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フェンダーベースのオールドは本当に素晴らしい?~その真偽を見極める

発売から四半世紀が過ぎたフェンダー社のジャズベースやプレシジョンベースのオールドは、現在でも高い人気を集めています。

でも、「オールドだから必ず素晴らしい。」と評価するのは早まった考えと指摘する声もあります。そんなオールドのフェンダーベースを検証してみました。

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楽器としてのオールドの位置付け

フェンダーベースの貴重なチラシ▲発売当時のフェンダーベースの貴重なチラシ

音楽に少しでも興味のある人であれば、「ストラディバリウス」というイタリアのヴァイオリンの名前を聞いたことがあると思います。

この「ストラディバリウス」は、もともとは16世紀後半から17世紀にかけてイタリアのクレモナで弦楽器を製作した人の名前で、現在では彼が製作したバイオリンなどの通称になっているのです。

彼はヴァイオリンやヴィオラ、チェロなど約1,100挺の弦楽器を製作したとされていて、現在ではその内の約600挺の存在が確認されています。

「ストラディバリウス」は現在でも数億円ともいわれる高価な取引き価格で知られていますが、その独特の音色と現存する数だけのプレミアがついた価値で高騰しているのです。

この「ストラディバリウス」と似たような状況が、フェンダー社製のジャズベースにも起こっています。

さすがに、状態の良いジャズベースにしても「ストラディバリウス」のような数億円の取引きにはなりませんが、それでも中古のエレキベースとしては破格の数百万円もの価格がついていることがあります。

ジャズベースはオリジナルのフェンダー社製でなくても、同型モデルのベースが他社からも数多く発売されています。この状況を見ても、ジャズベースがエレキベースの一つの完成形としていかに高く評価されているのがわかるのです。

オールドのフェンダーベースとしては、他にテレキャスターベースやプレシジョンベースがありますが、その中でも特に人気の高いジャズベースの需要の秘密として「ソリッド・ボディでありながら独特のアコースティック的なサウンド」という、一見矛盾するような独自のサウンドキャラクターがあげられます。

1960年に登場したジャズベースですが、現在の技術をもって当時と同じ材質で再現したとしても同じトーンは得られないといわれています。

発売されてから半世紀がたったいまも、高い評価を受け続けるオールドのジャズベースは、当時の厳選された材質と熟練のクラフトマンによって絶妙にマッチングされたピックアップによって作られていたのです。

オールドフェンダーの持つ特徴

1960年製オールドフェンダー▲現在も高騰を続ける1960年製モデル

現在も高い人気を集め続けているオールドのジャズベースやプレシジョンベースですが、その特徴としては何といっても「音が太くてレスポンスが素晴らしい。」ことがあげられます。

このオールドの音色について文章で的確に表現するのが大変難しいのですが、感覚的にいうと「ベーシストの指先の表現がダイレクトにサウンドに反映していて、輪郭のしっかりした太くて色気のある音色」という感じでしょうか。

1980年以降に大量生産されたジャズベースも独自のサウンドキャラクターを持っていますが、1960~70年代当時のジャズベースに搭載されていた独特のピックアップやコンデンサに加えて、現在では入手困難な良質の木材によって、オールドのジャズベース特有の素晴らしい音色が実現されているのです。

たとえば、1960年代のフェンダーベースに関しては、当時の高い技術を持ったクラフトマンによって、楽器としての完成度が近年のベースとは一味違うものになっているといわれていて、各パーツの取り付け部分が完璧に加工されているのが特徴といえるのです。

さらに現在の同機種との大きな違いとしては「使用されている木材の質」があげられます。1960年当時は楽器に適した優れた木材が潤沢で、必要充分な乾燥期間を設けることが可能な時代だったのです。

ボディは基本的に比較的軽量のアルダーや指板は、いまでは珍しいハカランダがスタンダードとしての仕様で、これらの材質もオールド特有の音色を作りだしているといえるでしょう。

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オールドフェンダーベースを選ぶ際の注意点

ネックの状態をチェックしよう▲特に注意したいのがネックの状態です。

素晴らしい音色が特徴になっているオールドのジャズベースですが、実はオールドといってもすべてのジャズベースが最高のクオリティを備えているわけではありません。

大量生産のシステムが一般化されていない時代のフェンダーのベースは厳選された木材を使って素晴らしい技術によって製作されていますが、その反面、その音色に個体差があるのが否めないのです。

いくら素晴らしい材質で精密に作られたとしても、残念ながら長年の使用によって劣化している部分もあるのがオールドなのです。

外観上は当時の状態を保ったオリジナルのピックアッブやコンデンサーだとしても、機能の低下でハイ落ちしていたりセールスポイントの音の太さが損なわれているものもあるので、試奏の時にはオールドの名前に惑わされずに慎重なチェックが必要です。

いくら外観上の雰囲気が素晴らしくても、オールド本来の音色が失われていては楽器としての価値が半減してしまうのです。

そしてオールドを選ぶ上で最も注意しなければいけないのがネックの状態です。音単体ではオールドらしい素晴らしい音色だったとしても、ネックの劣化によって各ポジションの正しいピッチが保たれていなかったり、デッドポイントがあったりするケースが少なくありません。

購入を検討する際には、これらのポイントを必ずチェックするようにして下さい。

高騰し続ける価格の裏を読む

貫禄あるヴィンテージベースのヘッドロゴ▲貫禄あるヴィンテージベースのヘッドロゴ

高額なものだと数百万円のプライスがつけられるオールドのジャズベースですが、実のところ、この価格はほとんど音色自体を反映していません。高いプレミアがつく条件として「いかにオリジナルに近い状態か?」が求められています。

つまり、価格を決定する要素としては音色自体よりもオリジナル度のレベルや外観のコンディションが重要視されているのです。

マニアックなオールドファンの中には、本体のみならず指板やペグ、プリッジにまでオリジナルを求める人が少なくないようですが、このような需要に応える形で価格設定がされているのも事実なのです。

メンテナンスとしてリプレイスパーツに取り替えられて楽器としての機能が向上しているにも関わらず、オールドとしては価値が下がっているケースがありますがプレーヤー志向の方にとっては逆に狙い目の商品ともいえるのです。

オールドベースのメンテナンスを考える

復刻モデルのピックアップ▲復刻モデルのピックアップ

音色重視のプレーヤー志向の方であれば、あえて各パーツのオリジナル性や外観にこだわらず、ネックやボディがしっかりしたオールドを選ぶのも得策といえます。

機能を満たしていればピックアップもオリジナルがベストですが、最近はリプレイスパーツでも優れたものがあるので購入後のメンテナンスを考える方法もあります。

とはいえ、あまり手を加えてしまうとオールド本来の音色から離れてしまうので、パーツ交換を含めたメンテナンスには慎重さが求められますが、楽器というものは日常的に演奏できて初めて価値が生まれてくるものです。

せっかく高い金額で購入しても、持っているだけで満足してしまうと大変もったいないのがオールドの楽器なのです。「メンテナンスをしながら大切に弾き続ける」これこそがオールドのジャズベースの存在価値なのです。

本体の劣化やメンテナンスの面倒臭さ、新品と比べて極めて高い価格、それでもオールドのジャズベースの人気は継続して高いものになっています。

この現象は、楽器本来の機能もさることながら、古き良き時代の音楽へのノスタルジー抜きでは語れないのかも知れません。

by JJ

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