着物の進化系ファッション「matohu」にみる和服と洋服の融合
現代において普段着として着られているのは洋服であり、日常的に和服を着用する人はほとんどいません。
日本は西洋の服を自文化へ上手く取り入れることはできましたが、羽織(はおり)や袴(はかま)など昔ながらの日本服を現代的に進化させることはしませんでした。
そんななか『matohu』というブランドは、和と洋の融合を試みたデザインをし、注目を浴びています。彼らの服から日本文化がどのように発展していったらいいかを考えてみましょう。
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和洋の一体化!日本的アプローチで作られる服たち
画像の服はmatohuの代表的な服である長着ですが、一目みてわかる通り洋服と実によくマッチしています。インナーもすこし着物を思わせるようなデザインでありながら、街中でみかけても不自然さを感じないように仕上げてあります。
いくら和のテイストがあっても、ただ見た目が日本風なだけでは意味がありません。大切なのは積み重ねてきた文化の歴史が息づいているかであり、日本人独自の感性が込められているかです。
日本的なのは見た目だけじゃない!服に込められた和の文化
この点に置いてもmatohuは抜かりなく、コレクションごとのテーマをみればわかるのですが、ブランドの服作りには日本文化への深い理解とこだわりがあります。
たとえば、2012年の秋冬コレクションではテーマを『やつし』と題し、あえて貧しく簡素になったもののなかにひそむ、美しさや気高い心のありようを表現することを試みました。
京都に行き枯れ山水を見に行ったり、侘び茶についても調べたりし、なぜ「やつす」ことが美しいかを自分たちなりに考える、ということまで行いデザインに落とし込んだそうです。
単にことばの意味を調べるのではなく、実際に自身の五感を使って「なぜそういう考え方になるのか」を徹底的に研究する姿勢からは、むかしながらの職人気質を感じます。
服にふれてみると生地の質感もよく、デザインを重視するあまり持ちが悪いということもない、すばらしいものであることが分かるでしょう。
デザイナーのお洒落からはじまったブランド、和への気づき
なぜ彼らは和服や日本的な価値観をとりいれようとしたのでしょうか。きっかけは、女性デザイナーの方が、普段からお洒落として着物を楽しむ人だったからだそうです。
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それを見たもうひとりの男性デザイナーが、現在の服飾が日本的な美意識や価値観からかけ離れたものだということや、西洋風の服にこだわらずとも新しい服を作っていけると気づいて、ブランドがスタートしました。
事実、上の画像を見ても分かるように、色々なバリエーションがあり、スカートやパンツ、シャツなどとも組み合わせても違和感はありません。また、めだった派手さも感じず、おさえたデザインのなかに日本特有の色合いのよさや生地のすばらしさがこめられた作品に仕上がっています。
西洋が本当にお洒落なのか?今だから考えるべき文化のこと
matohuの服をみてわかるのは、和の持つデザイン性を残したままでも、西洋の文化に馴染み、現代でも違和感のないものが作れるということです。現代日本では、新たなものを作ったり発信したりするとき、西洋風のものを好む傾向にあります。
それは、フランスやアメリカの文化やことばをお洒落とみなす、という考え方からもよくわかり、日本でできた多くのブランドや商品名が英語やラテン語、フランス語をもとにしたものである事実からもまちがいないでしょう。
Tシャツに描かれたことばひとつとっても、漢字やひらがなよりも英語の方がカッコイイという風潮にあります。おそらく日本人の多くが心のどこかで「西洋文化の方が日本文化よりつねにさきを行っている」という思いをいだいているからかもしれません。
本当にいいものは、積み重ねた歴史を前進させるもの
ヨーロッパの後追いをしているだけでは、ほんとうに国内外から認められるものは生まれないのではないでしょうか。だいじなのは外ではなく中身です。ほんとうに質がよく、日本ならではの技術や価値観が感じられるものならば、国を問わず受け入れられるでしょう。
伝統は失くしてはいけない大切なものですが、そこにこだわり過ぎるとたんに古いものとして終わってしまいます。matohuの服のように、日本文化のことをよく調べて自分なりの解釈を加えたうえで、和と洋をベストな割合で融合させ進化させなければなりません。
日本独自の味を残しつつも、今日まで日本で馴染んできたヨーロッパ的なものを絶妙なバランスでとりいれ、新しい私たちの文化として昇華することが今後、我が国の文化を発展させるために求められることではないでしょうか。
matohuの服は見た目に和のテイストがあるだけでなく、今日まで脈々と受け継がれてきた日本独自の価値観や美しさがしっかりと感じられるでしょう。
彼らの服からわかるのは、現代でお洒落で素晴らしいものを作るとき、必ずしも西洋をお手本にしなくてもいいということです。
むしろ日本ならではの味を加えることで、ヨーロッパの方々も日本人もうならせるようなものが生み出せ、我が国の文化を発展させることにもつながるのではないでしょうか。
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