V.Sabrinaのデザイン哲学~ムシやネズミの頭蓋骨アクセサリー?
V.Sabrinaはムシやネズミの頭蓋骨を使った生物標本のアクセサリーなど、すこし変わったアイテムを制作しているブランドです。
一見してある種の不気味さを感じる作品が多いです。
しかし、実は制作されている品々を観察していくと一つのことがわかります。デザインすべてが、一人の人間が持つ探究心や、見ている景色を伝えるためのものではないかということです。
いったいV.Sabrinaのアイテムがつくりだす人間像とはなんなのか、一つ一つの品物を見ながら解説していきましょう。
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ブランド名は女性の名前。アイテムすべてが彼女をかたどる
まずV.Sabrinaを理解するためには、コンセプトについて知っておく必要があります。ブランドはSabrina Venditti(ブランド名とわけるため、以後Vendittiとします)という架空の女性について語るものです。
彼女の考え方や趣味趣向、どういう人物かといったことを伝える手段としてアイテムを発表しています。
▲上記の画像にある生物標本シリーズも例外ではなく、Vendittiという人物を表すためのかけらで、コレクションの時は標本されているアイテムに、Vendittiの発見した生物への見解が記されていたりするそうです。
例をあげると、標本されているものには、カブトムシやテントウムシなど昆虫をつかったもの、銀やエメラルドなど鉱物を封入したもの、スズメやネズミの頭蓋骨を入れたものなどがあります。
多くのアイテムに基本的な説明はありますが、「詳細は不明」と見解の文が締められているものも少なからずあり、あえて細かな設定を語らないようにしているようです。
なぜ、わざわざ詳しい説明をせず、ぼかしたりするのでしょうか。理由を知るためにも、他のアイテムについてもみてみる必要があるでしょう。
自然を探求する視点で作られた服!?
▲こちらは他のブランドとのコラボレーションで制作されたTシャツですが、V.Sabrinaらしさは失っていません。シンプルで少し暗めの色合いと肌触りのいい布地は、日常的に使える着心地のよさを感じさせます。
そして同時に、架空の女性が好む服がどういったものかも表しており、派手な色や装飾の服は着ないという人物像がかいま見えるでしょう。
他にも解剖衣装と題したレントゲン画像がプリントされたTシャツや『自然科学者の研究着』という名のコートなどがあります。
服の多くが研究者であることをデザインのコンセプトにしたものであり、Vendittiという人物が自然科学をライフワークとした人物であると予想できるはずです。
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ブックカバーから読みとる自然への思いとメッセージ
▲また、このブランドは『優美なる真実を求めて』というタイトルでブックカバーなども作成しており、タイトルからわかるように、やはり研究者的な観点からデザインされたものです。
ですが、ただ世の中の仕組みを無感情にみているわけではなく、Vendittiという女性がとても情熱をもっていることもイメージできます。
なぜなら、単に物事を調べて知ることをよしとする人物なら「優美なる」という言葉は題名につかわず「真実を求めて」とよりシンプルにした方が研究者的な雰囲気をだすことができるからです。
それにも関わらず、わざと美しさを強調する言葉をつけたのは、世の中にある事実を探しているのではなく、思わず感動の声をあげられるような、すばらしい真実を求めていることの証明に他ならないでしょう。
アイテムからわかるVendittiを通して表されている一つのこととは?
以上のことから考えられるのは、V.Sabrinaがコンセプトとして作りだした架空の女性が示していることとは、人がもっている限りない美しさへの探究心ではないかということです。
私たちを待ち受けている現実はつらくきびしいものであり、どちらかと言えば汚いこと、きれいごとだけでは乗り切れないようなできごとが多い傾向にあります。
これは社会に限ったことではなく、動物や植物が生きる自然の世界も同じです。しかし、それでも人はあきらめずに美しいものを求め続ける力があり、結果としていろいろなすばらしいものを作り、またみつけてきました。
残酷さのなかにある美しさを求めつづけることの大切さ
つまりVendittiという女性の、趣味や考えのかけらとして生みだされたアイテムは、上に記したつらいものや恐ろしいことの裏にひそむ美しさを探求する心を人に伝えるための一種の手紙と言えるでしょう。
だれもがどんな事実を突きつけられても目をそむけず、自然の残酷さのなかにある優美さを発見してほしいという強いメッセージが、V.Sabrinaの創作の根底にはあるのではないでしょうか。
V.Sabrinaというブランドは架空の女性Sabrina Vendittiがどういう人物かということをアイテムの一つ一つを使って匂わすというコンセプトのもと創作をおこなっています。
虫や骨を使ったアクセサリーや、レントゲンのプリントなどを用いた服など、第一印象では少し不気味に感じてしまうものも多くあります。しかしそのアイテムに込められた言葉は、明るく前向きなものです。
あるのは、ひとりの自然科学に生きる女性が美しい真実を探してひた向きに生きているという事実と、つらい現実から目をそむけず、きれいなものを見つけられるよう頑張って生きて欲しいという強いメッセージですから。
By筒井
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