デジカメ時代なのに富士フイルムがますます成長を続けるのはなぜ?
富士フイルムという会社があります。
かつて写真用のカメラにはフィルムという巻物をはめ込んで撮っていた時代がありましたが、そのフィルム市場で、国内では圧倒的シェアを持っていた一流メーカーです。
21世紀になりデジカメの時代になって、写真用フィルムは骨董品の仲間入りをし始めましたが、それでも富士フイルムは生き残っています。生き残ったというよりも、ますます成長しています。
同業界の世界的メーカーであったコダック社は今や倒産寸前だというのに、富士フイルムはいったい何をしたのでしょうか?
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コダックは写真を庶民のものにした企業
コダック社の創業者であるイーストマンは、写真用の乾板を開発し、1888年に大衆向けカメラを発売しました。これによって、普通の家庭にもカメラが普及し始めます。コダックは写真文化の発展に大きく貢献した会社です。
映画フィルムでもコダック社の製品は圧倒的な強さを誇り、米国アカデミー賞の80年の歴史において、最優秀作品賞を受賞した映画は、すべてコダック社の映画用フィルムを使って撮られています。
時代の流れに乗れなかったコダック
老舗の超一流企業ですが、1992年をピークに売上高が徐々に低下し始めます。カメラのデジタル化の流れの中でもフィルムにこだわり、他の事業展開を推進できないまま衰退してしまいました。
90年代に日本の主要メーカーが次々とデジカメを発売し始めると、完全に時代に取り残されてしまったのです。
バブル景気のピーク92年に1兆6千億円あった売上は2009年には半分の8千億円にまでダウン、2012年には倒産法の申請をしています。
2001年に完成した「コダックシアター」は、アカデミー賞の授賞式に使われることでも有名ですが、現在はドルビー社が命名権を買取り、「ドルビーシアター」と名前が変えられました。
写るんです!で大ヒットの富士フイルム
富士フイルムは1936年に創業、写真フィルムの国産化を目指してつくられた会社です。60年代にはイギリスのランク・ゼロックス社と提携してコピー機を発売、比較的早い時期からフィルム以外の事業も手がけ、国際化も進めています。
80年代には、写真フィルムにレンズをつけて撮影できるようにした画期的な商品「写ルンです」が大ヒット。ユニークな商品開発とテレビCMなどで、日本国内のフィルム市場では圧倒的な人気を誇りました。
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92年の時点では、売上高1兆1400億円と、コダック社(1兆6千億円)には及びませんでしたが、98年にはコダック社を追い越し世界トップメーカーとなります。
↓自動販売機が作られるほどの大ヒット!でした。
デジカメ時代に多角化で成功!
90年代にデジカメが登場すると、富士フイルムは自社開発のデジカメを発売する一方で、各種デジタル機器に力を入れるなど事業の多角化にも乗り出します。
医療機器や液晶ディスプレイの保護膜などの他、2000年代には化粧品や健康食品にまで広げていきました。富士フイルムの液晶ディスプレイ保護膜は、現在では世界の80%のシェアを獲得してます。
コダック社がデジタルカメラの時代の波にうまく乗れなかったのに対し、富士フイルムはじょうずに時代を切り抜けたのです。
実は、デジカメを発明したのはコダック社だった!?
写真業界において数々の発明をしてきたコダックですが、実はデジタルカメラを発明したのも同社なのです。1975年のことで、まだパソコンもない時代です。もちろん家庭用のプリンターもありません。
せっかくの発明品でしたが、登場するのが早すぎたのでしょう。製品化されることなく消えてしまいました。デジタルカメラを発明した企業が、その隆盛により衰退したというのは皮肉な話です。
化粧品まで売り始めた、富士フイルム
富士フイルムの事業拡大の中でも、もっとも特徴的なのは「化粧品」でしょう。化粧品業界には約2000社の企業があり、トップの資生堂ですら10%もシェアを取れない競争の厳しいマーケットです。市場は成熟していて、今後広がりが見込まれる状況にはありません。
一流のビジネスコンサルタントやシンクタンクの間でも、同社の参入に関しては悲観的な見方しかなかったそうです。
化粧品はイメージによって商品価値が大きく左右されるマーケットといわれます。そんな世界に、フィルム会社が参入しても消費者にウケるずがない、というわけです。
↓富士フイルム本社には、今では化粧品の広告があります!
フィルムと化粧品は共通点があった
富士フイルム側には全く別の視点があったそうです。フィルムの感光層などに使われるコラーゲンは、化粧品にも欠かせない要素であり、それに関しては同社は長年の研究実績があります。そこで、技術力を前面に押し出す独自戦略に勝機を見出していたのです。
発売前にマーケットリサーチを実施したところ、「富士フイルムの化粧品」と聞いて最初はいぶかしがる人も、「高い技術力で、肌トラブルを解決できる」と説明するとすぐに納得してくれました。
これまでの化粧品とは別の強みで売れる、と考えたわけです。そして予想通りの大ヒット。
業界の常識に縛らないで、市場に求められているかどうかを冷静に判断して確かめたことが、富士フイルムの成功の要因なのでしょう。
同社の2012年度の売上高は2兆2千億円。90年代の倍の規模に成長しました。かつての両雄コダックと富士フイルムは、デジカメの時代、その流れの中で大きく明暗を分けたのです。
by 水の
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