突然の「めまい」で天井が回る!~命の危険性がある重大な病気の場合も
突然、部屋がぐるぐると回る…もしくはスッと意識が遠のくような感覚に襲われる…「めまい」にはさまざまな症状があります。
多くは一時的なもので、安静にすれば治まることが多いのですが、中には重大な病気が隠れているケースもないとは言い切れません。
特に数秒間の失神をともなう場合、もしくは言語障害や歩行障害などをともなう「めまい」の場合には命の危険性もありますので、すみやかに受診することをおすすめします。
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めまいで考えられる「耳」の病気
そもそもめまいは、何らかの原因によって体の平衡感覚が崩れるために起こるものです。私たちの体で平衡を司る器官は複数ありますが、大きく分けると三半規管や耳石器などの「耳」、そして脳幹や前庭神経などの「脳」のどちらかになります。
まずは耳の器官の異常が原因で考えられる病気をいくつかご紹介します。
1.良性発作性頭位めまい症(BPPV)
めまいの中でもポピュラーなもので、頭を特定の方向へ動かした時に起こります。特に起床時に起こりやすく、部屋がぐるんぐるんと回るような回転性の激しいめまいが特徴です。
多くは安静にしていれば数十秒で収まります。また吐き気をともなう場合はあるものの、難聴など耳の障害はありません。
原因の多くは、頭の動きを感じる「内耳」の前庭気管で「耳石のずれ」が起こることです。炭酸カルシウムでできた「耳石」が本来の位置から外れると、頭を動かした時に正常な感覚をつかめなくなり、めまいにつながると考えられています。
この症状では、むしろ普段から頭を動かすようにする治療法が効果的です。めまいを専門とする耳鼻科で指導を受けられますので、ぜひ相談しましょう。
2.メニエール病
難聴や耳鳴りのあるめまいの場合、メニエール病の可能性があります。強い回転性のめまいとともに、吐き気やおう吐をともなう人が多く見られますが、言語や運動の障害はありません。
原因は、内耳にリンパ液が過剰に溜まってしまう「内リンパ水腫」です。メニエール病で怖いのは、発作を繰り返すうちに難聴が進んでしまうことですので、早めの受診と治療が大切になります。
内リンパ水腫を軽減するための利尿剤や、血のめぐりを良くする薬、ステロイド剤などが多く使われています。
3.突発性難聴
何の前触れもなく急に起こる難聴で、耳鳴りをともなうこともあります。難聴が始まった時に1度だけ強いめまいを感じる患者さんが多く、何度も繰り返す場合は他の病気を疑うことが一般的です。
原因は特定されていませんが、ステロイド剤の投与が効果的であることが分かっています。治療開始が遅くなればなるほど予後は悪くなりますので、早めの受診が肝心です。
4.前庭神経炎
風邪が治った1~2週間後に、突然、激しい回転性のめまいが数日~数週間にかけて起こります。ただし難聴など聞こえの障害は見られません。
前段階として風邪があることから、平衡感覚を司る三半規管~脳につながる「前庭神経」のウイルス感染が原因と考えられています。多くは1週間ほどで治まりますが、めまいが強いため、薬の処方を受けることが望ましいでしょう。
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めまいで考えられる「脳」の病気
脳からくるめまいは、基本的に難聴や耳鳴りといった症状はともないません。まためまい自体も耳由来のものに比べると軽いことが多いのですが、脳疾患の場合は言語や運動に障害が生じやすい特徴があります。
1.脳卒中(脳出血や脳梗塞)
脳の血管に異常が生じたことで、平衡感覚を司る器官が障害を受けると、めまいにつながります。症状は出血や梗塞が起こった箇所によって異なり、めまいも強い場合もあれば軽い場合もあります。
脳卒中によるめまいの特徴としては、時間が長く、短くても30分程度は続くことです。まためまいのみならず、言語障害や片側だけの体のしびれ、片目の視力低下など、少なくとも他の脳疾患の症状が1つでも見られることが目安となります。
脳卒中は一刻も早い処置が必要なため、救急受診しましょう。
2.椎骨脳底動脈循環不全
脳幹や小脳に血液を送っている「椎骨動脈」「脳低動脈」の血流が悪くなることで起こります。めまいは数十秒で治まることが多いのですが、他に手足のしびれや視力障害、麻痺や歩行障害などの症状を感じることもあります。
特に椎骨動脈は頸椎(首)を通っているため、急に頭を反らすような動作をすると血流が悪くなり、めまいを起こしやすくなります。治療としてはゆっくり起床するなど急な動作を避けること、また血のめぐりを良くすることが主です。
3.てんかん
急に意識を失う発作で知られるてんかんでも、耳鳴りと同時にめまいを感じる人が多く見られます。どちらかというとグラグラ揺れ動くようなめまいで、地震だと錯覚することもあるようです。
てんかんの場合、けいれんや意識障害などの他の症状が起こるため、他の病気との区別は比較的容易です。脳波の検査などを受けた上で、抗てんかん薬で治療をおこないます。
4.起立性低血圧によるめまい
急に立ち上がった時に血圧が下がり、立ちくらみやめまいが起こるのが起立性低血圧です。ひどい場合はそのまま一時的に失神することもあります。
寝た状態もしくは座った状態から立ち上がると、下半身に血液が集中してしまい、脳の血流が不足しがちです。通常は血管の収縮によって血圧を維持できるのですが、自律神経の乱れなどでこの調節がうまくいかないと脳が虚血状態となり、めまいにつながります。そのため「脳貧血」と呼ばれることもあります。
ちなみにこの起立性低血圧と、貧血はよく混同されることがあります。貧血はあくまで血中のヘモグロビンが不足した状態ですが、起立性低血圧では検査をしても結果は正常です。
5.不整脈
厳密には心疾患に分類されますが、めまいをともなう病気の中でも命に関わるものとして、不整脈があります。
状態としては起立性低血圧と似ていて、血圧が急に下がるために脳が虚血状態になり、スッと血の気が引く感じがします。多くは数分で治まりますが、長引くと失神することもあるほか、最悪の場合はそのまま突然死することもあるため注意が必要です。
1度でも血の気が引くめまいとともに数秒間失神したことのある人は、念のため循環器内科などを受診し、24時間の心電図をとる検査を受けることをおすすめします。
By 叶恵美
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