ロードサイドの居抜き物件で手堅く稼ぐ~外食王・井戸社長の戦略
不動産投資というのは、要するに「不動産を買って利益を出す」ということです。
「利益を出す」の部分が重要で、そのための方法は何でもいいんですね。
たとえば「この物件でレストランをやったら儲かるな」と思って物件を買い、レストランを経営するのも立派な「不動産投資」なのです。
(アパート経営だってこれと同じですよね。土地の上にアパートを建てるか、レストランを建てるかの違いなのです)
外食業界では、「大手ファミレスが撤退した居抜き物件をそのまま活用する」という方法で有名な井戸実社長がいます。
「ロードサイドのハイエナ」として知られる井戸社長ですが、彼の戦略を、特に「物件」の面に注目して分析してみましょう。
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居抜き物件をそのまま使うので、店舗のレイアウトはバラバラ
居抜き物件とは「旧店舗の内装や設備がそのまま残っている物件」です。
飲食業の場合は、厨房や客席、空調などがすべて残っているということです。
(飲食以外でも、美容院・歯医者などすべてのジャンルで居抜き物件があります)
居抜き物件は、売却する側にも買い取る側にもメリットがあります。
売却する側は、厨房などの設備を解体しなくていいので、最後の撤退コストがかかりません。
買い取る側も、本来なら自分で一から揃えなくてはいけないはずのこれらの設備をそのまま引き継げます。
なので、双方にとって利益が大きいのです。
■居抜き物件のデメリット
ただ、もちろんデメリットもあります。
それは「自分の思うようにデザインできない」ということです。
前の設備をそのまま使うのだから当然ですね。
別に自分で解体してもいいですが、本来は売り手が負担するはずの解体費用を自分が負担するというのは、もちろん割が悪いです。
しかし、井戸社長はこのデメリットを平気で受け入れ「とにかく安さ第一」で、居抜き物件を買い取っていきました。
そのため、彼が経営する「ステーキけん」などの店舗は、看板のサイズやインテリアなど、すべてがバラバラです。
その分「1000円以上の注文で、サラダ・カレーが食べ放題」という激安サービスを提供し、人気になりました。
そして、一度人気になってリピーターがつくと「店舗によってインテリアが違う」というのもまた味になるわけですね。
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「A店はこんな感じで、B店はこんな感じ」という違いをネット上で共有するファンも多く、居抜き物件のデメリットが逆にメリットにもなっているわけです。
安い物件に、いかに独自の付加価値をつけるか
ファミレスが撤退したということは、その場所は普通に経営をしていたら「儲からない土地」だったわけです。
つまり「価値のない土地」ですね。
その価値のない土地を買い取って価値を持たせることができたのは、「地価の値上がりを待った」などの「待ちの姿勢」ではありません。
「カレー・サラダ食べ放題」などの独自のサービスを実現した、井戸社長の「攻めの姿勢」にあります。
不動産投資というととかく「安い土地を買って高くなるのを待つ」というイメージがあるかと思います。
これももちろん正しいのですが、経済情勢にまかせて値上げを待っているだけでは、いつ成功するかわからないんですね。
もちろん大失敗する可能性もあります。
しかし、井戸社長のように「自ら付加価値をつけにいく」というスタイルなら成功を自分でコントロールすることができます。
不動産の価値には、こういう高め方もあるんですね。
ロードサイド物件の発展の歴史
ロードサイド物件を日本で最初に開拓したのは「すかいらーく」と言われています。
まだ外食産業自体が市民権を得ていない時代(水商売に近い扱いだった時代)に郊外にどんどん出店して成功したすかいらーくには、井戸社長も「感謝している」と語ります。
また、ロードサイドというほど田舎ではありませんが、モスバーガーも「一等地から外れた場所」にあえて出店してきた会社です。
マクドナルドが一等地で薄利多売のビジネスを展開するのに対し、モスバーガーはやや外れた二等地で、高単価で味重視のビジネスをしてきました。
(最近はモスバーガーにもデフレの波が押し寄せて、客単価はだいぶ安くなっていますが)
他にも郊外中心の出店で売上を伸ばしてきた外食企業はたくさんありますが、「郊外」というだけでなく「居抜き物件」という条件まで加えたのが、井戸社長の成功の理由と言えるでしょう。
個人経営でも使える発想
井戸社長のように、起業して3年で60店舗以上を開くということは、ほとんどの人にはできないでしょう。
(実際、井戸社長も「あと10年、外食産業の同世代ではぼくが独走する」と語っているくらいです)
井戸社長レベルにどんどん店舗を増やすのは無理でも、どこか1つの居抜き物件を買取、それをうまくリノベーションして成功させる、というのは一般の人でもやろうと思えばできそうです。
カフェなどの飲食業を始めてみたいという方は居抜き物件についてもよく調べるといいでしょう。
by ハーランド・坂井
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