統合失調症の患者はなぜ服薬を自己判断で中止してしまうのか?
統合失調症の治療は、非常に長い期間にわたります。
再発がなくなる安定期に入るまでには、少なくとも5~10年程度は必要だと言われています。
安定したのちにも薬を服用していなければ、再発リスクが高まってしまうこともあるようです。その中で、実に半数以上の方が治療の途中で服用を中止しています。
実際の調査結果などを見てみますと48%もの人が自己判断で辞めたことがあると回答しているのだそうです。この調査は、病気の知識があって治療に積極的な層をターゲットに行ったもの。
ですから、患者さん一般で考えると相当数の方が辞めたことがあるのではないでしょうか。
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10年近くに及ぶ治療中に服薬することの大変さ
「中断したことがありますか?」という質問は非常に幅があることに気づくかもしれません。10年近くに及ぶ治療の中で、一度も欠かさずに薬を飲み続けるのは並大抵の努力ではありません。
数か月間薬を飲んでいなかった、これならまだ問題は少ないでしょう。中には通院自体を中断したことがある人も多いようです。
注目すべきなのは、複数回中断を経験したことがある人が実の多くの数に上るということです。一度やめてしまうと、そのまま心が折れてしまって「癖」がついてしまうという側面もあるのかもしれません。
服薬を自己判断で辞めると、病状が悪化・再発することも十分考えられます。苦しいかもしれませんが、努力しながら服薬を続けていくようにしましょう。
服用を中断してしまう4つの理由
薬の服用を中止してしまう、このような事態を防ぐためには、理由を知っておくことが非常に大切となります。実際の患者さんやご家族に対するアンケート調査を元にした分析を紹介いたしましょう。
1.長期にわたる治療
一般的に言われている理由、それが統合失調症の治療が長年にわたるからという点。10年以上の期間服用を続けなければならないことも多いため、ある程度の期間は中断をしてしまうこともあるでしょう。
2.病気だという認識がない・認めたくない
治療の比較的初期の段階で服用を中止してしまうことも珍しくはありません。これは、統合失調症患者さんには「病識」がないことが多いからでしょう。
自分自身では病気だと思っていないですし、プライドもあるでしょう。これが大きな中断の原因となっているのです。
3.副作用
忘れてはならないのが、抗精神病薬には強い副作用もあるということ。たまらない眠気に襲われるなどすることがありますので、それをつらいと感じて自己中止してしまうケースも多いのです。
この理由の場合、病識があったとしても中止をしてしまいかねません。このようなケースも少なくはないんだ、ということはご家族は忘れないようにしていきたいものです。
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4.治ったと勘違い
投薬によって病状がある程度落ち着きますと、一見すると健康な状態に見えることがあります。この時点で薬の服用をやめてしまうケースも珍しくはありません。
しかし、再発の可能性が高いのが統合失調症の特徴。よくなったとしても、それを自己判断で決めつけるのは良くないのです。
強い副作用が出やすかった従来薬
統合失調症の患者さんが、自己判断で勝手に服薬を中断してしまう。これは良くあることですが、その理由には様々なものが考えられます。
その中でも典型的なのが、「副作用がつらい」というもの。何らかの作用を伴う薬である以上、どうしても副作用は起きてしまいます。ここに薬の大きな限界があるのです。特に従来薬に関しましては、強い副作用が出やすかったようです。
たとえばアカシジアという副作用。これは、貧乏ゆすりを延々と続けてしまったり、同じ場所をウロウロと往復してしまうというもの。
この他、パーキンソン症状・遅発性ジスキネジア・急性ジストニアなどの副作用は、「見た目」に明らかな異常が認められるタイプの副作用。薬を飲むことで、かえって周囲から「変だ」と思われてしまう可能性があるのです。
いまだに精神病患者に対する十分な理解が存在していない現代の日本社会。患者さんのこのような症状は、本人だけではなく家族をも苦しめる原因となっています。
この他、強い眠気や鬱症状などの鎮静作用も、生活に支障を与える副作用の一種です。
副作用の弱い新薬
近頃ではメカニズムが異なっている新薬が開発されており、副作用も全体的に弱くなっています。適宜処方をしてもらうことによって、かなりの程度症状を抑えることができるのです。
鎮静効果については、量や飲むタイミングをコントロールしてもらうことによって、弱めていくことが可能となります。副作用がつらい場合、医師に相談をするようにしましょう。
もしも適切な対応をしてもらえない場合、セカンドオピニオンなどを検討するという方法もあります。
参考記事:統合失調症治療における医師との信頼関係とセカンドオピニオン
抗精神病薬は10人に1人程度が効かないケースも
統合失調症の治療に用いられる抗精神病薬。患者さんの10人に1人程度の割合で、この薬が効かない方がいることが明らかとなっています。
このような場合、飲んでも効果がないのですから、当然患者さんは薬や治療から離れてしまいます。通院しても意味がない、そのようなことに絶望感を強めてしまうこともあるでしょう。
このようなケースに対してはどう対処していけばいいのでしょうか?まずは薬が効いていないような場合には、医師に相談をするようにしましょう。
近頃では従来薬でも効果が上がらない患者さんのための新薬が8種類程度開発されています。
適宜切替えを行ってもらうことで、効果を上げていくことが期待できるようになるのです。
服用中止を避けるためには
長く苦しい統合失調症の治療の中では、ご家族によるサポートが欠かすことができません。もしも患者さんが薬の服用を嫌がったり、病院に行きたくないような反応を見せ始めた場合、家族は以下のように対応するようにしましょう。
1.強制せずに、その理由を探る
治療を中止しようとしても、それを一方的に咎めてはなりません。上から押さえつけるように治療を強制すると、患者さんはまるで北風を受けたかのように殻に閉じこもってしまうこともあります。
やれといわれるとより一層やめたくなってくるものなのです。
ご家族の方は、どうして辞めたいと思ったのかという点を丁寧に探りだすようにしましょう。聞き方に配慮しながら聞くのがコツです。
2.医師に伝える
理由を聞き出すことができれば、一緒に病院に行って医師に伝えるようにしましょう。この際、事前に本人の同意を得ておかなければ話がややこしくなってしまいかねません。
服用中止の理由にはさまざまなものがあります。そして、医師側の対応に関してもそれに応じて様々な種類のものが考えられます。
正確な理由・原因を理解し、それに対して適切にアプローチしていくことが非常に大切なのです。
ご家族にできることは、理由を探る手伝いをすること、そしてそれを医師に伝達するための橋渡し役となることです。
理由次第では、その原因を解消していくためのサポートも行っていくこととなります。他の病院・医師を探すのも一つの役割ということも忘れないようにしましょう。
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