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エレキのピックアップの仕組みを知っていますか?~なぜ音が出る?
エレキギターに必ず付いているものと言えば、ピックアップです。もちろんボリュームコントロールやトーンコントロールも付いていますが、これらは最悪の場合、なくてもアンプから音は出ます。
リプレース用のピックアップも多数販売されていることからも、みなさんのピックアップに対する関心の高さがうかがえます。
そこで、エレキのピックアップの構造がどうなっていて、どのように弦の振動を電気信号に変換しているかを、実験を含めて探って行こうと思います。
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基本的なピックアップの構造
近年では、ピエゾという圧電素子を使った物もありますが、今回とりあげるのは、昔ながらの巻き線方式のピックアップです。この後ピックアップと言えば、シングルコイルの巻き線式のピックアップのことだと思ってください。
エレキのピックアップは、弦の挙動を、電磁誘導を用いて電圧に変換します。電磁誘導なのでコイルと磁石が必要になるのですが、ボビンという部分にコイルを巻き、ポールピースという部分を磁化させる(またはポールピース自体が磁石)構造となっています。
磁性体の弦を使うことで、弦の振動が磁束の変化となり、コイルに起電力が生じます。コイルに発生した電圧をアンプで増幅することで、最終的にスピーカーから音として出力されます。
まずは計算してみました
電圧への変換式は 出力電圧V=L・di/dtとなります。この式の意味ですが、Vは出力電圧です。Lはコイルのインダクタンス、つまり何ヘンリー(H)かということです。
次にdi/dtですが、コイルに流れる電流の変化がどのくらいの時間で起こったかという意味で、かなり大雑把な言い方をすると、弦振動の周波数がこれに当たります。つまり、周波数が2倍になると出力電圧が2倍になると言うことです。(かなり多くの方が”?”と思ったのでは?)
この式からわかることは、インダクタンスが高くて短い周期で磁束が変化すると、高い電圧が出ると言うことです。出力電圧はそれだけではなく、弦の太さによっても変わります。と言うのは、弦が磁束を乱すために磁束に変化が起こり、それで電圧が発生するという原理上、弦が太い方が大きく磁束が乱れるため電圧は高くなり、細い方が電圧は低くなります。
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続いて実験してみました
そこで本当にそうなっているかを確認してみました。比較対象は、6弦と1弦です。両方とも音階がEで、単純に周波数が4倍なので比較しやすいのと、一番太さに差があるので比較しやすいだろうと言うことで決めました。
どちらの条件も同じにするため、ピックアップから、弦のクリアランスを4mmに合わせます。弦の振動幅も合わせるために、定規で弦の振幅をあわせるようにしています。
これで良いのか?と言う疑問はあったのですが、とりあえずこれでやってみました。
▲図1
▲図2
初めにギターに張った状態で弦の太さを測ってみました。1弦0.3mm(0.012)6弦1.1mm(0.043) 太さの比率は0.3/1.1 ですが、弦の断面積が影響するため、これを二乗します。
(0.3/1.1)2 ≒0.074 これに周波数の比率4をかけると 0.074×4≒0.3 6弦の方が1弦の方より3倍以上の電圧となる計算です。あまりに差が大きいので、自分で計算しておきながら実験してみるまでは計算を間違ったかと思ってしまいましたが、やってみたところ、図1(1弦を弾いたときの出力電圧)図2(6弦を弾いた時の出力電圧)のようになりました。
図の赤丸(アタックから3番目)の波形でみると、160mV/420mV≒0.36 計算と少し違いますが、誤差要素の少なくない実験方法でここまで合っているということは、計算は間違っていなかったのでしょう。
いずれしても、ここまでレベル差があるとは自分でも意外でした。今まできちんと計算したことがなかったので…
1弦に向けてピックアップを弦に近づけるように調整した方がよさそうですね。(私は早速そうしました。)
1弦の出力を3倍くらいにするには、1弦側のクリアランスを6弦の1/√3(*1)にすれば良い計算になりますので、6弦側が4mmなら、大体2.5mmくらいになります。
そのように調整してみたところ、合ってるような結果になりました。
今回は、ピックアップからの出力電圧に関して実験しましたが、周波数が高い方が高い電圧が出ると言うのは意外だったのではないかと思います。
周波数が高い方が電圧が高いならば、ハイ落ちというようなことは起こらないはずなのですが、それはピックアップの特性と言うより、ピックアップを含めたギターの内部回路の方が影響しています。
そのことは音質に影響を与えているのですが、大きく影響しているのはピックアップのインダクタンスとQ(*2)です。周りの部品(特に配線材料のキャパシタンス(*3)成分)も影響しているのですが、そのお話はまたいつか。
*1 磁気の影響は、磁石からの距離の2乗に反比例することが知られています。
今回、ピックアップからの出力電圧を3倍にするにあたり、どこまでその距離を近づけるかの計算は、ピックアップと弦の距離を、磁気の影響を3倍受ける距離の計算となっています。
その距離とは、現在の距離よりも 1/√3 程近い距離となります。
*2 Q=コイルの重要な特性の1つ、内容に関しましては今後記事にしていきます。
*3 キャパシタンス=コンデンサの容量を示します。単位はファラッド(F)です。
By吉原直樹
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