人口密度No.1離島である日間賀島を成功に導いた漁業と観光のタッグ
多くの離島が過疎化する中で、各島の漁協も後継者不足などの問題を抱えています。
そんな中、多くの若者が参加して盛り上がっているのが愛知県の日間賀島(ひまかじま)。
日本の離島でNo.1の人口密度を誇るこの島は、どのような方法で漁協を活性化させたのでしょうか。
(日間賀島は漁業と観光業の連携によって成功した島ですが、ここでは特に漁業に着目して紹介させていただきます)
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普通の漁協は「出荷」するだけだが…
漁協というのは基本的に「出荷」するだけです。「魚を獲る」→「魚市場に持っていく」ということです。
もちろん、これは素晴らしいことで大変な作業でもあります。ただ、これだけでは栄えることができないというのが、多くの離島の漁協の現状です。
日間賀島の漁協もかつては、そういう状態にありました。極めて質の高いタコ、フグ、貝類などが獲れるにも関わらず、それが認知されていなかったのです。
職人の間では知られていても、一般人の間ではブランドになっていない、という状況でした。
多くの人々に日間賀島の水産物を食べてもらうには、これをブランド化しなくてはいけない。
そう考えた日間賀島の人々は、「まず一度食べてもらう」ことを考えました。
味がいい以上、一度食べてもらえばそれでブランドになるだろうという自信があったわけです。
(これが普通の素材だと「どう広告するか」という話になりがちなのですが、「食べてもらえば勝てる」と言えるのが、本物の強みですね)
観光客を呼び込み、採れたてのタコの味を知ってもらう
「まず食べてもらう」ことを考えた日間賀島の人々は、観光と漁業を結びつけることにしました。
というと普通の話に聞こえますが、観光と漁業というのはどの島でも対立しやすいものです。
「漁業ではきれいな海が命」→「しかし、観光業はそれを破壊する」という理由です。沖縄のサンゴ礁の破壊など、小学校でも必ず習う話ですよね。
このように対立しがちな観光と漁業ですが、観光では「食」はもっとも重要な要素の一つです。
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そして、離島には「採れたての魚」という強い食の資源があるわけですから、観光業者が勝負する上でも、「漁業」というキーワードは欠かせないんですね。
ある意味当たり前のことなのですが、実際対立する部分もありますし、そもそも人間が関わると理屈通り、理想通りには行かないことがほとんどなので、漁協と観光業が対立しやすいのも仕方がないことです。
(第二次大戦中の日本の陸軍と海軍の対立も有名で「陸軍と海軍のケンカの合間に、米軍と戦っていた」と揶揄されることもあるくらいです)
そんな「当たり前だけどなかなかできない」ことを日間賀島は見事に実現したわけです。
もちろん、そこには徹底した研究と実践、粘り強いコミュニケーションがあったでしょう。
そうした努力があってこそ「日本一、人口密度の高い離島」が愛知県に生まれたわけです。
観光でのヒットにより、通常出荷量も増加
こうして観光のPRによって日間賀島でタコを食べ「日間賀島のタコはおいしい」と人々が感じると、それが口コミで有名になります。
そうすると、島に行く気がない人でも、スーパーで「日間賀島産」というタコを見たら、手に取ることが増えるわけです。
和食の料亭でも「日間賀産のタコ」というのがアピールになってお客さんを呼ぶことができ、そうして料亭が名前を出してくれることで、ますます日間賀島のタコがブランド化していくわけです。
こうして一度好循環が始まれば「評価されるからブランドになる」「ブランドだから評価される」という無限ループとなるわけです。
日間賀島のタコはなぜおいしいのか?
最後に日間賀島のタコがおいしい理由も解説します。理由の一つに「水が浸透しやすい地層」が挙げられます。
水が浸透するということは、島の土の栄養素がどんどん海に流れるということです。
これにより良質なプランクトンが育ち、そのプランクトンを食べたタコや魚は、豊富な栄養を蓄えることができる、というわけです。
「島の土が痩せるじゃん」と思われるかも知れませんが、日間賀島は農業はやっていないので、かまわないのです。
(日間賀島に限らず、離島で農業をやっている例は、サトウキビやパイナップルなど、かなり限られていると思いますが)
日間賀島が観光業に力を入れながらもタコや魚の品質を守ることができたのは、この独特の地層を破壊しなかったことにあります。
このような日間賀島の成功例は、多くの離島の漁協にとって参考となることでしょう。
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