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エレキギターのピックアップはコイルの巻き数で音質が変わるのか?
エレキギターの心臓部とも言えるピックアップ。いわゆるマイクとして音を拾ってくれる部分にあたります。構造としては磁石(ポールピース)とコイルによって構成されたとてもシンプルなものです。
そのピックアップのコイルの巻き数を変える改造することによって、どのように音質は変化するのでしょうか?実際に実験してみました。
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実際に比較をしてみましょう
今回、それを確認するのに、回路シミュレーターのSpice(*1)というソフトを使用しました。シミュレーション回路はこんな感じです。
▲シミュレーション回路。
シールドのキャパシタンス(容量)は、実際に私が使っている物を測定しました。私はアンプのすぐそばでしか弾かないので、シールドはかなり短く、1.5mほどです。
もしシミュレーションをやってみられるのであれば、230pFX(使っているシールドの長さ/1.5m)の容量を使えば、そう大きくかけ離れた数値にはならないと思います。私の使用している環境でのシミュレーションはこんな感じです。
▲実線の特性が電圧です。破線は位相特性(*2)ですので今回は検討しません。
ギターの中のフィルター回路
巻き線式のピックアップは、巻き線=コイルを使っているために、意図しないフィルターと言う回路ができてしまっています。しかもローパスフィルタという種類の物ができているため、ハイ落ちしますと言うことを当サイトで過去に説明させていただきました。
フィルターには次数(つまり、何個フィルターが入っているか)があり、ギターの中にできてしまうフィルターは2次になります。
2次フィルターには、2次にはないQという特性が出てきます。Qというファクター自体の説明は省きますが、Qが高い(*3)とピックアップから発生した以上の電圧が出る周波数域が出てきます。
その周波数と言うのは、フィルターが減衰特性になる周波数より少し低い周波数となります。
Qと言うのは、ピックアップの持つ抵抗成分が低い方が高くなります。(他にもQが変わる要素はあるのですが、ピックアップの抵抗成分だけが変わった場合を考えます。)
巻き数を少なくして、ポールピースなどで工夫してインダクタンスを上げれば、Qが高くなるので、高域の方によく出る音域が出てきます。
特性が変わるのでシミュレーション上では変化が出ますが、聴感でそれがわかるかを実験してみましょう。
Qだけで音質は変わるのだろうか?
Qで音質がどの程度変わるかを簡単に実験する方法があります。ピックアップをいじってQを上げるのは難しいのですが、Qを下げるのは割と簡単にできるので、それで実験をしてみました。
Qを下げるには、ピックアップと直列に抵抗を取り付ければ良いことになります。
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やってみたギターは、Ibanez RG-370 ミドルのシングルコイルピックアップです。このピックアップのインダクタンスと抵抗値を測ってみたところ、インダクタンス4.18H 抵抗成分5.83kΩでした。
▲変化はあるのでしょうか?
写真のように抵抗を取り付けてやってみました。たしかに変化はありますが、抵抗値は50kΩ位つけないと音の変化はわかりませんでした。その時の周波数特性はこんな感じです。
▲ピークの差をご確認ください。
抵抗を付けない時と比べ、4kHzあたりのピークの差が-4dBくらい(1/1.58)になって、やっと聴感に変化が出ます。(聴感の個人差は大いにあると思いますが *4)
逆に、+4dBピークを上げようとすると、抵抗値を1kΩくらい(巻き数にして1/5程度)にしなければならないことになります。(シミュレーションで確認)
この結果から、ピックアップの特性としては、インダクタンスはパワーと共に音質に影響しますが、抵抗成分の差による変化はあまり聴感に影響していないようだと言えます。
気持ちいい音域はどの程度なのだろうか?
ピックアップの改造を行った時、このくらいなら良しとしたインダクタンスが分かっていますので、そこから良い音に聞こえる周波数帯域を出してみましょう。聴感上良しとした時の周波数特性はこんな感じだったはずです。
▲聴覚上は・・・。
ここから周波数範囲は上限8kHz位まで、それ以上伸びていても聴感上、高域がうるさすぎて良い音には聞こえないようだとさせていただきます。(このあたりは好みがあるので、参考まで)
おそらく意図しなかったであろうローパスフィルターが、聴感に良い効果をもたらしているのは、偶然にしてもできすぎです。
それから、音質の調整ですが、ピックアップで変えるよりは、シールドの長さを(つまりケーブルのキャパシタンス)調整した方が良いのではないか、と提案させて頂きます。
(それ以前に、アンプの設定で変えろというご意見もあるでしょうが、今回はギターの内部回路記事なのでご容赦ください)高域の不足に不満のある方は、最近では低容量ケーブルがあるようなので、そちらを試してみるか、シールドをできる限り短くしてみてはいかがでしょうか。
また、高域が出すぎて不満をお持ちの方は、不要な長さであっても、長くしてみてはいかがでしょうか。常に一定の音質をキープしたいのであれば、シールドは常に同じ物を使うことをお勧めします。
さてギターを直しましょう
いろいろ測ったり分解したままになっていたギターの修理を再開しようと、音が出なかったリアの原因を調べたところ、なんと、リアのピックアップが断線していることが判明・・・。半田付けの不具合かと思い、やり直してみても直りません。
コイルをいじり始めたら泥沼状態になりますね。うん、断念!直さねーのかい!というつっこみが聞こえてきそうですが・・・もともと9,800円くらいで買ったギターですし、リプレイスのピックアップを買ったりしたらそっちの方が高くつきそうなので、逆にもう1本買っちゃった方が安いかもって…。
とりあえず、壊れたギターは何かの実験に使うように取っておくことにして、終了です。
*1 Spice:スパイスと読みます。回路のシミュレーションが出来るソフトウエア。無料でダウンロードできる物もあります。
*2 位相特性:角度で表した、信号のずれ
*3 Qが高い:Qが0.707以上になると、ピックアップが電磁誘導で発した電圧より高い電圧が出る周波数域が現れます。
ギターで使うであろう数値でいろいろシミュレーションしてみましたが、大体の場合で、ピークを持っているはずです。レゾナンスなどと言います。今回、ピックアップの抵抗成分にフォーカスしましたが、シールドケーブルのキャパシタンもQに影響します。
*4 聴感の個人差:私事ではありますが、加齢と共に聞こえる周波数が低くなってきてます。私以外の人もその傾向があります。(何人かで実験済)
人間の可聴周波数範囲は20Hz~20kHzなどといわれますが、私は15kHzはすでに微妙な状態になっています。左耳の方は9kHzくらいまでしか聞こえないので、音質の話を若い方々としても、話が合わないだろうなと思っています。
By吉原
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