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ユーリズミックスのスイート・ドリームス~壊れたテープを捨てられない理由
ある種のせつなさをもって心の奥底に眠っている楽曲が…何曲かあります。常に覚えているわけではないのですが、何かのタイミングで、ふと、頭のなかに、そのメロディや歌詞が出てくるのです。
雑踏を歩いているときや、ふと、空を見上げたときや、日曜の朝、目覚めたときや、誰かと何気ない会話を交わしている最中に。
曲というのは、曲そのものだけでなく、そこにくっついて離れない「おまけ」があって、それが自分のなかの接着剤になっているのでしょう。
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ユーリズミックス(Eurythmics)の「スイート・ドリームス(Sweet Dreams)」
▲ミュージックビデオのアニー・レノックス
ある夏の日の夜でした。
つけっぱなしのテレビから流れる映像に心を奪われました。目から離せないのです。それは知らないアーティストのはじめて聴く曲のミュージックビデオでした。すぐに名前と曲名をメモしました。
翌日には、近所にあるレンタルレコード店に行き、そのアーティストのLPを借りました。灰色と白の地味なジャケットでした。そして、すぐに家に帰ると、カセットテープにダビングしたのです。
それはユーリズミックスの「スイート・ドリームス」というアルバムでした。
ラジカセとエアチェック
▲部屋のすみにある古いCDラジカセ
まだ、CDを再生するオーディオは持っていませんでした。
家にあるのは父の友人がつくった古いコンポと、シャープの「ザ・サーチャー」というダブルカセットのラジカセでした。2年ほど前に、当時最先端のカセットからカセットへダビングができるやつをお祝いで買ってもらったのです。
CDラジカセが自分の部屋にきたのは、ずっとあとのことでした。バイト代をつぎ込んで手に入れました。自分のお金で買った、はじめてのオーディオ機器でした。
よく、ラジオでFMを聴きながら録音したものです。FM放送のエアチェックというやつです。もう、死語ですね。あまりCDを買えない貧乏な学生には唯一といっていいくらいの音源でした。
ブリティッシュ・インヴェイジョンとMTV
▲1980年代のユーリズミックス、アニー・レノックスとデイヴ・スチュワート
ユーリズミックスは1983年、シングル「スイート・ドリームス」でアメリカ、カナダ、フランスの各チャートで1位(なぜか本国イギリスでは最高位が2位で、そのときの1位はボニー・タイラー)。
時代は、デュラン・デュランやカルチャー・クラブ、ワム!などを代表とするブリティッシュ・インヴェイジョンと、1981年に放送が開始されたMTVでした。
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その波のなかでもユーリズミックス、特にアニー・レノックスは異彩を放っていました。無機質なエレクトロ・ポップにのった、短髪で中性的なアニー・レノックスの個性はきわだっていました。
実際、1984年、第1回MTVアウォードの最優秀新人賞をとりました。シンディ・ローパー、マドンナなどを押しのけての受賞でした。
ちなみにその年の最優秀ビデオ賞はザ・カーズの「ユー・マイト・シンク」で、ノミネートされていたマイケル・ジャクソンの「スリラー」やポリスの「見つめていたい」を押しのけての受賞でした。
何やら、80年代半ばの匂いを感じてしまいます。
ニュー・ウェーヴから派生したニュー・ロマンティックスの全盛期。ミュージック・ビデオはプロモーションを目的とした媒体として認知されるようになっていました。
最新の映像技術に、流行のファッション。たしかに今となっては苦笑するしかないようなビデオもありますが、「スイート・ドリームス」のなかのアニー・レノックスには時代を超えたオーラのようなものが存在しています。
「スイート・ドリームス」の正式な名前は「Sweet Dreams (Are Made of This)」です
▲壊れてしまっても捨てられないカセットテープ
十年以上経って、リマスターされた「スイート・ドリームス」のCDを見つけたとき、迷うことなくレジに向かいました。
カセットテープのそれではなく、きれいな音質にとまどいを感じました。それでも、変わりなく、頭のなかではあのとき聴いたチープな音が鳴り響いています。
「スイート・ドリームス」の英語タイトルは「Sweet Dreams (Are Made of This)」です。歌い始めの歌詞はこんな感じです。
甘い夢って これでできてるのよ
文句があるわたしって誰?
それでも、いまだにダビングしたカセットテープを捨てられません。部屋の大掃除をするたびに処分しようと思うのですが、どうしても捨てられないのです。カセットテープには音だけでなく、その当時の思いが詰まっているような気がして、捨て去ることができないのです。
その後のユーリズミックス、その後のアニー・レノックス
▲再結成後のユーリズミックス、ライブ風景
1990年に活動停止したユーリズミックスは1999年に再結成。10年ぶりにアルバム「ピース」を発表。ユーリズミックス名義としては、これ以降、新作はありません。
ソロ活動していたアニー・レノックスはHIVエイズの現状を伝える活動家としてのニュースが多くなりました。
2010年にソロしては6枚目のクリスマスをテーマにしたアルバムを発表。2012年、ロンドン・オリンピックの閉会式では「リトル・バード」を歌い、相変わらずの姉御ぶりを全世界に見せてくれました。
変わらないものもあれば、変わっていくものもある…変わらざるをえないものもあります。時間の流れは、ときに残酷で、非情なものなのです。それでも残る思い出は、甘い夢なのかもしれません。
by yosh.ash
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