Somartaというブランドの作風は本当に変わったのか?
デザイナー廣川玉枝さんにより作られたブランド「Somarta(ソマルタ)」の服は、ファッションと言うよりは限りなくアートの領域にあるものに見えました。
しかし、シーズンを重ねるごとにその作風は徐々に変化してきています。
最新のコレクションは、従来のアーティスティックな魅力を保ちつつも、ファッションというジャンルに歩みよったデザインです。なぜ作風に大きな変化が現れたか、ブランドの軌跡を見ることで分析してみましょう。
Issey Miyakeで学んだニットのノウハウと、旅で得たインスピレーション
Somartaのデザイナー廣川玉枝さんは、文化服装学院デザイン科を卒業後、かの有名なIssey Miyakeで8年間働いていました。仕事のなりゆきでニット担当の部署で服について学んだことが、その後の服作りに影響を与えたようです。
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廣川玉枝さんは2006年の3月、30歳で独立しSomartaを立ち上げました。1stシーズンのコレクションテーマは「The Secret Garden」であり、ロンドンなど旅先の建物で見た庭にインスピレーションを得て作られたものです。
初期のコレクションには民族的なモチーフやレースの入ったもの、ニットを使ったボディースーツなどが頻繁に登場します。また他のブランドと違い、一年を通して同じテーマのもと制作を行うのも、同ブランドの大きな特徴です。
特徴的なボディースーツ!計画通りに制作された斬新な服たち
▲画像の服は、総レースのボディースーツですが、Somartaと言えば、きっと多くの人が上記のようなものを思い浮かべるでしょう。コレクションで何度も登場し強烈な印象を与えたため、一般に同ブランドの定番として広まりました。
この特徴的なボディースーツは、人というすでにデザインが決まっている物体を、変化させ美しくみせるにはどうすればいいか、という考えから作られたものだそうです。筋肉にそってきれいに布をかぶせるための工夫がされています。
実は、ボディースーツをはじめ最初の3年間に発表されたものは、独立以前にあらかじめ計画されていたものだそうです。テーマもふくめ、事前にどのように見せ、何を伝えたいかを決めた上で制作されました。
客観的な美しさを考えたすえに作られた、こだわりのデザイン
以上のことから、Somartaの服はよく計算し、非常に考えられた上で制作されたものであると予想できます。デザイナーがただ単に作りたいものを形にしているのではなく、どのように見えて評価されるかまで想定しているのでしょう。
▲以上のことを踏まえてあらためて服を見てみると、たしかにどう人の目に映るのかを意識した作りになっているように思えます。上の画像は2013年春夏のもので、オーストリア旅行で見つけたものがテーマになっているそうです。
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ドイツ語圏で見つけたアールヌーヴォーを観察し、そのなかにあるジャポニズムに興味を惹かれてデザインされました。デザイナーは日本の美術が持つ美しさに感銘を受け、まだまだ探求していきたい様子だったそうです。
西洋的なデザインから東洋のデザインへの接近
▲そして2014年の春夏コレクションでは、ますますアジアの雰囲気を強めたデザインにしています。洋服というよりは、日本の着物を連想させるようなものに仕上がっており、画像の服も羽織りのような感じです。
また一方では、エジプトなど中東の雰囲気を感じることができ、見方によっては各地のエスニックな要素をミックスしたものにも捉えられます。このあたりは、各地を旅するのと民族的なものが好きということが関係しているのでしょう。
コレクションの変化とテーマから考えると、一見してアート性を前面に押しだしたデザインから、人が着る服に歩みよったものに変えたという考えは間違いかもしれません。変化の原因はもっとシンプルで別のことに思えます。
デザイナーが興味をもっているものが変わっただけ?
おそらく、デザインはコレクションを発表するごとに大きく変わっていますが、デザイナーの考え自体は変わっていません。変化したのは単に、インスピレーションを受けるものが西洋のものから東洋に近いものになったからでしょう。
ですから服をよくみてみると、昔と変わらず先鋭的で斬新なSomartaの服であることがわかるはずです。最近の服が人に歩みよったデザインに見えたのは、単に日本的であるから親しみやすかっただけでしょう。
つまり作風が、実はまったく変わっていないというのが正しい見解ではないでしょうか。本質的なところは昔のまま、興味の対象が移り変わることで、今後も誰ひとり予想もできないような進化をとげていくことでしょう。
とてもアーティスティックなデザイン性が特徴的なSomartaの服は、デザイナーが旅で見聞きしたものが、デザインに強く影響をおよぼしているようです。おかげで、シーズンによっては作風が変わったかと思うほどの変化を遂げます。
ですが本質的な部分はブランド設立当初から変わっていません。現在も最初の頃と同じように作られています。ですから今後も、緻密な計算と深い考えのもと、世間をにぎわす独創的な服が次々と生みだされていくでしょう。
また総レースのボディースーツ、通称「スキンシリーズ」も以前と変わらず発表され続けています。もしかすると、この「スキンシリーズ」に大きな変化がおとずれた時こそ、本当に作風が変わる時なのかもしれません。
By 筒井
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