6Aug
かつて福岡市を超える人口を誇っていた北九州市は、いまでは人口の減少が激しく、不動産査定の評価も下落傾向にあります。
しかし、府県庁所在地を除けば西日本でも最大の都市であり、3大都市圏以外で初めて政令指定都市となったという歴史もあります。
歴史上早くから発展していた地域というのは、地理的なポテンシャルがあるものであり、再開発などに失敗しなければ、再度不動産市場が活性化する可能性もあります。
ここでは、そんな復活が期待される北九州市における不動産査定の参考となる情報を提供してみたいと思います。
地価の下落が続く、北九州市の不動産市場
北九州市中心部の地価は、2000年から2010年の10年間、一貫して下落しています。しかも10年間で約60%という大幅な下落で、この時期に土地などの不動産を持っていた方は、かなりの打撃を受けたことでしょう。
いまでは以前ほど激しい下落はしていませんが、特にオフィス物件の場合は賃料水準が低く、九州の主要エリアとしては最も安い部類となっています。
そのため、この地区でオフィス物件の不動産査定を受ける場合も、ある程度高い家賃を取れるエリアでなければ、高い査定額を期待するのは難しいかも知れません。
かといって、それを理由にあえて不動産査定を受けずに放置していると、その間に物件が古くなり、さらに査定額が下がる可能性もあり、判断が難しところです。
北九州ではオフィス利用のみで勝負する物件が少ない
上のように北九州ではオフィス物件のニーズが下がっているため、オフィス物件をリノベーションする場合も、建物のすべてをオフィスとすることは少なくなっています。
一般的になっているのは、オフィスや店舗用のスペースは低層階のみとし、高層階はマンションなどの住宅とする、というやり方です。
このため北九州ではマンションなどの住宅の供給がますます増え、オフィスだけではなく居住用物件でも供給過多になりつつあります。
つまり、北九州市のオフィス物件の査定額の低下は、そのまま居住用物件においても不動産査定額の低下にもつながっていると言えるでしょう。
その地域の不動産査定の評価というのは、ジャンルを問わずにある程度は連動するものであり、北九州市の不動産の査定においても、それが顕著にあらわれていると言えます。
北九州市の人口推移と不動産市場の動向
北九州市の人口はかつては100万人を超えており「100万都市」というフレーズでも知られていましたが、いまでは人口減少が続き、2014年4月時点で約96万人となっています。
将来の人口予測についても、いまのペースで減少が進むと、2030年には84万人になるとされています。(2008年の日本政策投資銀行のレポートより)
その際の高齢化比率は32.2%と、これも全国平均を上回る比率であり、人口減少・高齢化の2つの問題を今後北九州市は抱えていくことになるでしょう。
しかし、一部で明るい材料もあります。小倉駅前の商業ビル「あるあるCity」のユニークな試みの成功など、全国の駅前再開発のモデルとなる事例もあり、こうした一部の地域では、不動産査定の評価も今後しばらく安定する可能性があります。
北九州市全体では衰退の傾向が強かったとしても、再開発が成功した、あるいはこれから成功する地域は今後も不動産市場が活気づくと言えます。
不動産を投資目的で考えるならば、そうした地域でのみ物件を持ち、将来性のない地域については早めの売却を行う、という区別をはっきりつけることが大切でしょう。
ここでは、そのような土地の将来性を見極める上で参考となる、小倉駅前と黒崎地区の、2つのエリアの再開発事例を紹介します。
「あるあるCity」の成功 ~サブカルを取り込んで小倉駅前を再生
北九州市の中心はJR小倉駅ですが、そこの人気スポットとなっているのが「あるあるCity」です。2012年にオープンしたばかりの駅ビルですが、もともとは過去に入っていたテナントがすべて撤去し、約5年間、ほとんど空き状態で放置されていた建物です。
それがいま「サブカル路線」という大型の駅ビルでは全国でも初の独自路線で話題を集めています。マンガ・アニメの関連グッズはもちろん、フィギュア、ラジコン、コスプレなど、秋葉原さながらの品揃えで、駅ビルを丸々1棟運営しているのです。
JR駅前のビル、それも新幹線が停車するレベルの駅としては当然ながら異例の試みで、不動産関係者や街づくりに関わる人々の間で、大きな話題を呼びました。
付加価値をつけて不動産査定の評価をアップ
ビルなどの不動産を持っている方は少ないかも知れませんが、物件に高い付加価値を付けて高額で売却するためには、このような手法もある、といういい事例が北九州の「あるあるCity」でした。
地理的条件は自分ではどうにもできない以上、不動産の価値を劇的に高めようと思ったら「どう使うか」が大事になるわけです。
それは一見ビジネスの領域であり、不動産の査定とはあまり関係ないように見えますが、最終的には同じことです。
むしろこれによって、安く買い取った物件を付加価値を付けたことにより高い値段で不動産査定してもらうことができたら、不動産の売却としては理想的な展開と言えるでしょう。「あるあるCity」の成功はそうした意味で、多くの不動産オーナーさんの参考になると言えます。
福岡にないものかどうかが成功のカギ
「あるあるCity」の成功でも言えることですが、福岡にないもの生み出すというのは、北九州市で何かを成功させるために、欠かせない要素です。
福岡市にすぐにアクセスできるこのエリアでは、同じ内容のサービスやスポットであれば、よりレベルが高く賑やかな福岡に、利用者も集まるからです。
再開発の試みが成功するかどうかを占う時にも、福岡にないものかどうかの判断基準は、は大きな着眼点となるでしょう。
2.副都心・黒崎地区 ~コムシティの再開業~
北九州市の不動産の査定を語る上で、副都心である黒崎地区の動向は欠かせません。副都心とは言いながらも、2000年代初頭の再開発に失敗したこのエリアは、一時期不動産の査定額も相当低迷していました。
特にランドマークの一つとして建てられた商業施設「コムシティ」は開業からわずか2年で閉鎖され、その後10年間放置されていました。
黒崎の再開発失敗の象徴のようになっていたコムシティですが、これが2013年に再開業したことで、周辺の不動産市場に刺激を与えています。
もともと立地条件のいい黒崎地区
そもそも黒崎地区は北九州市の副都心の一つなのですから、立地条件は非常にいいのです。事実、安川電機、三菱化学などの大企業が北九州エリアの拠点として黒崎を選び、長年企業城下町として繁栄してきました。
2000年代初頭の再開発の失敗も、やり方さえよければそのまま発展していた可能性があると指摘する専門家も多くいます。
そうした反省や過去の研究材料も加味しての今回の再稼働なので、これで成功して黒崎地区の市場が活気づく可能性も高い、という見方が強くなっています。
黒崎地区の復活は、不動産の査定にどう影響するか?
この地区が復活すると不動産の査定額にも当然大きな影響が出ます。黒崎の特徴は「ベッドタウンでもあり、企業城下町でもある」ということです。つまり「北九州市にも通勤できるし、この黒崎の中にも仕事がある」ということです。
北九州市に通勤するためのベッドタウンとして物件を求める人と、よそに通うのではなく黒崎で勤務し、生活するために物件を求める人の、この両方をターゲットにできるということです。
これはもちろん有利な条件なのですが、これまで黒崎の不動産市場がいまいち振るわなかったのは、ショッピングなどの生活面でのポイントが低かったからです。
駅前のランドマークが10年間も閉鎖したままでは、誰も住みたがらないのは当然です。
そんな「大きなの欠点」の一つが今回の再開業で解消されたら、黒崎地区は一気に住みよい街となることでしょう。そうなれば、必然的にこの地区での不動産査定の評価も大幅に上がることでしょう。
特に、この地区の市場が低迷していた頃に安価で物件を取得した方は、その査定価格の上昇によって、大きな利益を手にできる可能性があります。
以上、小倉駅前と黒崎地区の再開発の事例を紹介しました。こうした再開発の事例も参考にして、北九州市の市場の動向をうらなうことで、より有利に不動産査定を進めていただけたらと思います。