最高級コーヒー豆「ブルーマウンテン」はなぜ日本にしかないのか?
最高級のコーヒー豆といえば、ブルーマウンテン(ブルマン)でしょう。
酸味と苦みのバランスがよく、とても上品な香りがするとされ、愛好家の間ではとても人気の高いコーヒーです。
価格は普通の豆の3倍~6倍程度と破格に高く、庶民にはなかなか手の届かないものです。
ところが、「最高級」と言われている割には、国際的にはまったく知られていないブランドです。
ほとんど日本でしか売られていないのに、最高級とはいささか不思議な気がしませんか?
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とても高いコーヒー豆です
たとえばドトールコーヒーでは、「マイルドブレンド」の豆は200gで760円なのに対して、「ブルーマウンテンブレンド」は1,830円と2.4倍です。
しかも「ブレンド」とついていますので薄めたブルマンです。専門の販売店の中には、200gで4000円前後で売っているところもあります。どうしてこんなに高いのでしょうか?
ジャマイカ産のコーヒーです
ブルーマウンテンは、ジャマイカのブルーマウンテン山の斜面でとれる豆で、栽培区画は国によって管理されるなど、徹底してブランド化されています。
収穫は急斜面のため機械ではなく手作業で行なわれるため、生産量が限られるため希少です。とれた豆の9割は日本に輸出されて、国際的にはほとんど出回っていません。
ジャマイカのコーヒーの歴史は?
もともとイギリスの統治時代にプランテーションが広がり、コーヒーの栽培が盛んになりましたが、20世紀の初めには衰退してしまいます。
多雨による土壌の流出や、労働力の不足などによって生産量も品質も低下したのが原因とされています。
20世紀の半ばには、産業公社が設立されてコーヒーの復興がはじまりますが、そこに手を貸したのが日本です。
1973年に官民あげてのジャマイカ支援が行なわれ、「ジャマイカ・ブルーマウンテンコーヒー開発事業」を、円借款によって推進しました。
つまり、「ブルーマウンテン」というブランドは、日本人が作り上げたものだったのです。
「英国王室御用達」とまで宣伝された!?
当初、ジャマイカのコーヒーは、「英国王室御用達」と宣伝され、高級イメージが刷り込まれたとされています。
もともとイギリス領ですので、王室の方も飲まれたことはあったのかも知れませんが、H.R.ヒギンス社が王室御用達とされていますので、ブルマンの「御用達」はねつ造だったのではないでしょうか。
英国の王室なら、コーヒーよりも紅茶でしょうし。
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日本の販売会社によるイメージ戦略
1960年代頃からは、日本でも珈琲が日常的に飲まれるようになったこともあり、日本の販売会社は、「ブルーマウンテン」を特別な豆としてブランド化していきました。
その結果、とてつもなく高級なものになってしまったのです。日本人の「価格の高いものに弱い」という習性をうまく利用した戦略だったと言えるかもしれません。
国際的な評価は中の上?
コーヒーの格付けは、国際コーヒー機関(ICO)というところが行なっていますが、商業取引上は次の4つに分類しています。
最高級は「コロンビアマイルド」というグループで、コロンビア、ケニア、タンザニアのアラビカ種の豆です。
次が、「アザーマイルド」でメキシコ、ペルー、エルサルバドル、ジャマイカなどのアラビカ種です。
3番目が「ブラジリアン・アンド・アザーアラビカ」でブラジル、エチオピアのアラビカ種、4番目が「ロブスタ」でインド、インドネシア、ベトナム、タイ、マダガスカルなどのロブスタ種です。
ジャマイカの豆は、2番目の「アザーマイルド」に属します。
ブルーマウンテンを国際マーケットで売ろうとすると、「コロンビア」より安いということになります。
実際には、ほとんど日本が買い占めているため国際的な流通量は少なく、どの程度の価格評価をされているのかはわかりません。
しかし、日本で売られている価格は適正なのでしょうか?
一昔前の新聞には、ジャマイカのコーヒー栽培農民が「どうして自分たちのつくる豆がこんなに高く売れるのか理解できない」と答えるのが載っていたそうです。
輸入量よりも販売量の方が多いのはなぜ?
日本に出回っている「ブルーマウンテン」の豆の量は、ジャマイカの年間生産量の3倍ほどあるそうです。
輸入量よりも販売量の方が多いということは普通はありえません。どうしてこんなことになるかと言えば、ブレンドされているからです。
ブルマンの豆に他の豆を加えて「コクを出した」りした豆が「ブレンド」として売られています。
「コクを出した」というと、まるで「味を良くした」という意味に聞こえますが、値段はブルマン単品よりも安くなります。つまり、味を落としているわけです。
販売量が輸入量の3倍もあるということは、平均して3倍に薄められているということになります。
ひょっとすると、中には10倍にブレンドされているものもあるのかも知れません。「ブルマン」というブランドが、安い豆を高く売るために利用されているのだとすればとても残念なことです。
最近は食材の擬装や、作曲の擬装が問題になりましたが、ブルマンについても味の本質を確かめないと、消費者は販売会社に踊らされることになってしまうかも知れません。
by 水の
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