、牛乳にほとんど含まれていません。
ですから子牛にとっては「完全栄養食」であっても、人間にとってはそこまで完ぺきなものとは言えないでしょう。
ちなみに牛乳に含まれる「トリプトファン」という必須アミノ酸は、精神の安定に役立つため、安眠に効くといわれています。
「眠れない夜はホットミルク」と昔から言われてきましたが、確かにこれは事実のようです。
牛乳は骨を丈夫にするのか、もろくするのか?
しかし牛乳の「骨を丈夫にする」という効果については、真っ向から反対する意見が多く寄せられています。
まずは「牛乳のカルシウム論争」について見てみましょう。
確かに牛乳には、100グラムあたり約110ミリグラムのカルシウムが含まれており、小魚やヒジキなどと比べると含有量は多めです。
またコップ1杯飲むだけでOKですから、手軽にカルシウムを摂取できるという点では優れているといえるでしょう。
しかし牛乳反対派は「牛乳にはカルシウムの吸収を妨げるリンが含まれているから、吸収率は良くない」と言っています。
実際、牛乳100グラムあたり、約93ミリグラムのリンが含まれているのは事実ですし、リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を妨げます。
ただし通常の食品をとる限り大きな問題になることはなく、むしろリンがカルシウムと結合することによって骨に沈着します。
リンをとらなければカルシウムの吸収自体は確かに良くなりますが、骨に沈着せず尿として排出されてしまうのです。
ちなみに牛乳反対派は「牛乳を飲む地域の人ほど、骨粗しょう症のリスクが高い」と批判しますが、これも牛乳との因果関係はまだはっきりと分かっていません。
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たとえば北欧諸国は骨折率が高いのですが、これは日照時間が短いことが原因とも考えられます。
ですからつとめて客観的に見て、牛乳は「常識の範囲内にとどめる限り、カルシウムの吸収はいい食品だ」といえるのではないでしょうか。
「乳糖」の問題~牛乳を分解する酵素の量は、人による
牛乳反対派の代表的な意見の1つに「乳糖」もあります。
人間は、牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)を分解する酵素(ラクターゼ)の量が少ないから、お腹に良くない、というものです。
確かに乳糖を分解するためにラクトースは必須の酵素であり、母乳を飲む赤ちゃんは豊富に持ち合わせています。
しかし乳を飲む必要がなくなるにつれ減っていき、15歳ごろには10分の1にまで低下するといわれているのです。
特にもともと牛乳を飲む習慣のなかった日本人は、ラクターゼの量が世界でも少ないとされています。
牛乳を飲むとお腹を下すという人はまさにこれが原因で、「乳糖不耐症」と呼ばれます。
その一方で問題なく飲める人もいますから、「牛乳の合う体質と合わない体質」があることは間違いないでしょう。
ただしチーズやヨーグルトなどの乳製品は、乳糖の一部が分解されているため、「牛乳でお腹を壊す人は、他の乳製品を摂取しましょう」と牛乳業界は呼びかけています。
牛乳はがんのリスクを上げるのか、下げるのか?
もう1つ重要な牛乳論争に「発がん性」があります。
牛乳推進派が「牛乳は免疫力をアップし、がんにかかりにくい体を作る」とうたっているのに対し、反対派は「牛乳には発がん性がある」と真逆の意見をぶつけています。
牛乳とがんの関係については、調査である程度のデータが得られています。
特に因果関係が認められているのが「前立腺がん」と「乳がん」です。
前立腺がんの場合、牛乳でカルシウムを摂取することで、血中の「ビタミンD」の濃度が下がることが原因ではないかと考えられています。
ビタミンDは、カルシウムを有効活用するために欠かせない栄養素ですので、カルシウムを過剰摂取すると消費されすぎてしまうリスクがあるのです。
また乳がんの場合は、牛乳に女性ホルモンが含まれていることが原因とされています。
現在、販売されている牛乳は妊娠中の牝牛から搾乳されており、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモン量が多いのです。
乳がんは女性ホルモンと深い関わりがあるため、過剰に摂取すると発がんのリスクが高まるのではないかといわれています。
一方、大腸がんや膀胱がんなどは、牛乳による予防効果が指摘されています。
大腸がんの場合、カルシウムが大腸がんを促進させる「胆汁酸」と結びつき、がんの発生を抑えるからではないかと考えられます。
このようにして見てみると、「結局、ほどほどにとどめるのが1番」ではないかと思えてきます。
体質に合わない人や、牛乳が好きではない人が無理に飲まなくてはいけないほどのものではなさそうですし、かといって好きな人に「一切やめろ!」と言うほどの悪者にするのは行き過ぎではないでしょうか?
どうしても飲みたい人は、他の食生活のバランスもきちんと取った上で、多くて1日に2杯程度にとどめたほうが安心でしょう。
最近はヒステリックな健康議論がとにかく多いのですが、よほどの過剰摂取をしない限り1つの食品だけで病気になることは考えにくいものです。
要は生活全体のバランスを整え、何事も適量にとどめることが大切なのだと感じます。
By 叶恵美
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