漢方薬の素朴な疑問~西洋の薬より安全?効能の違いは?保険は利く?
「漢方薬」と聞くと、あなたはどんなイメージを思い描きますか?
「中国四千年の歴史」「東洋の神秘」「草花からできたナチュラルな薬」「とにかく苦い」…さまざまなイメージがあると思いますが、漢方薬は「患者さんの体質」に合わせて調剤する点が大きな特徴となっています。
また自然由来の「生薬」を使ってはいますが、薬である以上はもちろん副作用もあるため注意しましょう。
素朴なギモン1:「漢方薬は西洋の薬より安全?」
「ケミカルな薬は体に良くないから、漢方にしたい」…そういう声がよく聞かれますが、これは本当でしょうか?
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たしかに漢方薬には、薬効成分を持つ自然の草花などを用いた「生薬」が使われているため、ナチュラルという点では間違っていません。
西洋薬でも天然由来の成分をもとに作られているものはありますが、人工的に精製したり添加物を加えたりしている点が漢方とは異なります。
ただし漢方も薬である以上、副作用はあります。そもそも薬と毒は紙一重です。
たとえば猛毒で知られるトリカブトは、「附子」という生薬として使われています。
もちろん人の体に危険なく使えるよう、漢方でも成分を変化させるなどの加工をおこなっています。
しかし毒を完全になくすということは、薬効もなくなるということです。
つまり薬にも毒にもなる成分を、なるべく安全に使えるように手を加えたものが薬だといえます。
この点では漢方薬も西洋薬も同じです。
ですから漢方薬にも副作用のリスクはありますので、何らかの症状が出た場合は受診するようにしましょう。
素朴なギモン2:「漢方薬と西洋薬は何がちがう?」
漢方と西洋薬のもっとも大きな違いは、「効能」にあります。
西洋薬に含まれる有効成分は1種類であり、たとえば「熱を下げる」「痰を切れやすくする」「咳をしずめる」といった特定の作用を持ちます。
また特に持病やアレルギーがない限り、誰にでも同じように効かせることができます。
一方、漢方の場合は複数の生薬を組み合わせますので、多くの有効成分が含まれます。
そして重要なのは「体質に合わせて処方する」という点です。中医学では、この体質を「証」と呼びます。
ですから「この症状にはこれ!」という決まった薬があるわけではなく、あくまで患者さん一人ひとりの体質によって使うべき薬は異なります。
まさに「漢方は体質を改善するもの」といわれるゆえんです。
総合的に考えれば、西洋薬と漢方薬はそれぞれ得意分野が異なるといえます。
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たとえば「細菌性の感染症には抗生物質」というように、特定の効能を持つ薬によって効率よく治癒できる病気には、西洋薬のほうが確実です。
しかし検査でもよく原因が分からない慢性的な体調不良や、血のめぐりが悪いことによって起こる全身性の症状など、根本から何かを変える必要のある場合には漢方薬のほうが効き目を表す場合があります。
素朴なギモン3:「保険は適用されるの?」
日本では漢方薬も古くから医薬品として見なされており、保険が適用できる薬もたくさんあります。
しかし実際は、患者さんとの対話を大切にしている漢方薬局や漢方医ほど、保険を使いたがらないことをご存知ですか?
それは、薬の保険適用に「制限」があるからです。
健康保険を使うためには、「症状」と「それに合った薬」という組み合わせが必要です。
つまり特定の症状や病気を良くするための薬しか保険適用とならないため、基本的に西洋薬を基準とした考え方だといえるでしょう。
漢方では、かならずしも「1つの症状だけを良くする」ことを目的としません。
患者さんの体質に合わせて、総合的に体調を改善することが目的ですから、時には病名がつかない症状にも漢方は処方されます。
いわゆる「未病」というものです。
しかし保険を適用させようと思うと、医師は何らかの病名をつけなければいけません。そしてそれに合った薬しか処方できなくなります。
ですから本当に漢方にこだわりを持つ医師であればあるほど、自由診療にしているところが多いはずです。
素朴なギモン4:「なぜお湯で溶いて飲むの?」
漢方の「エキス剤」と呼ばれるものは、よくお湯で溶いて服用するように指示されています。
しかしこれが苦手という人も多いでしょう。
現在では漢方といえば、粉末状になったエキス剤が主流ですが、もともとは生薬を煎じた液状のものを服用していました。
ですからエキス剤もお湯に溶かすことで、本来の漢方薬に近づけることができるのです。
いかにも薬湯のようで嫌だという人も多いのですが、よく味わってみると独特の甘みを感じる薬もあります。
むしろお茶のように、薬の味や香りを五感でフルに味わうことが漢方の醍醐味でもあるようです。
また匂いによって胃酸の分泌が促進され、薬の吸収がおだやかになる効果もあります。
とはいえ苦手な人は、通常の粉薬と同じように飲んでも問題ありません。
ただし「タンニン」は薬の吸収を妨げるため、緑茶やコーヒーとの組み合わせはなるべく避けましょう。
By 叶恵美
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