22Jul
京都には「景観法」など独自の条例も絡んでおり、不動産売却の事情もなかなか複雑です。
また、ここ数年の景気が上向くなかで、中心部の不動産が富裕層によって買い占められており、中心部に住むことのできない人々の間で、郊外の不動産の需要が高まっています。
もしあなたが、そうした地域に不動産を持っていたら、今はまさに売却のチャンスといえます。ここではそんな京都における不動産売却に関する近年の動向や、景観法などの独自の法律について紹介します。
「景観法」による不動産の開発規制が緩和へ
京都で2007年に制定された「景観法」。この地域の街並みを保つために、建物の高さや色などに多くの制限を加えたものです。
これによって京都市内で建てられる住宅、特に高層マンションやオフィスビルに大きな影響が生じ、「景観法ショック」とも呼ばれました。
もちろん、これによって京都の街並みがさらに綺麗になり、観光客の満足度が上がったことで、観光関連の物件を持っている方にとっては、プラスとなることもありました。
しかし「自由な開発ができない」ということで、手持ちの不動産を自由に売却できなくなってしまった方もいました。
このように、不動産の視点で見ると一長一短があった景観法ですが、2013年11月、これを緩和する動きが見られました。「国家戦略特区法案」の制定です。
国家戦略特区法案とは?
簡単に言うと「指定したエリアの開発を促進し、外資や不動産会社のマネーを呼び込もう」というものです。要するに「開発重視」ということになります。
これが適用されるのは「特区」に指定されたエリアだけですが、京都府もしっかりと指定されています。
景観法は京都独自の条例、特区法案は国の法案ということで、どちらが優先されるかはケース・バイ・ケースですが、ひとまず、景観法が緩和される可能性はある、と見ていいでしょう。
観光関連の物件を持っている方にとってはマイナス要因となる可能性もありますが、多くの不動産オーナーの方々にとっては、「自由に開発できる」ということで、不動産の売却においてはプラスとなるはずです。
そのため、京都の不動産市場にとっては、とりあえずこの法案は「朗報」と言っていいでしょう。もちろん、この地域の歴史ある街並みを、しっかり保つことは最優先されるべきことだと思います。
外部の富裕層が欲しがる関西の物件は、すべて京都
アベノミクスによる景気の上向きとともに、関西以外の地域の富裕層の方々が、セカンドハウスや別荘の確保、あるいは投資のために、関西地域のマンションを買う、ということも多くなりました。
そんな彼らが求める物件は、例外なく京都のものです。外部の方にとって、関西の物件は「京都以外ノーブランド」ということのようです。(2014年1月27日、ビジネスジャーナルより)
一般の感覚からすると、大阪や神戸、特に神戸であれば十分なブランド価値があると感じますが、富裕層の方にとっては、やはり昔ながら「都」でなければ本当の価値は感じないようです。
こうした傾向は、京都で高級マンションなどの不動産を売却する方にとっては有利な流れだと言えます。どんな商品でも高値で売却するためには「富裕層に買ってもらう」というのが一番です。
歴史の重みによってブランドが形成され、富裕層からもひいきにしてもらえる京都の不動産市場は、非常に恵まれていると言えるでしょう。
京都の新築マンションの販売状況
京都はは日本の主要都市の中でも特にマンションの供給が少ない都市です。日本史の中でも最も古くから開発されてきた都市ですから、それも当然でしょう。大型のマンションを建てようにも、あいている土地がないわけです。
そのため、新築マンションそのものがどうしても少なくなるのですが、近年は中心から外れた地域で、大規模な開発が相次いでいます。たとえば南区や伏見区では2014年5月現在、新しい物件を建設中です。
南区の物件の場合は総戸数431戸で、伏見区の物件の総戸数は271戸となっています。価格は2000万円~6000万円と、一般のサラリーマンの方でも手が届く価格であり、注目を集めています。
特に伏見区では2014年3月に付近のマンションが販売を開始し、即日完売しているため、今回もすぐに完売となる可能性が高い、と見られています。
このように周辺部のマンションが高い人気を得ているのは、「京都市の中心部のマンションが高騰している」ことが理由といえます。
富裕層しか買えない、京都中心部のマンション
京都市の中心部のマンションは、上にも書いた通り最近は富裕層がどんどん手を伸ばしてきています。その結果2012年頃から価格がどんどん高騰していき、1億を超える物件が続出するなど、一般の方々には手の届かないレベルになってしまいました。
しかし、京都市内で働き、生活している人々は多く、市内にマンションを持ちたいという需要は根強くあります。そのため、不動産会社の開発が周辺部に伸びていき、それらの物件が人気となっているというわけです。
この影響は市の周辺部だけではありません。滋賀県の大津市など他の都道府県にも広がっており、2014年に入ってから、大津市のマンションは即日完売が相次いでいます。
大津市は滋賀県の県庁所在地なので、京都から遠いイメージがあるかも知れません。しかし、実は京都駅―大津駅は電車でわずか9分(200円)の距離であり、京都市内の遠い場所よりも、実はずっと近いのです。
しかも県庁所在地ということで買い物や生活にも一切不便しませんし、琵琶湖の近くということで自然環境も豊かです。京都市中心部のマンションが買えない以上、大津市に人々が不動産を求めるというのは、ごくごく自然の流れと言えるでしょう。
京都で不動産を高く売却するためのポイント
上に書いたように、京都市内で一般の方々の手が届く価格のマンションは、明らかに不足しています。ということは、そうした不動産を持っている方は、いま売却すれば、かなりの高値で売却できる可能性が高いということになります。
この現象がいつまでも続くかはわかりません。今この地域がこういう状況になっているのは、「中心部の物件価格が高騰した」からです。高騰した理由は「富裕層のお金が流れ込んだ」からです。
ということは、アベノミクスによる好況感が終わって、富裕層がセカンドハウスなどの手放し(売却)を始めたら、この状況は崩れてしまうということです。
今のところ成功と言われることが多いアベノミクスですが、この効果がいつまでも続くかはわかりません。もし、好景気が終わったら、せっかくの不動産を高く売却する千載一遇のチャンスを逃す恐れもあります。
もちろん、不動産を売却するしないはオーナーの判断になりますが、もし近い将来に売却する予定があるならば、不動産の現在の価値を把握するために査定だけでも受けてみるといいでしょう。
特に不動産が高く売却されているエリア
現在、京都市内で特に高値で不動産が売却されているエリアは、四条・烏丸・山科などです。
「三大エリア」と呼ばれることも多いこれらのエリアは、長年の歴史の中で確立された確かなブランド価値がありますから、値崩れすることもほとんどありません。
そのため「失敗のない買い物」として、富裕層の間でも興味を持たれているわけです。
こうした土地の不動産なら、持っているだけで富裕層同士の付き合いでもステータスになりますし、もっと値上がりした時にはその不動産を売却して利益を手にすることもできます。
もちろん、下落したら損失を出してしまうわけですが、最初から投資でなく趣味でセカンドハウスを買うのだと思えば、「値上がりしたら儲けもの」程度のスタンスで十分なのでしょう。
一般の人の感覚からはピンと来ない部分もあると思いますが、不動産市場の動向を占う上では、こうした富裕層の心理的な面も理解しておきたいところです。