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スティーヴィー・レイ・ヴォーンのラストステージ~彼は燃え尽きたのか?
ドラッグとアルコールに溺れた70年代後半から80年代前半にかけてのスティーヴィー・レイ・ヴォーン。多くの仲間、そして自らの音楽まで失ってしまうという窮地に立たされました。
そこから彼がどのような道を選んだのか…今回はそれをお話しましょう。
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スティーヴィー・レイ・ヴォーンは終わってしまった
トップアーティストの仲間入りを果たしたレイですが、体はコカインとウイスキーによって限界に近づいていました。周囲も、彼の体がボロボロになっていることを知っていましたが、誰も止めようとはしませんでした。
レイがステージやスタジオでギターを弾くことによって、多くのお金が集まり、それによってバンドのメンバーやスタッフたちは生活をしていました。
もはや完全なジャンキーと化していたレイは、ドラッグとアルコールがなければ何もできなくなっていました。もちろん、ステージに立つことも…。
そんな彼の姿を見て、人々は口々に言いました。
「スティーヴィー・レイ・ヴォーンは終わってしまった」
終わりが近いことを悟ったスタッフの中には、彼のそばから離れてしまう者も少なくありませんでした。
そんな状況の中で作られたライヴアルバム「Live Alive」で聴くことのできるレイのサウンドからはかつての輝きはもうありませんでした。ある評論家はこの時期のレイに対して「燃料が尽きてしまったようだ。」と評しています。
彼がボロボロになってしまったことを知らないファンや評論家たちから見ても、スティーヴィー・レイ・ヴォーンは終わってしまった、そう感じられたのでしょう。
80年前後のレイ。一見するとパワフルにプレイしているように見えますが彼の体はドラッグによって蝕まれていました。
死へと落ちて行く感覚
85年から86年にかけて、レイの体はいつ死んでしまったとしてもおかしくない状態となっていました。日増しに増えて行ったコカイン、そしてウイスキーの量はもはや人間の体が堪えることのできる限度を大幅に超えていたのです。
それでも、より強い効果を求めた彼は、ウイスキーにコカインを溶かし込んで飲むようにまでなっていました。この摂取方法は、ドラッグとアルコール、両方の効果をより高めてくれます。しかし、それはさらに体へのダメージを大きなものにすることを意味していました。
いくら常に酩酊状態にあっても、自分自身の体の異変に気づかないわけがありません。しかし、体の異変によってもたらされる苦痛を和らげるためには大量のコカインとウイスキーが必要だったのです。
このまま死んでしまうのかもしれない…レイは確かにそう感じていました。
85年頃のライヴ。このころになると、ドラッグとアルコール抜きで一本のステージをこなすことすら困難なほどに深刻な中毒となっていました。
エリック・クラプトンを助けた医師
音楽ファンであれば、エリック・クラプトンの名を知らない人はいないでしょう。彼もまた、同じようにドラッグとアルコールの深刻な中毒によって死の淵に立たされたことがありました。
そんなクラプトンを救った医師がヴィクター・ブルームです。彼はここで再びブルースロック界の伝説を救うことになったのです。
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86年の秋、ツアー先のドイツでレイはついに倒れてしまいます。いつものようにウイスキーにコカインを溶かし込んで飲んだ直後、呼吸困難に陥ったのです。死への恐怖に青ざめたレイは何度もこう叫びました。
「助けてくれ」
その場にいたバンドメンバーのクリス・レイトンは、クラプトンを救った医師の噂を思い出しました。彼ならば、レイを救うことができるかもしれない…そう考えたのです。スタッフにその医師をすぐに探させ、ヴィクターとコンタクトを取ることに成功したのです。
その後の予定はすべてキャンセルされ、レイはヴィクターのいるロンドンへと運びこまれました。
ドラッグおよびアルコールの重い中毒からの復活を果たした”ギターの神様”エリック・クラプトン。
あと一か月の命
レイを診察した医師はレイにこう告げました。
「いま治療をしなければあと一か月の命だ」
自分の体が限界に近い状態であることに気付いてはいました。しかし、こうしてはっきりと宣告されてしまうと強いショックを受けてしまいます。
異常な量のコカインとウイスキーを同時に摂取し続けたことにより、彼の内臓は穴だらけになっていたのです。ヴィクター医師のいったことは決して脅しなどではありませんでした。その事実をレイは黙って聞き、受け入れる覚悟をしました。
レイは初めて助けを求めました。まだ、死ぬつもりなんてありません。自分にとって必要なのは愛するギターと音楽であり、決してコカインやウイスキーではなかったことにようやく気付いたのです。
倒れる直前のライヴ中の様子。この時期になると青ざめた顔を隠すように常に深くハットをかぶっています。
2つの悪魔を追い払え
ロンドンで約1ヶ月の入院生活を送ることにより、一旦生命の危機を脱することができました。しかし、同じ生活を送っていれば、今度こそ待っているのは死です。
重度のジャンキーであったレイは完全にアルコールとドラッグという2つの悪魔を追い払うことができていたわけではありません。あくまで、一時的な危機を脱しただけでした。常にドラッグ、そしてアルコールへの欲求がよみがえってきます。
しかし、もう二度と同じような目には合いたくない、そしてもう一度スタートを切るんだ、そう決意したレイは再び助けを求めることになりました。
レイが次に向かった場所は、アメリカにある施設でした。ここもかつてエリック・クラプトンを再生へとみちびいた場所でした。ここからが、生まれ変わりのための本当の闘いとなりました。
次回は施設での彼の戦いについてお話しましょう。
By チリペッパー眞木
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