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「ドミナントアプローチ」をマスターして一味違うロック系ギタリストに
音楽の表現方法には様々なテクニックがありますが、中でも特に強力な表現方法の一つが今回お伝えするドミナントアプローチです。
今回はこのドミナントアプローチを実際の演奏に活かすことで、コードにとらわれずに自由に表現する方法を解説します。
ロック系のギタリストが他のギタリストとは一味違うオリジナリティーを確立し、ミュージシャンとしてレベルアップしましょう。
この理論はジャスやフュージョンでも頻繁に使われる和声理論ですが、ロックの作曲法や演奏に応用することでその曲の印象や演奏を際立たせる効果があります。
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このテクニックをロックに応用した例として有名なのは、エディ・ヴァン・ヘイレンです。またその影響を受けたギタリストで質の高い演奏を残しているのはラットのウォーレン・デ・マルティーニ、ドッケンのジョージ・リンチなどが挙げられます。
彼らの演奏の特徴として、曲中のバッキング、ギターソロにかかわらず、曲のキー以外からのコードを上手く使ってその曲を豊かに展開していく事が挙げられます。
ロックやポップスで本来のキー以外からのコードを利用する方法は、主にドミナントアプローチとモーダルインターチェンジがあり、今回はドミナントアプローチについて詳しく解説します。
ドミナントアプローチとは
▲Am7とCに対してのドミナントアプローチの例
通常Jazzの理論でドミナントアプローチといえば、ドミナント・セブンスコード(例えばG7やD7などのセブンスコードのこと)からターゲットの音や和音に解決することを指します。難しく言うとドミナント・セブンスコードが生み出すトライトーン(ドミナントセブンスの3rdと7thの音)がターゲットの音に強く解決しようとする効果を生み出します。
「解決」という音楽用語に違和感を覚えるかもしれませんが、簡単にいうと「次に、あるコードを弾きたくなる」ということです。例えば「G7はとても強くCに解決を促す」と言うのは「G7を弾くと次にすごくCを弾きたくなるよね」ということです。
Jazz以外では不協和和音を避けるために実際には7thを省略することが多くありますが、同じ様にロックでもドミナントコードを使う場合に必ずしも7thを演奏する必要はありません。
7thを省略することで、当然3rdと7thが作るトライトーンは無くなりますが、ドミナントモーションと呼ばれるコードの5度の動きそのものに強い解決作用があるからです。
ジャズの理論、クラシックの和声学奏法ではこのドミナントのモーションそのものも、「強く解決を促す作用がある」として重要視されています。
ドミナントアプローチによるリハーモナイズテクニック
▲一般的に使われるコード進行。すべてAマイナーのダイアトニック。
ドミナントアプローチを使うことによって、今あるコードにとらわれすに、時にはキー以外の音を使って演奏出来るようになります。
それには本来あるコードとドミナントコードを入れ替えてしまう方法、もしくは今あるコード進行にドミナントコードを追加してしまう方法があります。
これはリハーモナイズ・テクニックと呼ばれるアレンジ法の一つであり、ジャズの音楽理論では「代理コード」と呼ばれています。一度でも音楽理論を勉強しようと思った方なら聞いたことはあるのでは無いでしょうか?
例えばあなたが演奏中にその場の判断でドミナントアプローチを使った場合「あなたは即興で代理コードを使用して演奏した」ということになります。
ドミナントコードの4度上、または5度下に解決しようとする強さはとても強いので(G7ならCに、A7ならEに)その性質を利用することで、とてもスムーズに曲中に使うことが出来ます。
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実際にドミナントアプローチを使ってみる
▲Ex.1をもとにして実際にドミナントアプローチを応用した例
それでは実際にドミナントアプローチを使って、リハーモナイズしてみます。もともとのコード進行がEx.1の楽譜です。ピアノの譜面で表記していますがギターで演奏することを念頭にわかりやすくするために2つの和音で書きました。
Ex.2がドミナントアプローチを使いリハーモナイズした例です。本来ドミナントコードに必要な3rdと7thを先に述べた理由で省略しています。それぞれターゲットになるコードの5度上からのコードでアプローチしていることを確認して下さい。
もっとも特徴的なのは2小節目のAのコードの時です。A7の7thを省略したAコードの3rdがダイアトニック(キーの中に収まること)ではなくなっています。ロックなどの演奏で、たびたびキー以外の音を使えば当然不自然になりますが、それだけ特徴的だとも言えるので使う場所を決めておけば、印象的なプレイとしてはかなり効果的です。
もちろん、同じく4小節目のEのコードに対してG#を加えれば同じ効果があります。
作曲にドミナントアプローチのアイディアを使う
▲作曲にドミナントアプローチを採用した例。サビのインパクトが大きい。
ドミナントアプローチの効果を作曲に利用すると他では得られないインパクトを得ることが出来ます。この作曲法は80年台のアメリカのロックバンド「ラット」などに多用され、たくさんのヒット曲を生み出しました。
この作曲法のキモは曲中のパート(ヴァース)において、キーのドミナントコード(キーがAmの場合はE、キーがCならG)をなるべくシンプルに、それでいて飽きられないようリズムパターンを工夫して演奏することです。
サビの5度上の不安定なコードを長く演奏することによって、サビのいわゆる「おいしい」コード進行やメロディが驚くほど引き立ちます。また、曲中のパートはメジャーキーに聞こえるので、サビで転調したようにも聞こえますね。
このように、本来ジャズの理論ではドミナントコードとは、例えばG7やA7のようにセブンスコードのことを指しますが、理論にとらわれ過ぎず、良い部分や効果的なテクニックは迷わず取り入れることが数少ないロックのルールです。
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