市販薬のネット販売が解禁されました~これから何がどう変わる?
ドラッグストアなどで売られている市販薬(一般用医薬品)のネット販売が、解禁される運びとなった今日このごろ。
既にネットショップは続々と取り扱いを始めており、私たちは家にいながらにして薬を買えるようになりました。
しかし不適切な目的による大量購入や、転売の可能性、また副作用の理解不足など、考えられるトラブルはいくつかあります。
私たち一人ひとりも、慎重に薬を購入することが求められていくでしょう。
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なぜネット販売が解禁される?どんな薬が除外される?
もともと市販薬は、一部のネットショップで販売されていました。
しかし2009年、厚生労働省が「安全性を考えると、薬は対面販売するべき」としてこれを禁止し、ネットショップ側が裁判を起こしたという経緯があります。
裁判は最高裁まで進み、2013年1月、ついにネットショップ側の訴えが認められる形となりました。
つまり裁判所は、「ネット販売だからといって、必ずしも安全性に問題があるとはいえない」という答えを出したのです。
提訴した「ケンコーコム」は、判決を受けてすぐに薬の販売を再開しています。
これによって国もネット販売の解禁に向け、さまざまな調整をはかり始めました。
ただし話し合いが進められる中で、一部、安全性に問題があると判断される薬は除外される見通しになり、ネットショップ側は「全面解禁」を求めているところです。
除外されることになりそうな薬としては、おもに劇薬5品目と、「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる薬の一部です。
劇薬としては殺菌消毒薬の「エフゲン」と、男性の性機能を高める「ガラナボーン」「マヤ金蛇精カプセル」「ハンピロン」「ストルビンMカプセル」が指定されています。
スイッチOTC医薬品は、もともと医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」だったものを、市販用に転換した薬になります。
原則として発売から3年以内のものを除外する見込みで、育毛剤の「リアップX5」や、鎮痛剤の「ロキソニンS」などが含まれる予定です。
薬のネット販売で考えられる問題、どう対処する?
このようにルールが制定されつつある薬のネット販売ですが、安全性に関するさまざまな問題も懸念されています。
それを理由に、「日本薬剤師会」などはネット販売に反対の意を表明しています。
まずは薬の適切な説明がおこなわれるかどうか、という問題です。
対面販売であれば、カウンター越しに薬剤師から説明やアドバイスを受けることができますが、ネットではそれができないように思われます。実際、国もそう考えてネット販売を禁止しました。
しかしネットショップ側は、専用の相談ダイヤルを設けるほか、ユーザーに副作用などの説明を読ませ、チェックボックスにチェックを入れなければ購入ページに行けないようにする、などの工夫をおこなっています。
また実際、対面販売で購入しても、薬の説明文書をきちんと読む人は意外に少ないものです。
それならネット上のほうが平易な言葉で分かりやすく説明できる上、きちんと読ませてから購入してもらえる、というメリットがあるのかもしれません。
他には自殺などを目的とした大量購入の問題もあります。
実店舗と異なり、ネット薬局ならあちこちを駆けずり回ることなく、薬を好きなだけ購入できてしまう危険性もあるでしょう。
そこで各店舗は、一度に購入できる数量を制限するのはもちろん、購入頻度も合わせてチェックし、また本人確認を厳しくするよう取り組んでいます。
とはいえ複数の店舗を利用すれば、大量購入はやはり可能と思われますが、それは実店舗であっても同じ問題だといえそうです。
またオークションサイトでの転売の監視などにも力が入れられています。
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メリットと、私たちが気をつけたいこと
薬のネット販売解禁は、消費者にとってはさまざまなメリットがあります。
たとえば薬の中には、ドラッグストアで購入しにくいもの(水虫やデリケートゾーンの薬など)もありますので、ネットならこうした薬も気軽に購入ができます。
もちろん周りに薬局がない地域に住む人には、特に便利です。
また価格競争が激化することで、より安く薬を手に入れられる可能性もあります。
既に異業種の参入が相次いでいる中、特に人気のある薬の価格は下がり続けており、店頭価格の2割引ほどの値段で売られていることも少なくありません。
一度に多くの店舗の価格を見比べられるネットだからこそ、実店舗よりも激しい価格競争が起こるのです。
またネット販売の価格に影響を受けて、店頭価格も下がっていく可能性があります。
市販薬は保険が利かないためやや高くなりますので、価格の低下は消費者にとってうれしいところです。
しかし市販薬とはいえど薬ですから、不明な点があればかならず質問するなどして、安全性には十分に気をつける必要があります。
実際、市販薬でも死亡事故が年間、数件は起きていますから、特に持病のある人や他に服用している薬のある人は慎重に購入するべきです。
もちろんどんなに安くても、個人からの購入は絶対にしてはいけません。
ちなみに今後は、「おくすり手帳」の電子化も期待されています。
手帳がデジタル化できれば、薬剤師が他の薬との飲み合わせをチェックできるため、より安心して薬をネット購入できるようになるでしょう。
薬のネット販売はまだ始まったばかり。今後さまざまな試行錯誤の末に、安全性の高いシステムが確立されていくことが望まれます。
By 叶恵美
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