「卵巣がん」は出産未経験の女性にそっと忍び寄るサイレントキラー
女性特有のがんの中でも、「サイレントキラー」の異名を持つのが卵巣がんです。
子宮がんと比べるとあまりポピュラーながんではないイメージがありますが、日本女性にもじわじわと増え続けています。
特に排卵回数の多い人、つまり出産をしていない女性は高リスクといわれますので、注意が必要です。
なぜ卵巣がんは症状が出にくいのか?
卵巣がんは、もともと欧米に多く日本には少ないがんでしたが、近年は増加傾向にあり、90人に1人が罹患するといわれます。
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特に40代からリスクが上がり、もっとも罹患率が高いのは50代前半になります。
また遺伝的な要素を持つ女性では、20代など若い世代での発症も少なくありません。
中には10代で発症する人もいますし、歌手の「より子」さんのようにわずか2歳で発症するというまれなケースもあります。
卵巣がんの怖さは、症状の出にくさにあります。
まず位置的に奥まっていて、外と連絡のない器官ですので、異常が生じても出血などの症状が出ません。
さらに卵巣自体が小さく、腫れてもスペース的に異常が生じにくい上、ハンモックのように吊るされた形状となっていることも圧迫感などの出にくさにつながっています。
そのため卵巣は「沈黙の臓器」と呼ばれるほどです。
進行すると、しこりや腹部膨満感、下腹部痛などが表れてきますが、これだけではがんを疑うのに十分な症状とはいえません。
やがて「腹水」がたまり、お腹が異常に張ってきてようやく受診する女性が多く見られます。
排卵回数の多い女性ほど、卵巣がんの高リスク群に
卵巣は子宮の左右に対になって存在する、直径2~3センチの小さな器官です。
卵子のもとである「卵胞」を成熟させて排卵するほか、女性ホルモンの分泌もおこなっています。
月経のある女性の体では、毎月排卵が起こりますので、卵巣はもともと刺激を受けやすい器官だといえます。
特に排卵の際には、卵巣の壁を突き破って卵子が放出されますので、多少の傷がついてしまうのです。
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もちろん傷は自然治癒するのですが、この時に細胞が異常に増殖してしまうことがあり、これが卵巣がんにつながるといわれます。
つまり生涯の中で排卵回数が多い女性ほど、卵巣がんのハイリスク群になります。
たとえば月経が始まるのが早かった人や、閉経が遅かった人、出産未経験の人などです。
妊娠・出産すると、当然ながらしばらくの間は排卵が起こりません。
特に昔の女性は多産だったため、排卵回数は現代の女性よりもずっと少なかったといえるでしょう。
日本女性に卵巣がんが増えたのも、生涯に産む子どもの数が減ったことが一因だとされています。
その他の原因~乳製品や遺伝、子宮内膜症など
他の原因としては、食生活の欧米化も挙げられます。
特に乳製品と卵巣がんの関連性が指摘されており、摂取量が多い人ほどリスクが上がることが分かっています。
また卵巣がんには遺伝的な要素もあります。乳がんと合わせて、がんになりやすい遺伝子を持つ女性が一定数おり、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれています。
特に母親や姉妹に卵巣がん、もしくは乳がんの既往歴がある場合は高リスクです。
その他、「子宮内膜症」にかかっている女性も要注意とされています。
子宮内膜症とは、月経の時に血が逆流し、卵管を通って奥に散らばってしまう病気です。
特に卵巣に逆流した場合、癒着した組織が悪性化して卵巣がんに変わる可能性がありますので、子宮内膜症は決して軽視できない病気だといえます。
早期発見するためのポイント
症状の出にくい卵巣がんを早期発見するためには、まず年に1度の子宮がん検査を受けることが大切です。
卵巣には、残念ながら今のところ有効なスクリーニング検査がありませんので、職場や自治体でも「卵巣がん検診」はほとんどおこなわれていません。
しかし子宮がんの検査を受ける時、かならずエコーで卵巣の腫れなどもチェックするため、異常を発見してもらいやすいのです。
またワシントン大学の医学部が2006年に発表した、卵巣がんの早期発見に役立つ「4つの症状」があります。
1つめは「腹部膨満感(ウエストのサイズが大きくなった)」、2つめは「骨盤やおなか周辺の痛み」、3つめは「食が細くなり、すぐ満腹になる」、そして4つめは「頻尿や排尿トラブルがある」というものです。
卵巣がんを発症した女性の多くが、これらの症状を経験しているため、重要な目安になります。
4つのうち、1つでも月に12回以上起こる場合は念のため婦人科を受診してみましょう。
ピルが卵巣がんの予防に役立つ!?
卵巣がんの予防としては、健康的な生活を送ることは当然ですが、「低用量ピル」が救世主として注目されています。
避妊目的で処方されることの多い低用量ピルは、排卵が起こらないように調節する薬です。
卵巣がんの一因は、継続的な排卵にありますので、出産の予定のない女性がピルを使うことで、卵巣にかかるダメージを抑えることができます。
実際ピルが普及している欧米では、卵巣がんの患者数が減少しています。一方、まだピルの使用が一般的とはいえない日本だけは増加しているのです。
ピルはもともと避妊のほかにも、子宮内膜症や月経不順などの治療などに活用されています。
特に初潮が早かった女性や、出産経験のない女性ではピルが卵巣がんの予防につながる可能性が高いため、一度医師に相談してみてはいかがでしょうか?
By 叶恵美
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