バイアグラやシアリスで知られるED治療薬ってどんな薬?
ED(勃起機能障害)に悩む男性にとって、大きな助けとなるのがバイアグラをはじめとするED治療薬です。
「なぜ薬でEDがよくなるの?」「ほんとうに安全なの?」と疑問に思う男性も多いと思いますが、イメージよりもずっと安心で効果的な薬であることは間違いありません。
実際、病院でおこなわれているED治療でも、これらの薬の処方が第一選択となっています。
ED治療薬のメカニズム~自然な勃起を手助けする薬
現在、日本で認可されているED治療薬には、バイアグラ、レビトラ、シアリスの3種類があります。
いずれも正式には「PDE5阻害薬」といいます。
「PDE(ホスホジエステラーゼ)5」とは、勃起を妨げてしまう酵素の名前です。
そもそも勃起が起こるためには、次のようなプロセスを踏む必要があります。
1.性的刺激を受け、それが脳から神経を通って陰茎へと伝わる。
2.すると一酸化窒素が海綿体に放出され、「サイクリックGMP」という物質が増加する。
3.通常は閉じている海綿体の平滑筋がゆるんで、血液が多量に流れ込む。
しかしPDE5という酵素は、勃起に欠かせない「サイクリックGMP」という神経伝達物質を分解してしまう性質を持ちます。
バイアグラをはじめとする薬は、この酵素の働きを阻害することで、サイクリックGMPを増えやすくする作用があるのです。
その結果、きちんと平滑筋がゆるみ、血管が拡張して血液が海綿体に流れ込めるようになります。
つまり通常の勃起のときに起こる現象を手助けする薬だといえるでしょう。
ですから性欲を高める催淫効果などはなく、あくまで性的刺激というシグナルがあってこそ効果を発揮します。
いくら薬を服用しても、性的刺激を受けなければ勃起が起こることはありません。
世界初のED治療薬、「バイアグラ」とは
ED治療薬のなかでも、最初に登場したのがファイザー社の「バイアグラ」です。
1998年にアメリカで発売され、「夢の薬」として男性たちから熱狂的に歓迎されました。日本では翌年の1999年に承認されています。
主成分は「シルデナフィル」で、もともとは狭心症の治療薬として開発されました。
狭心症にはいまひとつ効果が得られなかったものの、男性治験者の一部にED改善作用が見られたことから、急きょED治療薬へ方向転換したという経緯があります。
日本では25mgと50mgの2種類の錠剤が発売されており、性行為の30分~1時間前に1錠を服用します。効果の持続時間は約5時間です。
もっとも長く使用されている信頼と実績あるED治療薬ですが、やや食事の影響を受けやすい傾向が見られます。
そのため空腹時、もしくは食後2時間が経過してから服用する必要があります。
バイアグラの短所を補うようにして登場した「レビトラ」
バイアグラ登場から5年後の2003年、ドイツのバイエル薬品から発売されたED治療薬が「レビトラ」です。
主成分は「バルデナフィル」で、作用のメカニズム自体はバイアグラと同じです。
日本では5mg、10mg、20mgの3種類の用量が発売されており、錠剤がやや小さめでのみやすいのが特徴です。
またレビトラはバイアグラの欠点を補うべく、食事の影響を受けにくいことをアピールポイントとしています。
ただし脂肪分の多すぎる食事は薬の成分の吸収を妨げてしまいますので、あっさりした食事にとどめる必要はあります。
効果の持続時間もやや長く、20mgの場合は8~10時間となっています。
もっとも長い作用時間を実現した「シアリス」
「シアリス」は2003年にアメリカの「イーライリリー・アンド・カンパニー」から発売されたED治療薬です。
日本では2007年に認可され、5mg、10mg、20mgの3種類が販売されています。
シアリスの特徴は、なんといってもその長い作用時間にあります。
服用後36時間という長さを実現しているため、性行為のタイミングを気にすることなく使える点が大きなメリットです。
これは成分の「タダラフィル」が、ほかの2剤よりも分解されにくい構造になっていることと関係しています。
たとえば金曜の夜にのむと日曜の朝まで効果が持続することから、欧米では「週末の薬(ウィークエンドピル)」とも呼ばれています。
また旅行時などにも使い勝手のいい薬です。
また持続時間が長い分、効き目がやや穏やかでもあり、バイアグラやレビトラによく見られる顔のほてりが見られにくいとされています。
ED治療薬の副作用と注意事項について
これらのED治療薬は、いずれも医師の処方を受けて指示どおりに服用すれば、非常に安全で効果も高い薬です。
ただし薬である以上、やはりいくつかの副作用はあります。
もっとも多いのは顔のほてりですが、これは血管が拡張して血行がよくなったために起こるものです。
ただし、むしろ多少ほてったほうが効果を実感しやすいと感じる男性もいます。
ほかには鼻づまりや頭痛、胃痛などが見られる場合もありますが、いずれも作用時間がすぎれば治まる場合がほとんどです。
PDE5阻害薬に独特の副作用としては「青視症」というものもあります。
もともとPDE5は視覚にも関わる酵素のため、薬によって働きを抑えられてしまうと、まれに青色があざやかに見える副作用が起こります。
多くは一時的な症状ですが、万が一続く場合は早急に受診しましょう。
またいずれの薬も、狭心症の治療などに使われる「硝酸薬」との併用が禁忌とされています。
どちらも血管を拡張させる作用があることから、血圧が低下しすぎてしまう恐れがあるためです。
実際、この知識がまだ広まっていなかったころに、個人輸入で薬を手に入れた男性が硝酸薬と併用してしまい、死亡事故につながったケースもあります。
絶対に併用しないよう気をつけましょう。
By 叶 恵美