イタリアの病院はすべて予約制~もしイタリアで病気やケガをしたら?
日本と違い、イタリアでは普通の病院は一般外来を受け付けてくれません。
原則、すべてのクリニックは予約制です。予約なしで診察してくれるのは緊急病院だけですが、ここを使いこなすにはそれなりのコツが必要です。
イタリアへ旅行の予定がある人や、留学を考えている人のために、この国の医療システムを簡単にまとめてみました。
治療の第1歩は緊急病院から
日本やほかの国と同じように、イタリアでも、病院には公立と私立の2種類があります。もう1つのカテゴリーは「プロント・ソッコルソ」とよばれる緊急病院です。こちらは公立クリニックの付属病棟という位置づけです。
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殺風景なプロント・ソッコルソの入り口です。改装されて、とてもきれいになっていました。
急なケガや病気のときに救急車が患者を連れて行くのは、プロント・ソッコルソです。事故現場が私立クリニックの目の前だったとしても、そこへ運びこまれることはありません。
町中を走り回っている救急車はすべて公立のもので、私立とは関係ないのです。少しくらい遠くても、地区指定の国立や州立の緊急病棟まであなたは運ばれることになります。
ちょうど患者を運びおえたばかりの救急車です。
ここでの治療は、原則、非常時の「初診」の診察と治療のみです。継続治療や入院の必要があるときには、病院を探して患者自身で予約するようにいわれます。
国立や州立の病院では、外来予約を取るのがたいへんです。通常の診察予約でも数週間先になります。精密検査や入院の予約だと、半年後しか予約に空きがないといわれるのも普通です。
旅行などで一時滞在しているだけの外国人には、とても使えないシステムでしょう。
私立なら予約は比較的スムーズにとることができます。院内の設備も新しいですし、ドクターの診察や治療も丁寧です。英語を話せる医師も多く、外国人でも安心して治療を任せられます。
私立病院です。まるでホテルのような外観ですが、中の調度品もホテル並みです。
ただ費用は驚くほど高額になるので、支払いは心配です。
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海外障害旅行保険の掛け金はたしかに高いですが、万一のことを考えれば、外国人は旅行前に加入しておくべきだと思います。
旅行者が使える手段は事実上2つしかありません。私立クリニックで診てもらうか、救急車でプロント・ソッコルソへ担ぎ込まれるか、しかないのです。
緊急病院を使いこなしている
プロント・ソッコルソのいいところは、治療費用が一切かからないことです。薬代は自己負担ですが、だれでも無料で診察と治療を受けられます。
たとえ応急処置くらいしかしてくれないとしても、イタリア人が無料診察の機会を逃すわけはありません。
たしかに緊急病院は「初診」のみ受付けというシステムです。イタリア人の多くは、初診後に家で悪化したと言い訳しながら、何度も「初診」でずうずうしく来院します。
ただ予約なしなので、診察までに何時間も待たなければいけません。待ち時間の長さは、日本の外来診察とは比べものにならないと思います。
救急車で運ばれてくる人や、痛みで転げまわっているような患者を、緊急病院では最優先で診察します。
いくら患者本人がつらくても、インフルエンザの発熱や骨折くらいだと、半日くらいは待たされることもよくあります。
イタリア人はこういう事情を知り抜いているので、待合室でわざとうめき声をあげて看護師にアピールします。こうしないと、診察の順番をどんどん後回しにされてしまうからです。
イタリア人並みの自己アピールを待合室でできる自信があるなら、プロント・ソッコルソに何度も「初診」で通い続けて無料で完治させるのもいいかもしれません。
2年以上住むなら国民健康保険がおすすめ
いざとう時に緊急病院しか使えないのも不安だし、私立病院は費用が高すぎるという悩みは外国人の場合はとくに深刻です。旅行なら、海外傷害旅行保険に加入しておけば、私立病院へすぐに駆け込んでも費用の心配をせずにすみます。
もし留学などで2年以上イタリアに滞在するなら、この国の国民健康保険ASLに加入するという方法があります。アメリカなどと違い、年間2万5000円程度で加入できますし、医療費用の負担がほぼゼロになるのでおすすめです。
滞在許可書をもっていれば、外国人でもイタリアの国民健康保険に加入できます。保険番号をもらうときに、登録されている医者のリストから、自分のホームドクターを選ぶシステムです。
ホームドクターの診察を受けるにも予約は必要です。ただありがたいことに、この医者の診察と治療はいつでも無料で受けることができます。
ホームドクターの手に負えないような病状や、精密検査が必要なときは、別の専門医を紹介してもらえます。
紹介先に連絡をして予約をとるのは患者自身ですし、こういう場合は私立病院へ回されるので、患者も医療費を一部負担しなければいけません。
とはいえこのシステムを使っているかぎり、たとえプライベートクリニックであっても、医療費はかなり安く抑えることができます。
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