2Aug
東京のベッドタウンの代表ともいえる埼玉県・川口市は土地柄的ににユニークな点が多々あり、マンションの売却においても独自の傾向を見せています。
ここでは、川口市のユニークな土地柄と、この地域の人口推移・高齢化の進行などをもとに、マンション売却の参考となるような情報を紹介します。
川口市は人口50万人以上で、特急が停まらない唯一の街
川口市は特急が停まらない市という不名誉な特徴を持つ市として知られています。この地域は交通の便がよく、JR武蔵野線&京浜東北線、埼玉高速鉄道線と3本の路線が走っています。
しかし、いずれも特急電車はありません。人口50万人を超える規模の都市で、特急電車が停まらないのは、全国でも川口市だけです。
それでも住民からは何の不満もなくベッドタウンとして機能しているのは、特急がなくても十分便利だからです。たとえば京浜東北線なら、片道約20分で上野に着きます。
料金も片道210円程度と非常に安いですし、上野に行ければ後はそこからどこにでもアクセスできます。
そもそも、京浜東北線で川口の隣の駅は赤羽で、赤羽はすでに23区内です。
川口市でも荒川沿いに住んでいる方の場合は、むしろ川口駅より赤羽駅が近いくらいで、この地域はほとんど東京といってもいいくらいなのです。
そのため、特急が停まらなくても何も不便はないわけですね。
山手線に特急がない(*)、というのと同じ理由です。
(*一部の特別車両は除きます)
2004年まで「日本一の高層マンション」があった街
これも意外に思われるかも知れませんが、2004年まで日本一の高層マンションは川口市にあったのです。「エルザタワー55」という55階建てのマンションで、1998年から2004年までの6年間は、日本一高いマンションとして知られていました。
この「高い」という表現が賃料のことと勘違いされ、エルザタワーは日本一の億ションというイメージを持つ方も一部でいたようです。
・川口市は日本有数の高層マンション街
川口市の高層マンションはエルザタワー55だけではありません。
この地域には30階~50階建てレベルの高層マンションがごろごろあります。
理由は、高度成長期からバブル期にかけて、すでに東京のベッドタウン化していたからです。そして、当時マンションの高さに制限がなかったため「できるだけ総戸数を増やしたい」という建設業者&不動産会社の意向によって、次々に高層マンションが建てられたわけです。
その後高さが規制され、100mを超える建物は建てられなくなりましたが、それ以降も99.9mの物件が次々と建ちました。このような土地柄なので、この地域で背の低いマンションというと、30階建のマンションのことを指すくらい、今も高層マンションが建ち並ぶ街となっています。
川口市で売却に出されているマンションを見ると、何でこんな高層マンションが多いんだろうと不思議に思うかもしれませんが、それにはこういう事情があったんですね。こうしたことを知っていると、不動産業者の方とマンション売却に関する話をする時も、スムーズに話をすすめられるかも知れません。
ベッドタウンの中でも特に家賃が安い
いくつかある東京のベッドタウンの中で、川口市が特に抜きん出ている特徴の一つとして、家賃の安さがあります。
川口駅の周辺では、1kで2万円~3万円台という物件は数多くあります。少しおしゃれな物件でも5万円以下のものが多くあり、学生や単身のサラリーマンにとっては非常に魅力的だと言えます。
このように格安の物件は駅から遠く不便ということが多いですが、川口市の場合はしっかり駅前で、しかも都内に簡単にアクセスできるわけですから、初めて知った方にとってはまさに「穴場」とも感じられる場所でしょう。
川口市は車を使った生活にも便利な街
川口市は上に書いたように電車での移動に便利な街ですが、それと同時に、カーライフに便利な街でもあります。このように電車と車の両方の交通手段がどちらも便利である地域は、全国的に見ても稀だと言えるでしょう。
たとえば首都高速道路では、新井宿、安行、新郷などの出入口があり、東京都外環状自動車道では、川口西IC、川口中央ICなどがあります。このようにすぐに高速道路や環状道路の入り口にアクセスできるため、県外にドライブするのも容易です。
平日は京浜東北線を使って東京に通勤し、休日は県外へ家族とドライブに出かける、そんなサラリーマン世帯の理想を絵に描いたような生活が、川口市なら送ることができるわけです。
川口市でマンションを売却するために知っておくべきこと
川口市でマンションの売却を考えている方は、以下の点を頭において交渉をすすめるといいでしょう。
・人口推移
この地域の人口は戦後ずっと増加しており、2014年現在では56.7万人に達しています。
埼玉県が2011年にまとめたデータでは、2020年に55.3万人、2025年に54.7万人と予測されていましたが、すでに2025年の予測値を抜いてしまっています。
ただ、これは途中で合併があったためで、今後の傾向の予測としては間違っていないでしょう。「傾向」の部分だけに注目すると、減少に転じるのは2025年からで、そこから2035年までに2万人ほど減る見込みです。
あくまで予測なので確実にそうなるかどうかわわかりませんが、川口市でマンションを売却をする上では、抑えておくべきデータではあるでしょう。
人口が増え続けるのはあと10年ということになると、それより前に地価も下がり始めるでしょうから、早めのマンション売却が吉と出る可能性が高いです。
・急速に進む高齢化
埼玉県の2011年の資料では、「川口市では、今後も急速に高齢化が進展すると予測される」と明記されています。数字で見ると、2015年の高齢化率が23.3%(予測)、2025年が25.7%、2030年は30.0%という高い率になっています。
現在、過疎地も含めた日本全体の高齢化率は「約25%」です。川口市は来年それに追いつこうとしているわけですが、この地域のように人口50万の都市で、過疎地も含めた日本の平均と一致するというのは、相当な高齢化だといえます。
埼玉県の資料で「今後急速に」と書かれた理由も納得が行くでしょう。
川口市でマンションを売却する方は、今後のこうした急速な高齢化も計算して、市場の動向を見極める必要があります。
そうすることで、より適正なマンションの売却価格を把握することができるでしょう。
高齢化する地域でなるべく高くマンションを売却するために
地域全体が高齢化しているということは、若年単身者向けのマンションは、今後なかなか売却できないということです。そのため、そうしたマンションを持っている方は、早めの売却を検討した方がよいでしょう。
逆に高齢化をチャンスととらえ、その時代にマッチした物件にリノベーションしてから高値で売却するという方法もあります。たとえば、最近人気が出ている「後期高齢者マンション」のようなマンションと有料老人ホームが一体化した物件がその好例です。
もちろん、そのようなリノベーションをして売却できるというのは、マンションを分譲でなく丸々1棟持っている方に限られるので、一部の方しかできない選択かも知れません。
しかし、必ず訪れる高齢化を不利ととらえず、むしろチャンスとしてとらえることは、高値でマンションを売却するために欠かせないことだと言えるでしょう。
ここまで紹介したように、川口市には不動産の世界のトリビアとも言えるようなユニークな特徴がいくつもある反面、高齢化などの深刻な問題も存在しています。
このユニークな土地柄を知りつつ、問題点も把握して対策と計画を練ることで、より適正な価格で手持ちのマンションを売却することができるようになるでしょう。
もちろん、それは川口市に限らずどこでマンションを売る場合でも同じことなので、不動産に関わるすべての方は、そうした意識をつねに持っていただけたらと思います。