気管支喘息を甘く見てはいけません~発作で命を落とすこともあります
突然、咳が止まらなくなる「気管支喘息」は、発作時に適切な対応をとらないと呼吸困難で命を落とすこともある怖い病気です。
普段からしっかりと薬を使って発作をコントロールすること、また発作が起こった時には様子を見ながら、必要に応じて救急受診することが大切になります。
大人の発症も増えている気管支喘息
気管支喘息というと、子どもの「小児ぜんそく」が有名ですが、実は近年、大人の発症も増えています。子どもの頃に患っていた喘息がぶり返すケースのほか、大人になってから初めて発症する場合も少なくありません。
子どもの喘息も大人の喘息も、発作時の激しい咳と、胸がヒューヒュー、ゼーゼーいう「喘鳴(ぜんめい)」が特徴的な症状です。時間帯としては夜や早朝、また運動時や入浴後、気温差の激しい時などにもよく起こります。
多くは喘鳴の有無で目安がつきますが、まだ症状の軽い場合はそれほど見られない場合もあるため、喘息かどうかを確定するためには検査を受ける必要があります。呼吸機能を調べる機械を使った検査や、発作を誘発する薬を使っておこなう検査、またアレルゲンを特定するための血液検査などが主です。
喘息はなるべく早期に診断を受け、適切な治療を開始することが治りを良くします。特に成人の喘息は、子どもよりも治りにくいといわれますので、頑固な咳が続く場合は忙しくても早めに受診するようにしましょう。
大人では、アレルゲンの特定できない喘息も多い
気管支喘息には、アレルギーによるものとそうでないものとがあります。特に成人になってから発症する喘息では、アレルゲンを特定できない場合が多く見られます。
1.アレルギーによる「アトピー型ぜんそく」
小児ぜんそくの場合、9割近くがアレルゲンを特定できる「アトピー型」といわれています。家の中では、「ダニ」がもっとも多いアレルゲンです。高温多湿になりやすい日本では、どの家にも数億匹ものダニが住み着いているといわれます。
他にもカビやハウスダスト、ペットの毛のほか、外にも花粉や鳥の羽、キノコの胞子といったアレルゲンが存在します。どのアレルゲンに反応するかを調べるために血液検査がおこなわれますが、幼児の場合ははっきりと結果が出ないこともあります。
いずれにせよアレルゲンの可能性があるものをなるべく排除するよう、生活環境を整えることが大切です。
2.アレルゲンを特定できない「非アトピー型ぜんそく」
小児ぜんそくの約1割、また大人の喘息では約3割がアレルギーとは無関係に起こります。もともと体質的に気道が過敏である、もしくは風邪やストレスがきっかけで発症するケースが多いようです。
特に大人の場合、風邪から始まる喘息が多いといわれます。他の症状は治ったのに、咳だけが頑固に続く「咳ぜんそく」が、そのまま気管支喘息につながることがあるのです。
ですから「風邪が長引いているのだろう」と軽く考えず、早めに呼吸器科を受診することをおすすめします。
またもともと気道が過敏な人の場合、他の人では何でもない気温差や匂い、タバコの煙などにも敏感に反応してしまい、咳が止まらなくなってしまうことがあります。
いずれにせよ自分の喘息のタイプを知り、発作を誘発するものをできる限り避ける生活を送ることが大切です。
気管支喘息の治療法~普段からの薬物治療が重要!
喘息で怖いのは、発作で呼吸困難になることですので、発作が起こらないように日ごろから薬を使って症状をうまくコントロールすることが重要になります。
治療の主軸となる薬の1つが、「吸入ステロイド薬」です。発作のない日でも毎日使い、気道の炎症を抑えます。
ちなみにステロイドといっても、喘息治療に使われる吸入薬は局所的に作用するものですので、全身副作用の心配はほとんどありません。また継続的に使わないと効果が薄れてしまうため、必ず医師の指示にしたがって毎日使うことが大切です。
吸入ステロイド薬とともに処方されることが多い薬に、長時間作用型の「β2刺激薬」があります。これは気管支を拡張するための薬で、吸入薬のほか、内服薬や貼り薬などもあります。
一方、発作が起こった場合には短時間作用型のβ2刺激薬が使われます。それでも効果がない場合は、内服するタイプのステロイド薬なども使うことがあります。
さらにアレルギーによる喘息では、ダニやハウスダストなどの除去も大切です。しかし家の中からすべてのアレルゲンをなくすのは難しいため、一部の医療機関では「免疫療法」もおこなわれています。アレルゲンとなる成分を定期的に少量ずつ注射する治療法です。
ただし副作用リスクが高いことと、継続的に受け続ける必要があることから、まだ一般的に広まっているとはいえません。万が一の副作用に備え、医療体制の整った大きな病院で受けることが望ましいでしょう。
発作で命を落とさないために~救急受診のタイミングを逃さないで!
毎日きちんと薬を使っていても、喘息の発作は起こる可能性があります。発作で怖いのは、様子を見すぎて受診のタイミングを逃し、そのまま呼吸困難で命を落としてしまうことです。
まず発作が起こったら、処方されているβ2刺激薬などを吸入します。それで治まらない場合や、すぐに発作がぶり返す場合は、基本的にそれ以上薬を使用せずに救急受診しましょう。
特に喘鳴がひどくて会話もできない場合、もしくは唇や皮膚が紫になる「チアノーゼ」の症状が見られる場合は、一刻も早い受診が大切です。喘息の発作は夜間に起こりやすいため、いざという時にはためらわず救急車を呼びましょう。
喘息の発作で亡くなる場合、その多くが薬を何度も使用して受診が遅れたケースだといわれています。普段から家族が発作のパターンを把握するとともに、いつもと違う様子が見られた時にはすみやかに病院につれて行くことが重要です。
もちろん普段から、いざという時の対処法について医師の説明を聞いておき、万一の際にも落ち着いて動けることが何より大切だといえます。
By 叶恵美