ヘッドホンで音楽を聴きすぎると難聴になります~内耳の細胞が破壊!?
iPodやウォークマンなど、さまざまなポータブル音楽プレイヤーが販売されている今、電車でも道でもヘッドホンをつけている人を多く見かけます。
しかし大音量で音楽を聴き続けていると、「ヘッドホン難聴」になってしまうリスクがあることをご存知ですか?
しかもヘッドホン難聴で失われた聴覚を取り戻すのは非常に難しいため、日ごろから予防の意識を高めることが大切です。
大きな音が原因で起こる「騒音性難聴」とは?
難聴にもさまざまな種類がありますが、ヘッドホン難聴は「騒音性難聴」といって、継続的に大きな音を聴き続けることによって起こるものです。
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ですからライブハウスやカラオケなどで大音量の音楽を日常的に聴いている場合、もしくは大きな機械音の鳴る工場に勤めている場合などもハイリスクになります。
実際、ミュージシャンやオーケストラの指揮者などは、騒音性難聴を発症しやすいといわれています。
たとえばコンサートで体に響くような音を聴いた後、静かな場所へ行くと「耳がジーンとして聞こえづらい」と感じた経験のある人は多いと思いますが、「騒音性難聴」はそれが治らなくなった状態です。
特にヘッドホンは、音が集約されて鼓膜に直接響くため、スピーカーから聴くよりも耳に大きなダメージを与えます。
ちなみに以前までは、ライブハウスに頻繁に出入りする若者に騒音性難聴が多く、「ロック難聴」と呼ばれていましたが、最近ではヘッドホンの使い過ぎによる難聴が急増しているようです。
ヘッドホン難聴が起こる仕組み~耳の細胞が破壊されてしまう!
私たちが音を聴くためには、外から入ってきた音が信号となって脳に伝わる必要があります。
まず音が耳に入ってくると、鼓膜が震えます。さらにその振動が「耳小骨」というところを通って「内耳」の中にあるリンパ液を震わせます。
するとそれが電気信号となって「聴神経」に伝わり、脳に送られることで音を感知するという仕組みです。
ヘッドホン難聴の場合、鼓膜が破れる、もしくは内耳がダメージを受けることで発症するケースがほとんどです。
もっとも鼓膜は再生できる可能性があるのですが、内耳の場合は治療が難しくなります。
内耳の中には、平衡感覚を司っている「三半規管」のほか、鼓膜の振動を電気信号へと変換する「蝸牛(かぎゅう)」という器官があります。
この蝸牛の中には「有毛細胞」という音を感じ取るための大切な細胞が1万個以上あるのですが、ヘッドホンで大音量の音楽を聴き続けていると、この細胞が破壊されてしまうのです。
有毛細胞は、いったん破壊されると再生することはできません。将来的にiPS細胞などによる再生医療が進歩すれば、いずれ回復できる可能性はあるものの、今のところ不可能となっています。
さらに大きな音は三半規管にも影響しますので、めまいやふらつきも起きやすくなります。中にはめまいが先に起こるケースもあるため、難聴だと気づかない人もいるようです。
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こんな症状があったら要注意!早めの受診が肝心
電車の中で、シャカシャカと周りに聞こえるくらいの大音量で音楽を聴いている人をよく見かけますが、それは危険信号だといえるでしょう。
本人は特にボリュームを上げているつもりはなく、「ちょうどいい」と感じているはずです。つまり聴覚が低下していると考えられます。
ヘッドホン難聴の場合、日々少しずつ耳がダメージを受けるため、本人が自覚しにくい点が問題です。気づけば自分も、シャカシャカと音を響かせている可能性があります。
ですから「ヘッドホンの音漏れを指摘されるようになった」「テレビの音量を上げるようになった」「人と会話していても聞き返すことが多くなった」という人は、ぜひ難聴の可能性を考え、早めに耳鼻科を受診しましょう。
騒音性難聴は、まだ症状が固定される前であれば、耳を休めることである程度回復できる可能性があります。
しかし自覚が遅れれば遅れるほど、細胞の破壊が進んで治療の手立てがなくなってしまいます。その場合は服薬や点滴などで進行を抑えたり、補聴器を使ったりする方法しかありません。
ヘッドホンの正しい使い方と選び方~とにかく耳を休める!
ヘッドホン難聴を防ぐためには、まず音量に気をつけることが基本です。
周りの会話や、近づいてくる車の音が聞こえる程度のボリュームに抑えましょう。
これは難聴のみならず、交通事故を防止するためにも重要なことです。
できれば最大音量を制限する「リミッター」という機能のついたヘッドホンを選ぶといいでしょう。
また長時間聴きっぱなしにせず、適度に休憩時間をはさむことも大切です。
ですからヘッドホンをつけたまま仕事をし続ける、ヘッドホンで音楽を聴いたまま寝るなどの行為は、非常に危険だといえます。
目安としては、CD1枚分(約60分)ごとに休憩をとるようにしましょう。
ちなみに騒音性難聴は体調にも左右されますので、疲れている時や体調の悪い時は、いつもよりも短めに切り上げるようにします。
ヘッドホンの形状としては、耳の中にはめこむタイプのものよりも耳全体を覆うタイプ(オーバーヘッド型)のほうが、耳へのダメージは少ないとされています。
開放型と密閉型がありますが、密閉型のほうが遮音性は高く、音量を上げ過ぎずに済みます。
ただしその分、外の音が聞こえにくくなりますので、道を歩きながら聴く時には開放型にしたほうがいいでしょう。
そして必ず耳を休める時間を作り、聴覚をニュートラルな状態に戻す習慣をつけることが何よりも大切です。
By 叶恵美
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