イタリアのとっても深刻なゴミ事情~ポイ捨てなんてあたり前の国
古い歴史をもつ町と雄大な自然に恵まれた国イタリア。
悲しいことにこの美しい国は、ゴミ問題ではヨーロッパでも指折りの後進国というほかありません。
美観への住民の意識自体が低く、歩きタバコや吸殻のポイ捨てはあたり前です。あちこちの市でこの問題への取り組みが始まっていますが、どこもうまくいっているとは言えません。
世界有数の観光都市フィレンツェをとりあげ、イタリアのゴミ問題についてまとめてみました。
路上へのポイ捨ては社会の常識です
イタリア人の家に初めて招待されたとき、居間もキッチンもチリひとつないほど掃除されているのを見て驚いたことがあります。ごく普通の家庭なのに、置かれている調度品や家具は、どれもぴかぴかと磨き上げられていました。
さらにびっくりしたのは、塵取りに集めたゴミを、その家のお母さんがテラスから地上へ捨てているのをみたときです。玄関マットについた砂も、2階の窓から路上へむけてシニョーラはあたり前のような顔で払っていました。
イタリア人は、自分のテリトリーともいうべき家の中はとてもきれいに掃除します。ですが公共の道路へのポイ捨てには、罪の意識はまるで感じないようにしか見えません。
だれのものでもない空間だから、だれからも叱られる筋合いはないといったところでしょうか。日本人のように、公共の場所だからこそ、みんなのためにきれいにしようという考えはこの国にはないのです。
日本ではひんしゅくを買う歩きタバコも、イタリアではまったく問題にされません。吸い終ったタバコは火を消されないまま、あたり前のように路上にポイ捨てされます。
携帯用の灰皿を持ち歩いているイタリア人など、私は見たこともありません。路上は、市の係りのおじさんが、ほうきとちりとりで毎日掃除して回ります。
あるいは、ブラシを備えた清掃車が石畳を磨いて回ります。
こうでもしないと、町中が吸殻だらけになってしまいます。
町にあふれるゴミをなくせ!清掃はどの町でも大きな課題です
どのイタリアの町にも、大型の共用ゴミ箱が路上のいたるところに置かれています。好きなときにこの中へ捨てておけば、数日おきに市の専用トラックが箱の中身を回収していってくれます。
問題なのは、大都市ではゴミの増えるスピードに回収が追いつかないことです。
1日もたたないうちに、路上の箱は一杯になってあふれてしまいます。
回収車の巡回数を増やせばいいだけのことのように思えます。ただ、どの市でも職員のストライキに戦々恐々としているのです。回収車に乗る時間を増やされたりしたら、公務員が一気にボイコットに走るかもしれません。
回収車の巡回が完全にとまったせいで、ナポリ市内がゴミだらけになった事件が数年前にありました。町中に悪臭がたちこめ、観光客が市内から逃げ出し、ハイシーズンだというのに旅行業界の収入が激減したのです。
ナポリ市民には、悪夢のような夏だったと思います。公務員たちとうまくやっていきながら、ゴミを効率よく処分する方法はないかと、どの町でもみな頭を痛めています。
私の住んでいるフィレンツェでは4年ほど前に、大型タンクを地下に埋め込んだ新しい形の箱の導入を決定されました。容量がとても大きいので、回収車の巡回数を増やす必要もなく、新しいシステムは大いに歓迎されたものです。
地上に出ているのは、ダストボックスの銀色の投入口だけです。地下には大容量のタンクが隠されています。
地上に出ている部分が小さいので、ダストボックスが通行人の邪魔になることもありません。
開口部がしっかり閉まる構造になっているのがいいと、フィレンツェの住民はいいます。今までのタイプのものは蓋がゆるかったので、生ゴミのニオイが周囲に漂っていました。
新型ダストボックスのおかげで、町の中のニオイはたしかに減ったように思います。
あれから4年がたち、町には再びゴミがあふれだしました
フィレンツェ市長自慢の新型ゴミ箱は、しばらくはとてもよく機能していました。ほかの市からも賞賛を受けたほどで、導入に多額の費用をかけた甲斐があったとだれもが思ったものです。
このダストボックスを増やし、最終的には旧式のゴミ箱を路上からすべて撤去するのが、市の当初の予定でした。
設置されて1年も過ぎた頃から、投入口のフタが開かないものが増えてきました。
酔っ払いが夜中のうちに、なにかで殴りつけたりしているのかもしれません。フタにへこみのあるダストボックスばかりがめだつようになり、被害がひどいものはまったく使えない状態です。
使用不能になった箱が増えると、使えるダストボックスを探して、そこへ集中的に突っ込むしかありません。さすがの大容量ボックスも、あっという間にタンクが一杯になってしまいます。
結局また、入りきらないゴミがボックスの脇へ放置されることになりました。
使えなくなったダストボックスを取り替えるか、フタを修理するしかないのですが、市の予算ではなかなか厳しいようです。路上ゴミがフィレンツェから消える日はまだまだ先ですね。]