13May
広島は地方主要4都市(他は札幌、仙台、福岡)の中で最も不動産市場が低迷していると言われ、マンションの売却においても比較的不利な地域とされています。
どのような根拠から、広島市の不動産市場が低迷していると言われるのか、またその原因は何か。そして、今後明るい展望はあるのか、と言ったマンションを売却するにあたって役にたつような情報をまとめてお伝えします。
リーマン前のミニバブルで、唯一地価が上がらなかった広島
2008年のリーマン・ショックの前には、ミニバブルと呼ばれる地価上昇がありました。この時期、他の地方主要都市はすべて大幅に地価が上昇したのですが、広島だけはほとんど地価に変化はありませんでした。
数字で見ると、ミニバブル突入前の2004年の地価を100とした時、札幌、仙台、福岡は3都市とも120前後まで地価が上昇しました。しかし、広島は上昇するどころかむしろ下がり、95以下で推移しました。
(国土交通省「平成22年地価公示」より)
このデータを見ても、ミニバブルの04年~07年の時点で、マンションを含めた広島の不動産が、当時から下落傾向にあったということがうかがえます。もちろん、売却価格も下落しています。
96年を境に、事業者数・従業者数も減少
広島は1996年を境に、事業者数も従業者数も減少しています。つまり産業が縮小しているということですが、このことで影響を受けるのは当然事業用物件だけではありません。
従業者数が減っているということは、そのまま人口減少を意味します。
そうなると、当然その人たちの居住用マンションなどの物件も需要が減るわけです。その結果、手持ちのマンションを高値で売却することが難しくなり、さらに投資用に物件を買う投資家もおらず、売却価格が下がりやすくなる…という負の連鎖におちいるわけです。
すべてのマンションなどの物件がこの連鎖にあったわけではありませんが、こうした流れを考えると、プチバブルの時期に広島の地価が上がらなかったのも、うなずける話でしょう。
ここのところは、広島でマンションの売却を考えている人にとっては、重要なポイントとなるでしょう。
企業の本拠地が、福岡・大阪へ移転
マツダ自動車を始めとし、かつてはこの地域を発祥とする企業や本拠地をかまえる企業がたくさんありました。しかし、近年は本拠地を福岡や大阪へ移転する企業が増えています。
このような流れの中で、広島でのオフィスビルの需要は年々低下し、ストック状況を表す数字にもそれが顕著に現れています。オフィスビルのストック状況は、近場の福岡市で347万平方メートル(床面積)ありますが、広島はその半分にも満たない166万平方メートルです。
「それは広島市の方が面積が狭いのでは?」と思う方もいるかも知れませんが、実は広島市の面積は、福岡市の約2.5倍なのです。(広島市…905平方km、福岡市…340平方km)
2.5倍の面積がありながら、半分しかストックがないということは、実に「5倍の差」ということになります。つまり、両者ではオフィス物件の需要に5倍の差がある、ということです。
当然、こういった状況は個人用のマンションの売却価格にも大きな影響を及ぼします。
これがマンションの売却にもたらす影響
こういった広島市の現状は、マンションを売却する方にとっても当然不利な状況となります。基本的に、その地域の事業用物件のニーズと、居住用物件のニーズは一致します。
たとえばマンションの場合「事務所利用可」として賃貸に使ったり売却したりすることもできますが、そのニーズすら発生しないということです。
また、「事業者が少ない=人口も減る」ということなので、間接的に居住用マンションなどの売却価格にも、大きな影響がでるのです。
広島ではマンションを売却しない方がいいのか?
このように書くと「広島ではマンションを売却しない方がいい」と言っているように思われるかも知れませんが、もちろん違います。
もし今後この地域の不動産市場が活気づくという予測があるのなら、値上がりを待って高値で売却する、という手もありでしょう。
しかし、今後もこの低迷が続くと予想されるなら、今売却するのが一番損失が少ないくて得をする方法となります。
それでは、広島地域の不動産市場は今後どうなるのか、その参考となるデータや事例をさらに紹介してみたいと思います。
駅の南北をつなぐ再開発
長年遅々として進まなかった広島駅の再開発ですが、ここ数年大きな動きを見せています。具体的には、下のような再開発が行われています。
駅の南北をつなぐ、ペデストリアンデッキ
「駅の南北をつなぐ」というとごく当たり前のようですが、広島駅ではこれが今日までできていないのです。駅の南北は薄暗い細い通路でつながっているだけで、両エリア間の人の行き来はほとんどありません。
もちろん、必要にせまられて反対側に移動することはありますが、双方のエリアを移動しながらショッピングを楽しむというような、他の主要都市で見られる人の動きは皆無です。
街のにぎやかさは、「人の行き来の活発さ」とイコールです。「駅が壁になって、南北を分断している」という状態で、駅前がにぎやかになることはありえません。そうした「駅前の地味さの原因」が、この再開発によっていよいよ解消されるわけです。
マツダスタジアムを核とした「ボールパークタウン構想」
そもそも、近年駅周辺の再開発が勢いづいたのは、2009年にマツダスタジアムが完成したのがきっかけです。そして、このマツダスタジアムを核としてこのエリアを再開発する「ボールパークタウン構想」も盛り上がっています。
これはスタジアム周辺に大型ディスカウントストア、フィットネスクラブ、分譲マンションなどを建設する計画で、ゲストハウス型婚礼施設など、ユニークな施設も登場する予定です。
この再開発が完成すれば、野球観戦の前後にショッピングやフィットネスを楽しむ人々が増え、この地域の商業活動がさらに活発になります。スタジアムということで交通の便がもともといいため、分譲マンションに入居を希望する人数は多いでしょう。
古い分譲マンションの価値が下がる
再開発による分譲マンションの入居者が増えるということは、このエリアで古い分譲マンションの価値は、これから下がる可能性が高いということです。
もともとマンションは時間が経てば経つほど売却価格が下がるものですが、このボールパークタウン構想のような計画が持ち上がっている地域では、さらに古い物件は不利になるのです。
そのため、この地域でマンションを持っている方は、計画が進む前に早めに物件を売却した方が得策だと言えるでしょう。計画の完成が近づけば近づくほど売却価格が落ちていくことは明白です。
仮に途中でバブルのようなことが起きたとしても、例のミニバブルでも広島の地価は上がらなかったという過去の教訓があります。ミニバブルの時でも上がらなかったということは、今後も上がることを期待するのは無理があるといえるでしょう。
広島市の人口推移の動向
広島市の人口は1998年から減少に転じており、現在は約117万人です。これが2020年には113万人、2035年には104万人と、今後20年で約13万人減少すると見られています。
(国立社会保障・人口問題研究所資料/2008年より)
13万人といえば、北海道の小樽市(札幌の隣の市)の人口とほぼ同じであり、今後20年で、地方都市1つ分の人口が、広島から消える可能性があるということです。
このような人口推移の動向を見ても、広島でマンションなどの物件を持っている方は、早めの売却を視野に入れるべきだと思います。
一部地域では今後値上がりする可能性もありますが、自分の物件がそれに当てはまらない可能性の方が高い、という意識を持った方がいいでしょう。
ありとあらゆるデータから見て、この地域の不動産市場に今後の明るい見通しを持つのは難しい状況です。広島でマンションを売却する予定のある方は、早めに決断した方がよさそうです。