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日本のTPP参加で医療が変わる?~自由診療がふえて負担増の可能性も

2014.04.14

日本のTPP参加で医療が変わる?~自由診療がふえて負担増の可能性も はコメントを受け付けていません

なかなか合意を見ないまま進められている、日本の「TPP交渉」、もし参加が実現すると、私たちの医療にも影響が出る可能性が指摘されています。

一体何が問題なのか、また逆にメリットはあるのかどうかなどについて分かりやすく解説したいと思います。

そもそもTPPって何だろう?

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)とは、太平洋を囲む国々の間で結ばれる経済協定のことです。

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輸入の際にかかる関税を撤廃することで、さまざまな商品の動きを自由にし、「貿易の活性化」や、いい意味での「競争の発生」などを目的としています。

もともとはシンガポール、ブルネイ、チリ、そしてニュージーランド4か国間で結ばれた協定ですが、2010年から拡大交渉が始まり、アメリカやオーストラリアなども話し合いに加わるようになりました。

日本も交渉に参加するよう呼びかけられていたものの、関税を撤廃すると国民からの批判は避けられないとして、なかなか実現に至りませんでした。

実際に交渉への参加が始まったのは、自民党が政権を奪回し、安倍晋三氏が首相になった2013年からです。

安倍首相は、日本に不利益な協定にならないよう「聖域なき関税撤廃」(すべての関税が無条件に撤廃されること)を前提としたTPP交渉には参加しない旨を明言しており、現在も慎重な議論を進めています。

TPP参加で懸念される「海外の医療保険の参入」

国は慎重な姿勢で交渉にあたっているものの、国内ではさまざまな反対意見が出ており、論争が巻き起こっています。

医療でいえば、まず「医療保険」の問題です。

日本には戦後、国民皆保険制度が確立し、すべての国民に健康保険への加入が義務づけられました。

そのおかげで誰もが少ない窓口負担で、平等に高度な医療を受けられるのです。

しかしその分、民間の医療保険の必要性は乏しく、補償内容は世界から見てもレベルが低いといえます。

また満期になった時に受け取れる額なども、海外の保険のほうがずっと高かったりします。

そこで日本がTPPに参加すると、今よりも外資系企業が日本に参入しやすくなることから、海外の医療保険会社がどんどん進出してくることになります。

補償内容も手厚いものが多いため、お金に余裕のある人は喜んで加入するでしょう。

ですから日本の保険会社にとっては大きな脅威になるはずです。

「混合診療の解禁」による医療の格差問題とは?

しかも問題はそれだけにとどまりません。海外の保険会社にとって、日本の国民皆保険制度は正直に言って「邪魔」になります。

3割程度の負担で誰もがある程度の医療を受けられるなら、一部の富裕層を除き、それ以上を望む人は少ないからです。

ですから日本は「混合診療の解禁」を求められるのではないか、と懸念されています。

混合診療とは、1つの治療の中で保険を使えるものと、全額自己負担のものを分けることです。

日本では原則として禁止されていますが、特別に認められているものに歯科治療があります。

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たとえば虫歯の詰め物としてセラミックのクラウンを選ぶ時、通常の虫歯治療は保険適用で、そしてクラウン代だけを自己負担で支払います。

「別に、お金がある人はそれ以上の治療を選べばいいだけじゃないの?」と思われるかもしれませんが、すべての治療で混合診療を認めてしまうと、自由診療のほうに力を入れる医師が増えることになりかねません。

たとえば今なら「これ以上の治療を受けたければ、全額自己負担になりますよ」としているところを、「保険でここまでやって、それ以上は自己負担でどうですか?」となれば、選ぶ患者さんも増えるはずです。

ですから病院側も、保険診療は「そこそこ」にしておいて、自由診療をメインにする可能性があります。

そもそも自由診療の金額は、病院側が自由に設定できますので、保険診療に比べてずっと「儲かる」のです。

その結果、保険診療はおざなりになり、私たちが高度な医療を受けようと思えば、民間医療保険の高額なプランに入るしかなくなります。

ここでTPPによって参入してきた海外の保険会社が儲かる仕組みにつながるのです。

こういった「所得による医療格差」が、参加で懸念されているもっとも大きな医療の問題です。

ちなみにこのシステムは、実際に今のアメリカに見ることができます。

アメリカには国民皆保険制度がないため、富裕層だけが民間の高額な保険に入っていい医療を受けており、低所得層は保険に加入すらしていないことも珍しくありません。

アメリカはまさに「お金がなければ医療を受けられない国」なのです。

TPP参加によって、難病治療が進む可能性も?

一方、混合診療の解禁のメリットもあるといわれています。それは「医療全体の質が上がる可能性」です。

保険診療がメインの今の日本では、医師の腕が良かろうと悪かろうと、患者さえいれば実入りは同じという図式になっています。

保険診療の報酬は決まっているため、いわゆる「ヤブ医者」でもある程度は儲かってしまうのです。

しかし自由診療に力を入れられるようになれば、医師の熱意や腕によって病院にも格差が出てきます。

熱心なところでは、最新の医療機器や治療法を積極的に取り入れるなどして、より良い医療をおこないやすくなるのです。

さらに、日本ではとにかく認可が遅いといわれる海外の薬や治療法も、TPP参加によって導入しやすくなります。

ですから特に難病に苦しむ患者さんにとってはありがたいのではないか、ともいわれています。

つまり「国営の機関」が「民営の企業」に変わるのと似ていて、「競争が生まれる結果、医療の質が良くなる」「熱意ある医師のモチベーションが上がる」といった効果が考えられるのです。

ただしその一方、誰もが低料金で安全な医療を受けられる今のシステムが崩れてしまう可能性を考えると、非常に難しい問題だといえるでしょう。

ちなみに政府は、「日本の国民皆保険制度は揺るがない」と断言しており、アメリカのオバマ大統領も「国民皆保険制度に介入するつもりはない」と明言しています。

これらの言葉が守られつつ、より良い医療に変わっていくことを期待したいところです。

By 叶恵美

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