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ボ・ガンボスの独自過ぎた音楽性~日本人にとってのルーツロックとは?
初めてお会いするミュージシャンに取材をする際に楽しみにしていることがあります。それは「どんなミュージシャンに影響されたんですか?」という、いわゆる音楽ルーツの話。
ところが最近活躍している若手ミュージシャンに取材すると、返ってくるのは「まあ、いろいろ聴きますよ」という気のないことば。
洋楽から音楽的ルーツを得ることが少なくなっているようです。そこで80年代後半のロックシーンで活躍したボ・ガンボスを例として、音楽ルーツについて考えてみたいと思います。
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ニューオリンズのごった煮音楽「ガンボ」をバンド名に冠して活動開始
▲ガンボ・ミュージックの代表格、ドクター・ジョンからの影響は絶大
ボ・ガンボスは前身のバンドともいえるローザ・ルクセンブルグを経て89年にデビュー。
特徴的なバンド名はギター・キーボードのDr.kyOnが自分のテーマとしていたガンボ・ミュージックを表現するため、GUMBOという名前を入れて欲しいといったことと、たまたまかかっていたボ・ディドリーから一部を拝借してボ・ガンボスとなりました。
ガンボとはニューオリンズの伝統料理で“ごった煮スープ”のこと。音楽的にはブルースやマーチ、ポルカまで、さまざまな音楽のテイストを盛り込んだ独特の音楽のことをごった煮音楽という意味で「ガンボ・ミュージック」と呼んでいます。
ガンボ・ミュージックの代表格といえばドクター・ジョン。 ニューオリンズ出身のピアニスト、シンガーです。Dr.kyOnが当時から影響されていたというのは、2人のピアノ・プレイを聴いてみれば明らか。
軽快なタッチの明るいサウンドは日本人の鍵盤奏者にはあまり感じることができないものです。そういえば名前も思いっ切り頂いてますね(笑)。
彼は2013年の第55回グラミー賞では、最優秀ブルース・アルバム賞を受賞しています。アメリカにはこうしたルーツ・ミュージックを評価する土壌がありますよね。すばらしいことだと思います。
ボ・ディドリーを招いてニューオリンズでレコーディングされたデビュー作
▲デビュー・アルバムのレコーディングに参加するなど縁が深かったボ・ディドリー
バンド名を決めるときにたまたまかかっていたとはいうものの、ボ・ガンボスにとってボ・ディドリーは全員のルーツ。チャック・ベリー、リトル・リチャードらとともにロックンロールの生みの親のひとりとして知られる彼。
音楽はジャングル・ビートと呼ばれる独特のギター・カッティングが特徴です。ローリング・ストーンズやU2など、彼らをルーツの1人として挙げているミュージシャンも多く、亡くなったいまもリスペクトされています。
メジャー・デビュー前からライヴ活動でその名をとどろかせていたボ・ガンボスは、ファースト・アルバムのレコーディングをニューオリンズで行いました。世の中バンド・バブルだったこともあるとは思いますが(笑)、今では考えられない破格の待遇ですよね。
レコーディングにはボ・ディドリー、ネヴィル・ブラザーズのシリル・ネヴィル等、ルーツロックのレジェンドが参加しているというのもすごいことです。(レコーディングの模様はYouTubeでも見ることができます)
そうして完成したアルバム『BO & GUMBO』を初めて聴いたときの衝撃を忘れることはできません。
これまで聴いたことがないような思い切りリズムが強調された楽曲たち。重たくも軽快なドラムと前面に押し出された骨太なベース、その上を駆け巡るDr.kyOnの軽やかなニューオリンズスタイルのピアノ。
そのサウンドに負けないボーカル・どんとの個性あふれるソウルフルな歌声。すべてが過去に自分が経験したことのない音でした。
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彼らの音楽にはっきりいえることは、ルーツがあるということ。グループサウンズの時代から、日本人はローリング・ストーンズやビートルズなど、ブルースやR&Bを元にポップに変換した自分たちの音楽を作り出したバンドをルーツとしていることがほとんどでした。
ボ・ガンボスのサウンド~まるでブルースやR&Bの“原液”をそのまま飲み干したよう
▲確かな演奏力がライヴでも発揮され、4人でしかありえないグルーヴが生まれた
ボ・ガンボスは、ブルースやR&Bの“原液”をそのまま飲み干して日本の音楽に変換して吐き出した珍しいロックバンドでした。
そこには洋楽ロックをまねしたカッコ悪さは微塵もなく、洋楽でもなく既存の日本のロックバンドでもないオリジナリティにあふれた音楽がありました。
デビュー・アルバムが発売された89年、ボ・ガンボスは大晦日にレコード大賞「アルバムニューアーティスト賞」を受賞。ド派手な衣装に身をまとった4人がいきなり6チャンネルに映し出されたときはさすがに腰を抜かすほど驚きました。
まさか大晦日のテレビの生中継でボ・ガンボスが見られるなんて。地上波のテレビ局が目をつけるくらい、彼らの活躍が目覚ましかった証拠です。
披露されたのは3コードでミディアムテンポのロックナンバー「魚ごっこ」。イントロのソリッドなギターのフレーズをどんとが弾いていることをこのとき初めて知りました。
そのあと、少しずつ個人個人が求める音楽が変わって行ったことから95年にバンドは惜しまれながらも解散。2000年にどんとはハワイで脳内出血で倒れ、帰らぬ人となりました。37歳という短すぎる生涯でした。
▲ボ・ディドリーのライヴでアンコールに登場したどんとは「Who Do You Love」を熱唱
亡くなる前年、ボ・ディドリーの来日公演のアンコールに登場し「Who Do You Love」を歌ったどんとの姿は、いくつになっても自らのルーツとなった音楽への敬意を忘れないミュージシャンシップを感じさせるものでした。
洋楽を聴かない若者が増えているといわれる昨今ですが、テレビからは聴こえてこない音楽の魅力を知ることで人生が変わることもあります。
強烈な音楽体験を経てミュージシャンになったアーティストの音楽は、深みがあり魅力的です。ぜひそんなミュージシャンに世の中に出てきてほしいものです。
文・岡本貴之
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