1Aug
震災の影響でスズキが移転するなど、沿岸部を中心に防災面で不安視された浜松市は、一時期不動産の査定も冷え込みました。しかし現在では浜松駅前の再開発などによって徐々に持ち直しつつあります。
そのほか、浜北区の「きらりタウン」など人気の高まっているエリアもあります。ここではそれらの事例も紹介しつつ、浜松市で不動産の査定を受ける際のヒントを探していきます。
震災による不動産価格の下落
浜松市の不動産価格は、震災後大きく下落しました。言うまでもなく津波に対する不安からです。たとえば南区遠州浜の地価は震災の前後で約22%の下落、沿岸部の工業地域は約32%の下落と、大幅に落ち込んでいます。
スズキの移転は沿岸から浜北区に移るという、浜松市内での移転でしたが、市外に移転してしまった企業も何社かあり、これらも地価下落の原因となりました。
しかし、この地価下落に歯止めをかけると期待されている施策があります。それが、全国でも初となる「レベル1対応の防潮堤」です。
100年~150年に一度の震災を想定
「レベル1」というのは「100年~150年に一度の震災を想定」というレベルです。これだけでも相当なレベルの震災まで耐えられるのですが、さらに部分的には「レベル2」を満たす防潮堤となります。
「レベル2」は「1000年~2000年に一度の大震災に耐えられるレベル」ということになります。具体的には、南海トラフ巨大地震と呼ばれる、この地域に来る可能性があると推定されている大地震を意識しています。
もちろん、防災に絶対はないので、レベル2の防潮堤でもすべての震災の被害を抑えられるとは限りません。
しかし、日本の防災史上最高レベルの備えというのは事実であり、これが完成したら、精神的にも浜松市の不動産市場によい影響を与えると見られています。
防潮堤の完成は2019年頃
浜松市は、防潮堤の完成時期について明言はしていません。ただ、普通なら10年かかる作業を「半分以下の期間で完成させたい」と語っています。
単純に計算して2018年~2019年には完成する、ということになります。(2013年にすでにスタートしているため)
現時点では防潮堤が浜松市の不動産査定の評価を回復させる、というレベルには至っていません。しかし、完成が近づくにつれて徐々に回復していく可能性も強いでしょう。
地元不動産業者では悲観的な声も
日本不動産研究所が行ったヒアリングによれば、地元不動産業者の間では、悲観的な声も聞かれているそうです。
「防潮堤が完成しても、消費者の意識が変わるかわからない=地価が回復するかわからない」という声ですが、業者の方々がこう語る以上、防潮堤による不動産査定への影響も、過度な期待は禁物かも知れません。
しかし「実際に完成したものを見ると市民の意識が変わる」ということは、ほかの地域のこれまでの開発でも見られたことなので、防潮堤が浜松市の不動産査定の評価を回復させる可能性も、十分あると言えるでしょう。
好調な浜松駅前再開発、二大にぎわいスポットの開業
先行き不透明な沿岸部に対して、浜松駅前の不動産の査定額は比較的好調です。再開発によって2011年に「ソラモ」「遠鉄百貨店新館」の二大にぎわいスポットが開業したからです。
遠鉄百貨店はその名前の通りです。これまでも本館があったのですが、これに匹敵する規模の新館が新たにツインタワーのように並び建ったことで、浜松駅前の風景はより近代的になりました。
ソラモはこの本館と新館の間の空間をイベントスペースとするもので、オープン以来多数のイベントが開催されて賑わっています。
この2つのにぎわいスポットの登場によって、近年客足が減っていた浜松駅前が再び活性化することが期待されています。
10年で半分になった、駅前の歩行量
浜松市の調査によれば、過去に松菱百貨店が破綻してから2011年までの10年間、中心市街地の歩行量は約半分に減っているそうです。
ということは単純計算で消費量も半分に減っているわけで、事実、駅前のサザンクロス商店街では廃業した商店も多くあります。
ソラモと遠鉄百貨店の登場は、駅前に人を呼び戻すことはできるかも知れませんが、商店街にとっては追い打ちになった、という見方もあります。
浜松駅周辺の店舗物件やオフィス物件は、今後商店街と浜松市が一体となった改革がなされない限り、価値を上げるのは難しいかもしれません。そう考えると、売却に向けて早めに不動産査定を受けるのも重要かと思います。
中心市街地が落ち込んだ理由
浜松市の中心市街地が落ち込んだ理由は、平成に入ってから百貨店の撤退が相次いだことにあります。
駅前は約75年前に棒屋百貨店が誕生して以来、松菱百貨店、遠鉄ビル、ニチイ、マルイ、西武、長崎屋…と次々に百貨店がオープンされてきましたが、松菱百貨店をはじめとして、いくつかの百貨店は撤退してしまいました。
郊外にロードサイド型の店舗が多数建設されたというのもその理由ですが、こうした流れの中で、駅前にどれだけ人を呼び戻すことができるか、ソラモと遠鉄百貨店新館に注目が集まっています。
浜松市で不動産の査定額が上がっている地域
不動産の査定額がやや冷え込み気味な浜松市で、割と高めの査定額が維持されているのは、浜北区の「きらりタウン浜北」です。
きらりタウンは2004年から住宅の販売が開始された住宅街と、工業エリアが複合した地域です。当初5000人だった人口は現在7000人を超えており、オープン当初の人気が今も続いています。
浜松市全体の不動産査定がリーマン・ショックや震災で冷え込んだ時も、このきらりタウンの人気だけは変わらず安定していました。
リーマン・ショック直前のミニバブルの時期、市内の他の場所に不動産を買っていた人はそれで損失を出してしまったかも知れませんが、きらりタウンに持っていた方はほぼ損失を出さずに済んだということです。
大きなトラブルが起きても不動産の査定額が常に安定している土地というのは、どの都道府県でも一定数存在するものであり、それぞれの地域の不動産事情をよく研究することで、そうした土地も見つけやすくなることでしょう。
浜北区の工業用地の不動産査定について
浜北区は沿岸から離れていて津波の心配がないということで、工業用地の価格は震災以後もほぼ安定しています。
工業用地の不動産査定額の動向は、マンションなどの売却を考える一般の方にはあまり関係がないと思うかも知れません。
しかし、この地域に工場を持つ企業などが今後も変わらずに残る、ということは住宅の需要が維持されるということです。
これは当然居住用の不動産の査定にも影響することなので、こうした工業用地の不動産査定の動向にもアンテナを張り巡らしておくといいでしょう。
浜松市には輸出で利益を得る製造業の企業が多くありますが、2013年から続いている円安はこの地域の企業にとってプラスとなっています。
彼らの設備投資や工場用地拡大などが始まれば、周辺の不動産の査定額も上向くため、これも明るい材料ととらえていいでしょう。(もちろん、円安がいつまで続くかはわかりませんが)
以上、浜松市で不動産の査定の参考となるような情報をいくつか紹介しました。これらを見てもわかるように、浜松市も場所によって市場の動向が大きく異なります。
浜松市の大部分の地価を下げた震災でも、地価が下がらなかった浜北区などもあるわけです。
このように「場所によって違う」というのはどの都道府県や市町村でも同じことなのですが、その中でも「浜松ならではの傾向」をつかむことで、より確実に市場の動向をうらなうことが出来るようになるでしょう。