統合失調症の発症から回復までと再発
統合失調症は発症した後に安定した状態にあっても、再発を何度か繰り返すことで知られています。
発症から再発を繰り返す可能性が高い時期、これを「進行期」と呼びます。
その後、再発が落ち着くようになると「安定期」と呼ばれるに至ります。
不安定な状態を「進行期」と呼んでいる
「進行」と表現しますと、その間どんどん病状がひどくなっていくというイメージを持ってしまうかもしれません。
しかし、このような理解は正しくありません。発症の時点が最も激しい場合も少なくはないからです。
スポンサーリンク
あくまでも病気が落ち着いていない状態、不安定な状態を「進行期」と呼んでいると理解すると分かりやすいかもしれません。
病気になってからの3つの段階
発症してから再発に至る前までの段階を1クールと呼ぶとすると、その1クールの間にもいくつかの段階が存在しています。
発病してすぐの時期には、妄想や幻覚などの激しい症状が全面に出てしまいます。この時期を「急性期」と呼びます。
その後、症状は若干落ち着き、気持ちがどんどんマイナスにふれていく「消耗期」が始まります。
周囲を信頼できずに孤立化が激しくなる時期もちょうどこれくらいだと言われることがあります。
その後、症状は徐々に収まっていき始めます。この時期は「回復期」と呼ばれます。
最も再発しやすいのは5~10年目の時期?
前述しましたように、回復期に入って症状が良くなってきても、その後再発してしまうことも珍しくはありません。
最も再発しやすいのは5~10年目の時期だと言われています。発病後5年に限ると80%もの人が再発をしてしまっているようです。
複数回繰り返してしまうケースも決して珍しくはありません。症状が落ち着いたからと言って、楽観視することはできないのです。
このような病気ですから、非常に大切となるのは周囲の理解と協力です。
被害妄想に陥ってしまい孤立してしまうことが多いため、十分なサポートをしてもらわなければ立ち直っていくことができないのです。
参考記事:統合失調症の再発ではどのようなサインが見られるのか
進行期の過ごし方
発症から回復に向かい、再度再発を繰り返してしまう。統合失調症はこのようなサイクルを持っています。
再発のリスクが高い時期を「進行期」と呼んでいますが、この時期はどのように過ごしていくべきなのでしょうか?
「まだ繰り返すおそれがあるんだから治療に専念していた方がいいんじゃないの?」このように思っている方も多いかもしれませんが、これは正しくはありません。
できる限りこれまで通りの社会生活を経験して、再発をしないように訓練をしていくことが大切なのです。
治療を行いながら社会復帰をすることは決して無理なことではありませんし、精神科医などはそのような形を推奨しています。
参考記事:統合失調症患者の心理社会的療法SST(社会生活技能訓練)とは?
安定期はどれほどまでに回復する?
統合失調症などをはじめとする精神疾患に「完治」という概念はありません。
あるのは「寛解」と呼ばれるある程度症状が落ち着いて、異常がほとんど見られなくなった状態のみ。
統合失調症の場合には、再発がほとんどみられなくなった「安定期」が寛解に該当すると思われるかもしれません。
スポンサーリンク
しかし、再発をしなくなったからと言って症状が見られなくなるとは限りません。
人によって回復の度合いが異なっているのです。
ある調査によると、ほとんど症状が見られなくなり寛解をするのは4人に1人程度という報告がされています。
4人に2人は定期的に通院をして周囲の理解のもと、どうにか社会生活を営んでいます。
のこり1人(25%)に関しましては、残念ながら一人で自立した生活を送るには難しいほどの症状が残ったまま、その状態で生活を続けていっているわけです。
もはや不治の病ではない!
統合失調症が精神分裂病と言われていたころは、一度かかったら一生入院しなければならないという偏見も根強く存在していました。
残念ながらそのイメージはまだ完全に払しょくされてはいません。しかし、実際の治療現場では状況は大きく変わっています。
治療に効く薬が普及したことによって、治らない病気ではなくなったわけです。
薬の効果がいかに高いといえども、「すぐによくなる病気である」とは言い難い現状です。
たとえば、初期の激しい急性期の症状は少なくとも数カ月は抑えるまでに時間が必要となります。
その後、症状が若干落ち着き消耗期を経て回復期、そして安定期へと進行していくわけですが、安定するまでには最低でも5年ほど見積もっておく必要があります。
ある研究によると、5年以内 に症状が完ぺきに落ち着いて回復に至った方は、7人に一人程度だったといわれています。
逆に言うと、7人に6人は安定するまでに5年以上の期間がかかるというわけです。
「治った」という状態の各用語
私たちは病気が「治った」という表現を日常的に用いています。
しかし、医学的には様々な状態が存在しています。
・治癒
最もわたしたちの感覚に近いのは「治癒」と呼ばれる概念でしょう。これは、病気がなくなってしまった状態。風邪やインフルエンザなどに用いられる概念です。
・寛解
これに対して病気自体は消失していないが、症状がなくなっている状態というのも存在しています。
極端な例ですと、季節性の花粉症などが想像しやすいかもしれません。
春になるとスギ花粉が飛散して涙やくしゃみ、目のかゆみなどに悩まされる方は多いでしょう。
しかし、花粉の飛散が終わる夏前になると症状は落ち着きます。
けれども季節が巡るとまた症状が出る。花粉症は毎年寛解状態になっていると表現することもできるわけです。
統合失調症には「治癒」はないと言われています。
常に再発の可能性を否定することができないからです。そのため、一般的には寛解したと診断されるわけです。
・回復
寛解よりも一歩進んだ状態が「回復」と呼ばれる状態です。この状態はただ症状が治まっただけではなく、発病前に限りなく近い状態まで状態が戻ったようなケース。
症状がおさまったとしても、以前とまったく同じに戻るとは限らないのが統合失調症の特徴。
ですから、治療にあたっては回復の状態を目指していくわけです。
・リカバリー
回復に至らずとも社会生活を送ることはできます。周囲の方が様々なサポートをすることによって、「本人が満足できる」状態に持っていく。
これを「リカバリー」と呼んでいます。
スポンサーリンク