日本人の4人に1人は睡眠障害?~寝ても疲れのとれない人は要注意!
日本人の4人に1人が、何らかの睡眠障害を抱えているといわれます。
しかし「寝つきが悪い」「寝ても途中で目が覚めてしまう」といった症状は比較的分かりやすいものの、「十分に寝ているはずなのに、なぜかスッキリしない」時は原因が分からず困ってしまうものです。
そんな人の睡眠中には、一体どんな現象が起こっているのか、考えられることをご紹介していきましょう。
突然いびきが止まる!「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」
睡眠時に呼吸が数秒間停止し、脳が酸欠状態になる病気です。
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厳密には睡眠中、呼吸が10秒以上停止する状態が5回以上起こるケースを指しますが、この定義に当てはまらない場合も症状によっては無呼吸症候群を疑います。
原因は、上気道(空気の通り道)の閉塞です。
そのため首に脂肪がついている肥満型の人に多く見られますが、特に日本人の場合はあごが小さく気道が狭くなりがちなため、体型に関わらず起こりやすいといわれています。
また扁桃肥大やアデノイド、舌が通常より大きいなど、気道の狭さにはさまざまな要因が考えられます。
いずれにせよ何らかの理由で空気の通りが悪くなっていることが、睡眠時無呼吸症候群の原因です。
睡眠時無呼吸症候群になると、脳に十分な酸素が行き渡らないため、寝ても寝ても疲れが取れにくくなります。
そして昼間に眠気に襲われ、居眠り運転や仕事中の事故などにつながる恐れがあります。
もう1つ怖いのは、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くに生活習慣病の合併が見られることです。
健康な人と比較して、高血圧を約2倍、心筋梗塞や狭心症を約3倍、脳梗塞や脳出血などを約3~5倍もの確率で発症するともいわれています。
しかし睡眠時無呼吸症候群の治療によって、これらの病気の予防や改善につながったという報告も多く集まっています。
現在の治療法としては「CRAP」といって、鼻から空気を送ることで上気道を広げるためのマスクをつける方法が主流です。
非常に高い効果を上げていますので、寝起きがスッキリしない人、家族から「いびきが止まっている」と指摘されている人などは、ぜひ睡眠外来のある病院を受診しましょう。
仕事中に居眠りしてしまう「ナルコレプシー」
ぐっすり眠ったはずなのに、昼間に耐えがたい眠気に襲われてしまう睡眠障害に「ナルコレプシー」があります。
「居眠り病」とも呼ばれ、学校の授業中や、大切な会議中であっても眠りこけてしまうため、周りからは白い目で見られることも多い病気です。
ナルコレプシーでは日中の眠気とともに、笑いなど感情の高ぶった時に突然、全身の力が抜けてしまう「情動脱力発作」という症状も特徴的です。
他にも居眠り時もしくは夜間の入眠時にリアルな幻覚を見る「入眠時幻覚」や、いわゆる「金縛り」なども起こりやすいといわれています。
発症は10代など若い世代がほとんどで、40代以降での発症はまれです。
原因はまだ特定されていないものの、近年では「オレキシン」という脳内神経伝達物質の不足が関わっていることが分かってきました。
治療法としては、まず夜の睡眠をしっかりととることが第一です。その上で薬物治療をおこないます。
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昼間の眠気を抑えるために、モダフィニル(モディオダール)などの「中枢神経刺激薬」を、また情動脱力発作や金縛りを抑制するためにSSRIなどの抗うつ薬も使われます。
特にモダフィニルは副作用が少ない上、効果が半日も続くため、朝食後に1度飲むだけで済む点がメリットです。
ただし薬は対症療法にすぎないため、毎日継続する必要があります。またできれば15~30分程度の昼寝の習慣をつけることも、居眠りの防止に役立ちます。
1日10時間以上は寝てしまう「過眠症」
いくら寝ても寝足りず、起こされない限り何時間でも寝てしまうような人の場合、「過眠症」の可能性も疑われます。
日中に耐えがたい眠気が襲ってくる点はナルコレプシーと似ていますが、過眠症では夜の睡眠が長時間になることが特徴的です。
そのため通常の人にとっては十分な睡眠時間をとっていても、仕事中などに居眠りをしてしまいます。
またナルコレプシーと異なり、少しくらいの居眠りでは眠気がスッキリしないケースがほとんどです。
さらに不安感やイライラ感、ぼんやりする、食欲が湧かないなど、いわゆる「寝不足」の時に起こりやすい症状が慢性的に見られます。
ナルコレプシーと同様、社会的に問題があると見なされがちな睡眠障害の1つです。
過眠症の診断の目安としては「1日10時間以上の睡眠を毎日とっている」、そして「日中に何度も居眠りしてしまう」ことです。
また患者さんの多くは10~20代といわれています。
単なる体質といえるケースもありますが、原因としてうつ病や脳障害、尿毒症などが関わっている場合もあるため注意が必要です。
特に睡眠薬や抗うつ薬を常用している人の場合、副作用として過眠症になることもあります。
また肥満傾向にある人のほうが過眠症になりやすいことも分かっており、日中のエネルギー消費が少ないためにますます減量が難しくなるという問題も起こってきます。
治療としては、ナルコレプシーと同じく日中の眠気を抑えるための「中枢神経刺激薬」の服用が主流です。
そして日中になるべく体を動かし、夜に質のいい眠りを得られるようにするという「メリハリのある生活」を心がけるほか、肥満の人は減量することも症状をある程度緩和させます。
もちろん薬の副作用の場合は、服用量の見直しなどもおこなわれます。
またカフェインやアルコールは眠りの質を落とすため、過眠症の患者さんには基本的に勧められません。
いずれの睡眠障害も、まずは睡眠外来で問診や検査を受ける必要があります。その上で自分に合った薬の助けを借りながら、生活のリズムをしっかりと整えることが大切です。
またどうしても改善が難しい場合は、うまく病気と付き合いながら続けられる仕事を選ぶなどの選択も必要になってくるかもしれません。
By 叶恵美
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