writtenafterwardsの服をファッションと呼ぶべきか?
writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)は、服を単なる服としてみせません。立ち上げ当初からさまざまな演出を試みると同時に、服自体のデザインも一見して、果たしてファッションと呼んでいいものか迷うようなものです。
人が着ることよりも、ヴィジュアル的な強さやインパクトを重視しているようにみえ、美術のテキスタイル作品のようでさえあります。同ブランドの服は、本当にファッションという枠組みにあるものだと言えるのでしょうか。
多くのブランドに求められているものとは?
writtenafterwardsは2007年に立ち上げられたファッションブランドです。デザイナーの山縣良和と玉井健太郎はイギリスのセントラル・セント・マーティンズでデザインなどについて学んだあと、同ブランドをはじめました。
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玉井健太郎は2009年に辞任した(現在はASEEDONCLOUDを立ち上げ活動中)ので、現在は山縣良和がひとりでデザインしています。ブランドの特徴としては「服」というものにとらわれない作り方や表現方法が挙げられます。
多くのファッションは「服」である以上、顧客や話題性、ブランドのカラーをあるていど考えたうえで毎シーズンのコレクションを作らざるを得ません。売ることが前提としてあるので、ある意味では当然のことでしょう。
ブランドのカラーを持たない、自由気ままなブランド?
ですが同ブランドは発表当初から、上記のことを気にも留めていないような服作りをおこなっており、はじめて目にした時の印象は「奇抜」の一言に尽きます。というのも、他と比べてまるでファッションに見えないからです。
▲上の画像はデザイナーの卒業コレクションのものですが、「見えない服」というテーマのもと『はだかの王さま』の話の続きを服で表現しました。コレクションというより、一種のパフォーマンスに近いものに見えるでしょう。
山縣良和はファッションは単純に「服」とイコールでつながるものではなく、あらゆるもののなかに落とし込める表現方法のひとつだと考えているそうです。ですから、コミュニケーションツールとして衣服をあつかっています。
コンセプトは「表現」としての服、ファッションの役割に重きをおく
ブランドのコンセプトは「流行の成り立ちや本質を伝えること」、そして「創造性を持って“今”を表現していく事」だそうです。一般に着られている「流行によって成り立つ服」とは、対照的な存在であると言えるでしょう。
ただ、はじめからコンセプト通り本質に重点をおき、服の表面的なきらびやかさやブランドのカラーを意識しなかったわけではないそうです。むしろ最初のうちは、服自体のことも考え洋服に魅せる要素をくわえようともしていました。
ですがやっているうちに「きゅうくつだ」と感じたそうです。おそらく服という枠組みに収まろうとするあまり、コンセプトでもあるコミュニケーションツールとしての役割が十分に果たせないものになってしまったからでしょう。
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ファッションを拡張していくことを目指すファッション
別の言い方をすれば、服に「広がり」がなくなったということです。表現の幅が狭ければ、当然伝えられるものもわずかになってしまいます。だからこそファッションの枠組みにとらわれない発想を持ち続けることが重要です。
▲初期の試行錯誤のおかげか、その後writtenafterwardsの服はテーマに強いストーリー性とメッセージ性を持たせ、コレクションの在り方やファッションに対する人々の姿勢に、一石を投じるものとなっていきました。
画像は2009年の春夏コレクションのものであり、テーマは「prince prince prince」です。女性らしさを感じる衣服を、あえて男性マネキンに着せることで崩れた、王子のイメージを通して性や概念への考えに変化を与えました。
はたしてファッションか?それとも単なるテキスタイル作品か?
▲こちらに映っているものはメルボルンで展示されたもので『ブラジャーとパンツ』という作品です。「田舎町に化け物みたいに巨大な人間が住んでいて、子どもたちがその下着泥棒をする」というストーリーのもと制作されました。
展示という形からもわかるように、コレクションではなく純粋な美術作品として飾られたもののようです。しかしデザイナーにとっては上記も「ファッション」の一形態であるそうで、ブランドでやっていることと変わりありません。
以上を踏まえてwrittenafterwardsは果たしてファッションと呼べるかと考えてみると、ある意味ではYESであり、またNOであると言えるでしょう。ただ、これからのファッションに幅を持たせる存在だということだけは確かです。
writtenafterwardsは服をコミュニケーションツールのひとつとしてあつかう異色のブランドです。コレクションを見た人々は既存の価値観をゆさぶられ「これが本当にファッションか?」と首をかしげることになるかもしれません。
しかし、今現在ファッションと思われているものが絶対的に正しいかと言われれば疑問が残ります。ものごとは常に変わっていくものですし、価値観は時代とともに表現者たちの手で更新され進化していくものだからです。
ですから、同ブランドがしている「ファッションによってファッションを疑う」とい行為は、ジャンルを更新するのに欠かせません。よって上記の点を踏まえれば「writtenafterwardsはファッションだ」と言えるでしょう。
By筒井
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