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天才脳の仕組み~9000冊の本を暗記するサヴァン症候群とは?

2014.04.25

天才脳の仕組み~9000冊の本を暗記するサヴァン症候群とは? はコメントを受け付けていません

1度見たものを完ぺきに記憶できる、ものすごい桁の暗算を瞬時にできる、人並み外れた芸術的才能がある…知的障害を持つ患者さんの中には、ある特定の分野に優れた能力を発揮する「サヴァン症候群」の人がいます。

天才脳とはどうなっているのか、一般の人が近づくことはできるのかについて考えてみたいと思います。

常識では説明がつかない記憶力を持つ「サヴァン症候群」とは

サヴァン症候群を一躍有名にした映画に「レインマン」があります。お金儲けばかり考えているチャーリー(トム・クルーズ)が、父の死をきっかけに自閉症の兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)と再会し、一緒に旅をするストーリーです。

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その道中で、チャーリーは兄の持つ類まれなる記憶力に気づき、それを利用してカジノのカードゲームで荒稼ぎをします。

レイモンドには「キム・ピーク」という実在のモデルが存在しました。彼は生まれながらに脳に障害があり、介護を必要とする身でしたが、人並み外れた記憶力の持ち主で9,000冊以上の本を暗記していたといいます。
さらに日付を適当に言えば、それが何曜日であったかも正確に答えられたそうです。

こうした人々を総称して「サヴァン症候群」といいます。知的障害を持つ人の2,000人に1人、特に自閉症では10人に1人の割合で見られるといわれる、いわゆる「天才脳」の人々です。

レインマンと同じく映画でいうなら、「CUBE」に出てきた知的障害者のカザン(アンドリュー・ミラー)も、尋常ではない暗算能力を持っていたことからサヴァン症候群だったと思われます。

代表的な能力は記憶や暗算で、円周率をえんえんと暗唱できたりします。しかも必ずしもその内容を理解していなくても記憶が可能のようです。「レインマン」のレイモンドも、毎日電話帳をながめるのが日課でした。

数学の天才

ただし、なぜこうした能力が生まれるのかについてはまだ原因が特定されておらず、おそらく脳に何か秘密があるのだろうということしか分かっていません。自閉症の場合は、基本的に他人に関心を持たず自分の世界に閉じこもることから、特定の才能を伸ばしやすいのではないか、とも考えられています。

とはいえすべての自閉症患者さんにこういった能力が見られるわけではなく、むしろそれが偏見となる場合もありますので気をつけたいところです。

アスペルガーやADHDにも天才が多い?

障害と天才脳ということでいえば、アスペルガーやADHDなどの発達障害も挙げられます。

たとえばアスペルガー症候群は、知能的には特に問題がないことから「高機能自閉症」とも呼ばれます。見聞きしたものの理解や、他者とのコミュニケーションに苦労する一方、自分の興味ある特定の分野には驚くほどの知識を持つのが特徴です。

エジソンやアインシュタインも、残されているエピソードなどからアスペルガーだったのではないかといわれています。

一方ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、集中力を維持しにくく日常生活に支障が出る発達障害ですが、中には天才的なひらめきやクリエイティブな才能を持つ人もいます。
奴隷解放宣言をしたリンカーン大統領や、レオナルド・ダ・ヴィンチもADHDだったのではないかといわれます。

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ただしこちらも、「特定の方面に才能がある人=アスペルガー」のように誤ったイメージが広まっていますので注意しましょう。

天才は、自分にとって都合のいい情報だけを選ばない!?

積み木で遊ぶ天才の赤ちゃん
いわゆる天才たちの生涯やキャラクターを見てみると、どの人も「自分の好きなことには誰よりも没頭する」ことが分かります。

中には日常生活をおざなりにしてまで研究や創作活動に打ち込む人も多く、このあたりの集中力や「他のことが気にならない」という感覚が、実は天才脳につながっているのではないかと推測されます。

多くの人はあらゆる情報に囲まれながらも、その中から自分に必要な情報だけを無意識のうちにフィルタリングして生きています。そうしなければ脳がパンク状態になってしまうからです。

しかし統合失調症などの疾患を持つ人は、このフィルタリングがうまくいかないために入ってくる情報すべてを処理しようとします。その結果として幻覚や幻聴が現れるのですが、もしも圧倒的な情報量を処理できるだけのキャパシティがあれば、逆に常人には思いつかないひらめきや独創性が生まれると考えられるのです。

実際、天才と呼ばれる人たちを調査したところ、取り込む情報量が普通の人よりも多いという結果が出ています。つまり「自分の生存にとって重要なもの」だけを選んでいるのではなく、より幅広い視点を持っている可能性が高いのだといえます。

発達障害を持つ人は、文章や会話を理解するスピードが通常より遅めといわれますが、これも理解に必要な点をピックアップせず、すべてを脳に取り込んでしまうからです。こうした脳のフィルタリング機能の違いが、もしかしたら天才脳に関わっているのかもしれません。

ただし偉業を成し遂げる天才たちは、生まれながらの才能やひらめきだけではなく、「尋常ではない粘り強さ」も持ち合わせています。たとえば実験なら、他の人はやらないような方法までとことん試し、最終的に求める答えにたどりつくというケースが多いようです。

近年ノーベル賞を受賞した田中耕一さんや山中伸弥教授の例を見ても、やはり気の遠くなるような研究の積み重ねがあったことが分かります。

サヴァン症候群のような天才脳を得るのは不可能でも、「最後まであきらめないこと」「情報をより分けしすぎないこと」を意識すれば、少し天才に近づける…のかもしれませんね。

By 叶恵美

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