逆流性食道炎を放置すると食道がんになる!?~ゲップや胸焼けに注意
「最近、胸やけがひどい」「風邪でもないのに喉の痛みが続く」「やたらとげっぷが出る」…そんな人は、逆流性食道炎を疑ってみる必要があります。
若い世代にも急増しているこの病気は、放置すると食道がんのリスクも高めてしまうため油断できません。ぜひ念のために、内科や消化器科を受診してください。
逆流性食道炎の症状は、見逃されることが多い!?
逆流性食道炎とは、消化に使われる胃酸や十二指腸液が逆流し、食道の粘膜を荒らしてしまう病気です。
胃の入り口(噴門)には括約筋があり、内容物が逆流してこないように通常は閉じた状態になっています。しかし何らかの原因でゆるんでしまうと、消化液が食道のほうに上がってくることがあります。
食べ物をドロドロにする胃酸は強力な酸性に保たれていますから、胃壁以外の場所に触れると粘膜を刺激して、炎症やびらんを引き起こしてしまうのです。
代表的な症状としては、胸やけや胸部の不快感、口の中がすっぱくなる感じなどがあります。また喉の痛みや声のかすれ、げっぷ、腹部膨満感や咳なども多く見られる症状です。
いずれも日常生活の中でよくある症状ばかりですので、なかなか受診しない人が多いのですが、逆流性食道炎は放置すると食道がんのリスクも高めてしまいます。胃酸に長い間さらされ続けていると、食道壁が胃壁と同じような組織に変化してしまう(バレット食道)ことがあり、これが食道がんに発展する可能性があるのです。
バレット食道になっている人は、そうでない人と比べて食道がんの発生率が20倍以上高くなるともいわれています。
ストレス、嗜好品、食生活…逆流性食道炎のさまざまな原因
逆流性食道炎のリスクファクターとしては、まず加齢が挙げられます。若いころは括約筋がしっかりと働いて、胃の入り口が締まっている人が多いのですが、加齢とともにゆるんでしまい胃酸が逆流しやすくなるのです。
他にも喫煙や飲酒、ストレスなどが括約筋を弱めることが指摘されています。特にストレスは思う以上に食道の働きを弱めるため、若い世代でも注意が必要です。
さらに食生活も重要です。一般的に脂肪分や糖分の多いものは、胃酸の分泌を多くするため、逆流性食道炎のリスクを高めます。近年、若い世代に逆流性食道炎が増えているのも、まさに食生活の欧米化が一因だと考えられています。
また腹圧(おなかにかかる圧力)が高ければ高いほど胃酸は逆流しやすくなるため、便秘や肥満、姿勢の悪さなども原因となります。その意味では妊娠中も、一時的に逆流性食道炎になりやすい状態だといえるでしょう。
その他、横隔膜に空いた穴から胃の一部が飛び出してしまう「食道穿孔ヘルニア」になっている人も、逆流性食道炎にかかりやすいことが分かっています。
逆流性食道炎の検査と治療法
逆流性食道炎が疑われる場合は、ぜひ内科や胃腸科、消化器科で検査を受けるようにしましょう。多くは問診の後、内視鏡(胃カメラ)検査をおこない、内側から粘膜の状態を直接確認することで診断をつけます。
逆流性食道炎の治療は、薬物療法が中心です。特に胃酸を強力に抑える「プロトンポンプ阻害薬」は、症状を抑えるために高い効果を発揮します。また必要に応じて「H2ブロッカー」や、粘膜を保護する薬なども併用することがあります。
手術になるケースは非常に少なく、食道穿孔ヘルニアが悪化している場合などに限られます。また精神的なストレスが大きく関わっているケースも多いため、人によっては精神科領域の治療が必要になることもあります。
逆流性食道炎の再発を防ぐ、生活改善のポイント
逆流性食道炎は、いったん症状が収まっても再発しやすい病気ですので、薬のみに頼らず、生活そのものを変えることも大切です。特に以下のようなポイントに気をつけましょう。
1.あっさりした消化にいい食事を心がける
胃酸は、脂肪や糖分の多いものを消化する時に多く分泌されますので、これらの食べ物を控えることが基本です。消化に負担をかけない、あっさりした食事を心がけましょう。
またお腹いっぱい食べてしまうと胃酸が逆流しやすくなるため、常に「腹八分目」を守ることも重要です。
2.食べた後ですぐ横にならない
食後は特に胃酸が逆流しやすいため、1~2時間は体を横にしないようにしましょう。その意味でも夕食は、寝る2時間前までには済ませておきたいところです。
またなるべく上半身が高くなるような姿勢で寝ると、就寝中に胃液が逆流しにくくなります。とはいえ頭だけを高くしすぎると首に負担がかかりますので、柔らかい枕やバスタオルをいくつか使って、腰から上全体をゆるやかに高くするのがおすすめです。
3.お酒とタバコは控える!
逆流性食道炎の患者さんには、飲酒と喫煙の習慣がある人が多く見られます。いずれも食道の粘膜を荒らすほか、胃酸の分泌を過多にしますので、治療のためには控えるに越したことはありません。
4.肥満を解消する!
下腹部に脂肪がつきすぎていると、腹圧が上昇して胃酸が逆流しやすい状態になります。ですから肥満傾向にある人は運動をするなどして、ぜひ減量に励みましょう。
同じ意味で、お腹を締めつけるベルトや服もなるべく避けたほうが安心です。
5.こまめに水分を補給する
胃酸は健康な人であっても、多少は逆流してくるものです。しかし通常は唾液によって中和され、不快な症状が出ないようになっています。
唾液の分泌が少ない人はそれだけ胃酸の影響を受けやすくなってしまいますので、こまめに水分を補給するようにしましょう。ノンカフェインのお茶や、ミネラルウォーターがおすすめです。
By 叶恵美