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東レの繊維でボーイング787の機体が作られているのをご存知ですか?

2014.02.24

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東レといえば、繊維の会社です。大正時代に、合成繊維・レーヨンのメーカー「東洋レーヨン」としてスタートした伝統企業です。現在では合成繊維だけの会社ではありません。

1960年代の高度成長期後の繊維不況の時代を上手に乗り越え、今やボーイング787を始め航空機の機体までつくっています。金属ではなく炭素でできた機体です。

繊維業界は構造不況業種と呼ばれ、1970年代以降は縮小傾向のつづく業界です。

かつては同じ繊維業界のトップ企業として君臨していたユニチカが、今は経営再建に苦戦しています。両社の命運を分けたのは何だったのでしょうか?

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東レとユニチカの売上の差は30年間で2倍から10倍にまで開いてしまいました

戦後から高度成長期にかけて、日本の経済をけん引してきた産業のひとつは「繊維」でした。

当時の日本は国際的な経済の中では、現在の中国のようなポジションで、価格の安い製品を世界マーケットに送り出すことで急成長したのです。

繊維会社の中でも、名門企業といわれていたのが、ニチボー(現:ユニチカ)、東洋レーヨン(現:東レ)、帝人です。

1978年時点での3社の売り上げは、ユニチカ2,427億円、東レ4,843億円、帝人3,204億円と大きな差はありませんでした。当時の東レはユニチカの2倍程度の売上です。

それが2012年になると、ユニチカは1,746億円、東レは1兆5,886億円と、10倍近く差が開いてしまいました(帝人は8,543億円)。およそ30年間で、東レは3.2倍以上成長したのに、ユニチカは縮小してしまったのです(帝人は2.6倍に成長)。

中国などの人件費の安い国の製品に圧倒されて、日本の繊維産業は構造不況業種と呼ばれ将来性がないといわれていました。残念ながらユニチカはその通りの軌跡をたどっていますが、東レは生き残ってきたのです。

ユニチカはかつて「東洋の魔女」と呼ばれた!?

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ユニチカは前身の大日本紡績(ニチボー)の時代にバレーボールでその名を世界にとどろかせました。1964年の東京オリンピックで女子バレーボールが金メダルをとりましたが、そのときのレギュラーメンバーのほとんどがニチボーの選手。

1962年の世界選手権には、 ニチボーの単独チームで出場して優勝するなど、圧倒的な強さで「東洋の魔女」と呼ばれました。戦後の日本国民を勇気づける力のあった企業です。

「マスコットガール」も有名で、風吹ジュン、手塚理美、紺野美沙子、大友みなみ、夏川結衣、本上まなみ、米倉涼子、北川弘美、滝沢沙織などの女優やタレントを輩出しました。

ユニチカは価格競争に敗れた

1980年代以降、とくにバブル経済崩壊後の繊維業界は、中国・韓国などの安い製品の流入によりきびしい競争を強いられました。ユニチカ凋落の最大の要素は、価格競争に巻き込まれたことです。

リストラなどによるダウンサイジングで再建を図りましたが、2009年には赤字に転落して140億円の純損を出しました。2010年以降は黒字に回復していますが、売上の減少にはストップはかかりません。

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東レは浄水器まで作り始めました!

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繊維不況と呼ばれる中で東レがとった戦略は、強みをいかした新しい分野への参入です。驚くべきは、80年代に発売開始をした家庭用浄水器「トレビーノ」。それまで、洋服などの素材を作っていた会社が突然、浄水器を売り出したのですからとても強い衝撃でした。

しかし、まったく無関係のものなのかといえば、そうでもなかったのです。水を浄化する装置部分には、同社の繊維技術を生かした「中空糸膜」が使われており、まさに繊維製品のアレンジでした。

さらに、メガネレンズのクリーナー「トレシー」も売り出します。

極細繊維で作られたクリーナーは、それまでの製品では取り除けなかった油汚れまで、キレイにふき取ることができるというスグレれもの。洗顔など肌の脂をとるのにも使えるということで、人気商品となりました。

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炭素繊維や医療にまで幅を広げた

東レはさらに、自社の技術力を活かせる分野を広げていきました。炭素繊維や医療、液晶関連素材などの非繊維事業にも注力し始めます。現在では、東レの製品は、コンタクトレンズ、CD/DVD媒体、人工腎臓、合成樹脂・プラスチックなどにも広がっています。

炭素繊維で飛行機をつくりました!

とくにすごいのは、炭素繊維。比重は鉄の4分の1なのに、強度は10倍といわれ、軽くて強い素材です。

ゴルフクラブのシャフトやレーシングカー、人工衛星などにも使われています。ダイヤモンドも炭素だということからわかる通り、分子構造によってはとても高い強度を持つのです。

東レは、炭素繊維の分野では後発であるにもかかわらず、PAN系炭素繊維分野では世界最大手となりました。その開発過程においては、30年も累積赤字が続いていたそうです。

あきらめないで地道に研究を続けた成果なのでしょう。現在ではボーイング787などの飛行機の機体にも使われ、空を飛んでいます。

ユニクロと提携して「ヒートテック」も開発!

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ユニクロで売られ大ヒットした「ヒートテック」も東レの製品です。価格競争をするのではなく、技術を生かした新しい製品を作ることに東レの強さの秘密があるのでしょう。付加価値の創造が企業の成長のキーであることを証明したような会社です。

厳しい環境の中では、戦略次第で企業の命運はわかれるのですね。かつて国民に夢を与えたユニチカには、ぜひ復活してもらいたいです。

by 水の

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