飛蚊症という目の異常~視界に虫のような動くものが見えませんか?
青い空や白い壁をボーッと見る時、視界に糸くずか虫のようなものが見える人はいませんか?何だろうと思って目で追おうとすると、逃げるかのようにフレームアウトしていく…それは「飛蚊症(ひぶんしょう)」という目の症状です。
多くは病的なものではありませんが、中には網膜剥離が原因となるケースもありますので、念のため眼科で検査を受けましょう。
明るい場所で気になる、視界の糸くず!
飛蚊症で見えるものは、白や半透明、もしくは黒っぽい糸くずのような物体です。見ようによっては蚊のような虫にも見えることから「飛蚊症」と呼ばれています。
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暗い場所ではそれほど気にならないものの、明るい場所や白い壁に囲まれたところにいるとはっきり見えるのが特徴です。最初は「目にゴミが入ったのかな」と思う人も多いのですが、目をこすったり洗ったりしても消えることはありません。
一般的には加齢とともに見える頻度が高くなりますが、中には20代など若い頃から始まる人もいます。また近視が進めば進むほど起こりやすくなるといわれています。
生理的な飛蚊症と、病的な飛蚊症がある
飛蚊症の中でも、特に病的ではないものは「生理的飛蚊症」と呼ばれます。目の内部は空洞ではなく、「硝子体(しょうしたい)」というゼリー状の物質で満たされています。
おもに眼球の形を維持するのに役立っていますが、ここが加齢などによって変化してシワが寄ったりすると、その影が網膜に届いて糸くずのような形が見えるのです。
また先天的な飛蚊症もあります。まだ目が出来上がっていない胎児の硝子体には血管が通っており、完成するにしたがって消失するのですが、たまに血管の跡のようなものが残ったまま生まれる子もいます。
これも生理的な飛蚊症ですので、特に症状がひどくならない限りは問題ないとされています。
他にも目の外傷や強度の近視などによって硝子体が濁った場合も飛蚊症になりますが、特に気をつけたいのは病気によるケースです。代表的なものに「網膜剥離」があります。
網膜剥離は、液状化した硝子体によって網膜が引っ張られることで穴が開き(網膜裂孔)、その裂け目から水が入って網膜がはがれる病気です。裂け目から出血してしまうため、それが原因で飛蚊症の症状が出るようになります。
網膜剥離になると視野が狭まり、視力が急激に落ちます。最悪の場合は失明に至る危険性もあるため、注意したい病気です。
ただし早期に発見すれば、今では手術で治せる病気になっています。飛蚊症の症状がある人は、こういった病気の可能性を疑うためにもぜひ1度、眼科で検査を受けるようにしましょう。
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飛蚊症の治療法~今後はレーザー治療が広まる可能性も
飛蚊症は、手術で硝子体を切除することで治ります。ただし術後の合併症も多いため、日本では病的でない飛蚊症の場合、リスクのほうが高いとしておこなわれない傾向にあります。
しかし海外では、より安全なレーザーを使って硝子体の濁りを砕く治療法も広まりつつあります。さらに安全性が確立されれば、生理的飛蚊症の患者さんもより気軽に治療を受けられるようになるかもしれません。
一方、網膜裂孔や網膜剥離を起こしている患者さんには、一刻も早い治療が必要です。裂孔を起こしている場合は、網膜剥離を予防するためにレーザー治療がおこなわれます。
すでに剥離を起こしている場合はレーザーでは治療できないため、手術で穴をふさいだり、硝子体を切除したりする必要があります。
今のところ日本では、患者さんの年齢が若く、病的な飛蚊症ではない限りは積極的に治療をすすめられることはありません。しかし見える物体の数が急激に増えてきた場合は、網膜の異常も考えられますので、眼科で検査を受けるようにしましょう。
飛蚊症は、サプリや食事改善では完治できない!?
「手術をするほどでもないけれど、できれば視界の邪魔になる飛蚊症をどうにかしたい」…そう思う患者さんも多いものです。しかし今のところ、レーザーや手術以外で根本的に飛蚊症を改善する方法はないとされています。
巷では「ルテイン」などのサプリメントや、鍼灸治療、食事の改善や目薬などが飛蚊症の代替療法として紹介されていますが、眼科医は基本的にこれらの治療効果を否定しています。
というのも飛蚊症は、硝子体の濁りもしくはシワによって起こるものですので、それを除去しない限り治るわけがないからです。
残念ながら今のところ、硝子体の濁りを消すような目薬は開発されていませんし、そんな目薬があるとすれば他の部分も溶かしてしまうことになります。ですから飛蚊症は、レーザー治療や手術などの物理的な手段でしか確実に治すことはできないのです。
ただしまだ若い人の場合、硝子体の濁りが自然に分散されたり、飛蚊症の起こりにくい位置に移動したりしていつのまにか改善することはよくあります。これは非常に運のいいことです。
そうでない限りは、基本的に症状と付き合っていくしかありません。今後、安全で効果の高いレーザー治療に保険が適用される日が来ることを期待したいところです。
By 叶恵美
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