18Apr
神奈川県は、川崎市を中心にマンションの供給過剰に陥っており、売却でも今後不利になる可能性があります。
その他、オリンピック・リニア開業・米軍基地など、この地域の不動産・マンションの市場に影響を与えるものは多くありますが、ここではそれらの要素をまとめて紹介・分析します。
過去10年間、日本の新築マンション供給の上位を独占
駅別で見た時、2002年~2012年の10年間、日本でもっとも新築マンションが供給されたのは川崎駅です。
2位が東京の湾岸地区・豊洲駅で、3位がこれも川崎市内の武蔵小杉駅です。(東京カンテイによる2012年のデータより)
つまり、過去10年の日本の新築マンション供給数の、1位と3位を神奈川県・川崎市が占めているということです。こう書くと「川崎は活気づいているんだな」と思われるかも知れませんが、現実は違います。
「必ず売れる」と言われた川崎駅前に、業者が殺到した結果…
そもそも川崎にこれだけのマンションが建ったのは、「川崎駅前は必ず売れる」という時代が長く続いていたからです。
実際、駅前でさえあれば、中古物件でも高値で売却できることが多かったので、業者はこぞってこの地域にマンションを建てたわけです。
この結果「市場を顧みない無謀な供給」(住宅ジャーナリスト・榊淳司氏)が続き、いま川崎のマンションは完全に供給過剰になってしまっているのです。
売却に苦戦する、川崎の新築マンションの状況
川崎のマンションの苦戦の様子は、はっきりと名指しで業界に知れ渡っています。
たとえば2011年に完成した高級タワーマンションの「リヴァリエ」は、駅から徒歩1分という好条件の物件でありながら、販売開始後1年経っても完売できず、2014年現在もまだ販売が続いています。
前述の榊淳司氏によれば「二子玉川・ライズと同レベルの値下げをしなければ完売できないだろう」ということです。
*二子玉川の「ライズ」は、東急不動産が開発した高級タワーマンションで、完成後に大幅な値引きをしてやっと完売に至ったという物件です。
不動産デベロッパーの動きを当てにしてはいけない
このように供給過剰に苦しんでいるのは神奈川県だけではなく、千葉県なども同じです。
千葉に比べれば神奈川はまだいい方で、千葉では「第2のミニバブル崩壊」さえ危惧されているくらいです。(千葉の記事へのリンク→「千葉県のマンションの供給過剰について」)
これらの現象を見ていて言えることは「不動産デベロッパーの動きは当てにならない」ということです。もちろん、彼らはプロなので、私たちよりは断然この道に詳しいはずです。
特に地盤の話など建築分野の話になったら、どんなに不動産に詳しい人でも、彼らには太刀打ちできないでしょう。
しかし、市場の動きを読むことに関しては、彼らですら「かなり外している」のです。現実にこうしてあちこちで供給過剰が起きているわけですから、これは「外れ」以外の何物でもないでしょう。
つまり、その地域でマンションの売却のタイミングを探る時、彼らの動きを参考にしすぎてはいけないのです。
あくまで「一つの参考情報」とするだけで、彼らの判断が歴史的な大間違いである、という可能性も考慮する必要があります。(事実、80年代のバブルも2000年代のミニバブルも、そうして彼らが道を誤ったわけですから)
リニア開業は、神奈川県の不動産売却にどう影響するか?
2027年のリニア開業で、神奈川県は相模原市に駅が作られます。これが地域の不動産売却に与える影響も当然大きいでしょう。
相模原はこれによって再開発がいっそう加速し、より「住み良い街」になることが予想されています。
そのため、神奈川県内でも相模原に居を構える人が今後も増えると見られ、ただでさえ供給過剰の川崎市などは、今後も苦戦する可能性が高いといえます。
しかし、相模原が豊かになって神奈川県全体で経済の流れがよくなることは、広い視点で見れば川崎市など近隣の市町村にとってもプラスといえます。
どんな現象でもプラスとマイナスの両面があるわけですが、ご自身の物件を売却する時、そのプラスの影響を多く受けるか、マイナスの影響を強く受けるかを見極めて、売却を決めるようにしましょう。
神奈川県内の高級リゾート地の売却
神奈川は横浜や川崎のようなオフィス街・繁華街も発展していますが、逗子・葉山・鎌倉といった高級リゾート地も発展している県です。
同じ神奈川県の物件を売るにしても、これらの土地を売却する場合は、普通とは違った客層を相手にする必要があります。
そのため、不動産会社選びが特に重要となり、こうした地区の物件を買いたがるようなお客さんを多く集めている業者を、まず探す必要があります。
もちろん、検索すれば名前だけは出てくるわけですが、実際に高値で売却するだけの実力があるかどうか、査定の時などに話した印象で見極めるようにしましょう。
物件をいくらで売却できるかは、その物件の条件も大事ですが、それを消費者に売却する業者の力量も重要です。(消費者に売るのでなく、業者が直接買い取ってくれる場合は、それは特に必要ないのですが)
おおかたの場合は業者の直接買い取りではなく、そこから買ってくれる消費者を探す、という形の売却です。
そのため、リゾート地に住むような客層にアピールする力がある業者を選ぶ、ということがこれらの土地の物件では大事でしょう。
震災による津波・液状化などのリスク
神奈川の沿岸部には、東京湾沿岸を除いてこれといった防潮堤がないため、沿岸の物件では津波のリスクも考慮する必要があります。
東京湾岸の場合も、防潮堤があるとはいえ、津波の被害を受けることがハザードマップによって示唆されている場所も多くありますから、特に湾岸の物件は注意が必要です。
液状化については横浜港周辺など、埋め立てによって作られた新しい土地が、基本的に危ないと言われています。
埋め立てでできた土地でなければ、海岸線であっても特にリスクはないとされており、津波と液状化では、リスクのあるゾーンが異なると言えます。(詳しくは、神奈川県が発行しているハザードマップを見ていただけたらと思います)
「向こう30年以内に、70%の確率で首都直下型の大地震が来る」という専門家の予測は、この地域の市場にもやはり大きな影響を与えています。
実際に大地震が来るかどうかは置いておき、そのリスクが大きいと判断した方は、早めの売却に向けて動き出すべきでしょう。
米軍基地が神奈川県の不動産売却に与える影響
神奈川の不動産に影響を与えるもので、一番先読みしにくいのが「米軍基地の動き」です。というのも、これは中国・北朝鮮などの動きにも影響を受けるからです。
「リニア開通によって相模原市周辺が盛り上がる」などのことは容易に予測ができますが、米軍基地に関してはまったくわかりません。
中国と日本・アメリカの緊張が薄まれば徐々に返還が進むでしょうし、そうでなければこのまま基地が残り続けます。特に「返還」と違い「増員」はすぐに起こるものです。
現時点でも米軍向けにマンションの賃貸をしている方は一定数いますし、不動産会社による貸主の募集も、常時行われています。
情勢の変化によって基地の「増員」が行われると、こうしたところでも不動産が動くわけです。
日本人向けの物件とはまた異なるニーズがありますから、米軍基地から近い地区では、彼らの動きが不動産の売却に与える影響も大きいでしょう。
特に返還が検討されている相模原の補給廠(ほきゅうしょう)のように、中心部を横断しているような基地物件が返還されることは、地域の不動産市場を大きく変えると言えます。