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ブライアン・ウィルソンの幻の作品「スマイル」~37年の時を経て発売
幻の作品として世に出ることのなかったブライアン・ウィルソンのアルバム「スマイル」。2004年、37年もの時を経てようやく正式にリリースされました。
彼はこのアルバムにどんなメッセージを込めたのでしょう?そして、これは名盤なのでしょうか?それとも迷盤?
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ザ・ビーチ・ボーイズの一員であったブライアン・ウィルソン
一般的に、ザ・ビーチ・ボーイズのイメージは西海岸の夏っぽい、美しいコーラスのバンドです。これは決して間違いではありません。
バンド名も「渚の少年たち」ですし、曲名も「サーフィン・サファリ」「サーフィン・U.S.A.」「サーファー・ガール」「ファン・ファン・ファン」「ダンス・ダンス・ダンス」「ドゥ・ユー・ワナ・ダンス」「カリフォルニア・ガールズ」など。
3枚目のアルバムでは、ジャケットで海をバックにサーフィンボードを、お揃いの服を着たメンバーが抱えています。当然のようにさわやかなイメージで売られていたのです。ブライアン・ウィルソンは、そんなバンドのなかで異端児でした。
ザ・ビーチ・ボーイズは1962年の夏がすっかり終わった頃にデビューアルバムを出します。それから、傑作「ペットサウンド」まで、スタジオ・アルバムだけでも1963年に3枚、1964年にも3枚、1965年にも3枚を発売しました。
重複した曲が収録されていたりするのですが、それでも、このペースは異常です。
ブライアン・ウィルソンは3枚目のアルバムからプロデュースに手を出します。
おそらく、「ウォール・オブ・サウンド」と呼ばれた音楽プロデューサーのフィル・スペクターに影響を受けたことがきっかけだと想像されます。
ザ・ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」がヒットしたのが1963年。翌年に、アンサーソング?的な「ドント・ウォーリー・ベイビー」を発表しています。
ブライアン・ウィルソンは、ついに1964年の終わるころにはライブ活動に参加しなくなり、作曲、レコーディングに専念するようになりました。引きこもりです。スタジオ引きこもりです。
そして、1966年に「ペット・サウンズ」を発表しました。ブライアン・ウィルソンにとっては自信作でした。
しかし、今でこそ、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」と肩を並べる傑作と評価されていますが、当時のファンには受け入れられませんでした。
アメリカの大衆はサーフィンもクルマも出てこない、内省的な歌詞に魅力を感じなかったのです。
幻のアルバム「スマイル」
レコーディング中のブライアン・ウィルソン
「ペット・サウンズ」製作中にできた「グッド・ヴァイブレーション」の技法をさらに膨らませたコンセプト・アルバムを次作に考えていました。しかし、アルコールとドラッグ依存に堕ち、精神を病んでしまったブライアン・ウィルソンに完成させることは無理でした。
それが幻のアルバム「スマイル」です。
レコード会社によって発売中止となった「スマイル」は「スマイリー・スマイル」に数曲入れられたり、その他のアルバムなどに収録されたり、細切れにされました。
また、それは多くのブートレグ(海賊盤)を生む結果となりました。
ブライアン・ウィルソンは再度、引きこもりました。今度は自宅。
そして、表舞台に出ることはなくなりました。1988年にソロ・アルバムを出すまで、およそ20年、ブライアン・ウィルソンは伝説というよりは幻の人となっていたのです。
犯罪人類学の父であるチェーザレ・ロンブローゾが残した言葉…天才と狂気は紙一重…の、まるでサンプルのようでした。
「グリンプス」ルイス・シャイナー
「ペット・サウンズ」のジャケットを想起させるルイス・シャイナーの1ショット。
1994年度の世界幻想文学大賞を受賞した、ルイス・シャイナー著作の「グリンプス」という小説があります。おそらく、タイトルはヤードバーズの同名曲か、USガレージのコンピレーションアルバム名から取られたのでしょう。個人的には後者だと思っていますが。
主人公はさえないオーディオ修理屋。ある日、ビートルズを聴きながら、もし後期の仲違いがなければ…と妄想していると、思った通りの別テイク「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」がステレオから流れてきます。
さらに、脳内で1960年代にトリップできる能力があるらしいことも知ります。そこで、超能力?をもった主人公は音楽界だけでなく歴史そのものを変えたかもしれない幻のアルバムの制作に直接、関わっていきます。
幻のアルバムとは、ドアーズ、ザ・ビーチ・ボーイズ、ジミ・ヘンドリックス。この3つです。
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この小説に出てくるザ・ビーチ・ボーイズのアルバムが「スマイル」でした。ロック史上最も有名な未発表アルバムを入れないわけにはいきません。まあ、実質はブライアン・ウィルソンのソロ作品と言えるのですが。
しばらく某出版社から発売していた文庫本が絶版になっていましたが、2014年1月に別の出版社から新刊の文庫本として出版されました。訳者は同じ人です。詳細な訳注や解説に、訳者の作品に対する思い入れを感じる小説です。
37年の時を経て完成した「スマイル」
最近のブライアン・ウィルソン
2004年、ブライアン・ウィルソン名義でアルバム「スマイル」が発売されました。制作を始めてから37年が経っていました。ロック史上最も有名な未発表…という看板はこの年に下ろされました。
しかも、2000年からスタートしていた「スマイル」全曲を含むツアーを元に、スタジオでそれを再現しただけで、レコーディングそのものは5日ほどで終わったそうです。なんと、あっけないのでしょうか。
あれほど生みの苦しみで精神までおかしくなり、レコード会社にも呆れられ、バンドを分裂状態にし、約20年の堕落した生活を過ごしたというのに、たった数日で、それが完結してしまうとは…。
「スマイル」の原題はジャケットにもあるように「SMiLE」です。なぜか、アルファベットがひとつだけ小文字なのです。アイが「I」ではなく「i」になっています。どうしても、それが「矮小化した自我」を表しているように思えてしかたがないのです。
考えすぎでしょうか?
ブライアン・ウィルソンが「わたしなんて、ちっぽけなものなんだよ」と皮肉っぽく笑っているように感じるのです。
「スマイル」は名盤、それとも迷盤
ブライアン・ウィルソン
これは難しい質問です。
ブライアン・ウィルソンが制作した最高の作品は「ペット・サウンズ」だと思っています。「神のみぞ知る 」良質な、ポップという概念を崩した、金字塔的なアルバムという位置づけです。
幻の作品を発表したことにこそ価値がある…というのは少々、的外れでしょう。内容で評価されるべきです。たしかにアルバム最後に収録された「グッド・ヴァイブレーション」などは美しく素敵な曲です。ただ、なにかが物足りないのです。
もし、1967年に狂気のなかで、ブライアン・ウィルソンが初めに構想していた通りの技法で「スマイル」が完成し、発表されていたら…そう思ってしまうのは贅沢ってものでしょうか。
by yosh.ash
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