睡眠不足で深夜残業している人の脳は飲酒もしないのに酩酊状態!?
2014年の3月に、厚生労働省が「健康づくりのための睡眠指針」をまとめました。
それによると、朝おきてから15時間たつと、酒気帯び運転のときと同じ程度に作業能率が落ち、17時間たつと飲酒運転のときなみに低下するそうです。
深夜残業をしている人は、酩酊(めいてい)状態で仕事をしているようなものだということになります。
睡眠不足や不眠は効率を低下させるだけでなく、生活習慣病やうつ病など精神疾患にもつながるそうです。
眠りについては、さまざまな誤解もあります。
90分の倍数で眠れば短くても大丈夫だとか、レタスを食べるとぐっすり眠れるなど、ちまたには誤った情報もあふれているようです。
健康的な生活のために、科学的で正しい理解をすることも大切ではないでしょうか。
睡眠不足で自動車に乗るのは酔っ払い運転も同然です
睡眠不足は作業効率を低下させ、事故やヒューマンエラーの原因になります。人が十分な能力を維持していられるのは、せいぜい12時間~13時間だそうです。
起床後15時間以上たつと、アルコールを飲んだときと同じ程度の能率に落ちてしまいます。
朝6時に起きた人は、9時以降に自動車の運転をするとかなり危険な状態になるということです。
また、睡眠不足が連日つづくと、どんどん能率が落ちているのに本人は眠気を感じなかったり、効率が低下していることに気がつかないことも多いそうです。
自分では頑張って働いているつもりでも、実際にはたいして仕事がはかどっていないということがあるのです。
睡眠不足の人は精神障害になりやすい!
アメリカの一般市民を対象とした研究により、不眠の人ほど不安や抑うつになりやすいことが分かっているそうです。
日本の高齢者を対象とした調査でも、寝つきにくい人ほど抑うつ状態になりやすいことが分かっています。
健康な人を睡眠不足にさせると、不安や被害妄想が発生し、感情をコントロールしにくくなったり建設的な思考ができなくなるなど、心の健康が損なわれます。
眠らないでいると脳の代謝が低下して、ストレスホルモンが増加するからだそうです。
「90分の倍数で眠れば短い睡眠でもOK」というのは誤り!
人にとって必要な睡眠時間には個人差があり、6時間以上8時間以下が標準です。
人により異なるため、これより短かったり長かったりしても良い場合もあります。「8時間が最適」というのは俗説に過ぎません。
睡眠には脳を休めるノンレム睡眠と、体を休めるレム睡眠がありますが、このサイクルが90分程度であることはよく知られています。
そこから、「90分の倍数の睡眠時間をとるのが良い」と言われることがありますが、このサイクル時間そのものは人によっても日によっても変わるため、正しくないそうです。
また、「訓練すればねむる時間を短くできる」という俗説もありますが、眠りは意志や訓練で短くすることはできないそうです。
こうした努力をすればするほど心身に不調をきたすことになったしまいますので、気をつけましょう。
朝食をとらないと、睡眠リズムが不規則になる!
日本の成人を対象とした調査により、睡眠と覚醒のリズムが不規則な人には、朝食をとらないか、朝食の量が少ない人が多いことが分かっているそうです。
中高生を対象とした研究でも、朝食をとらない生徒ほど眠りが浅くなることも分かっています。
また、ブラジルの研究では、夜食などで摂取したカロリーの多い人ほど、睡眠効率が低くなることが分かりました。
「寝つけないときには軽く飲酒すると良い」は、逆効果!
日本人男性のおよそ半分、女性の2割弱が週に1回以上の寝酒をしています。
「眠れないときには酒を飲む」という人の割合が、世界10カ国の平均で19.4%なのに対し、日本では30.3%と非常に高いそうですが、必ずしも効果はありません。
短期的には飲酒によって眠りにつきすくなりますが、それを長くつづけると、眠りが浅くなり睡眠時間も短くなってしまいます。
また、飲酒は「睡眠時無呼吸」を悪化させるとも言われています。眠れなくても「お酒」に頼ってはいけません。
タバコを吸うと眠れなくなる!
寝る前にコーヒー、緑茶、ココアや栄養ドリンクなどカフェインを含む飲み物をとると眠れなくなることはよく知られていますが、タバコにも同じような弊害があるそうです。
ニコチンには覚醒作用があり、喫煙によって不眠が引き起こされます。
喫煙は睡眠の質を低下させることも分かっています。睡眠中の脳波を調べた研究では、喫煙者は非喫煙者に比べて眠りが浅いことが分かりました。
また、喫煙は睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを高めるそうです。眠れないという人は禁煙をすべきでしょう。
睡眠不足は生活習慣病のリスクを高める!
眠る時間の短い人ほど、肥満、高血圧、メタボリックシンドロームなどの発症リスクが高いことも分かっているそうです。
ねむりが足りないと食欲が増す一方で、体を動かすことがおっくうになるため運動不足になりがちです。
それで、メタボなどになりやすくなるのでしょう。エネルギー代謝のホルモンも低下するため、血糖値が上がるとも考えられているそうです。
アメリカのエール大学の研究では、睡眠時間が7時間の人を基準にすると、5時間以下の人の糖尿病発症率は2.6倍、8時間以上の人は3.6倍になることが分かったそうです。
短かすぎるのだけでなく、長すぎるのも良くないようです。
「レタスを食べればぐっすり眠れる」は間違い!
レタス類には眠りに影響する物質が含まれているものがあるため、睡眠に効果があると言われることがありますが、正しくないそうです。
普通のレタスをいくら食べても眠りにはまったく効果がありませんので、無駄な努力です。
年代別に必要な睡眠時間の目安は、10代前半までは8時間以上、25才で7時間、45才で6時間半、65才で6時間だそうです。
加齢とともに必要時間は短くなりますが、これはあくまでも目安です。個人差がありますので、「ぐっすり眠れた」と感じられる時間を自分で見つけることが大切なのでしょう。
by 水の