TROVEというブランドの牧歌的デザインはどのように生まれたのか?
かっこよさや機能性を求めるブランドは数多くありますが、メンズで「柔らかさ」を重視するブランドはあまり見かけません。
TROVEは他の男性向けの服とは違う、穏やかさや優しさを大切にしているメンズブランドです。
人気を集める多くの服と違うゆったりとした雰囲気、牧歌的とも言えるデザインはどのようにして生まれたのでしょうか。また、TROVEがイメージしている男性像とはどういうものなのかを考えてみましょう。
アーティスティックなレディースから実用的なメンズへ
デザイナーははじめレディースの服を制作していて、できたものはアートや舞台関係で活動している同級生たちに提供していたそうです。当時のものは量産には向かない、一点物のファッショナブルなものでした。
スポンサーリンク
しかし数年続きはしたものの服だけで食べていけるほどの収入は得られず、上手くいかないことを実感したころに、運よく企業から声がかかります。そして今度はレディースではなくメンズウェアを作ることになりました。
企業からの依頼を受けた背景には、特別な一点物を作るより服の流通の仕組みにそった制作をしたいという考えがあったそうです。ただ、まだ方向性を決めかねていたなどの理由もあって、けっきょく上手くいかず挫折を味わいます。
失敗の後に始まったブランド、既存の男性像に縛られないデザイン
事業として軌道にのせることはできませんでしたが、まったくの無駄というわけではありませんでした。なぜなら作った服を見て目をとめた会社があり、おかげで現在のブランドTROVEを立ち上げることに至ったからです。
▲上の画像を見ていただくと、TROVEが一般的な「男性らしさ」を散りばめた服とは違う、ゆったりとした形状や質感をもつものとわかります。何故かと言えば、デザイナーのイメージする男性像が攻撃的なものではないからです。
おかげで鋭さのない、着る側と見る側の両方がリラックスできるような作りになっています。もしかすると既存の男性像を壊したいという作者の思いも少なからず込められているのかもしれません。
作りだけでなく、デザインも牧歌的でのんびりとした雰囲気を持つ
またデザインを見る限り、多くの人々が一斉に注目するような派手さがないこともわかります。実は意図的に落ち着いたデザインにしているようで、刺激的なものよりも長く人々に愛されるものを作りたいという理由があるそうです。
▲上記のことを証明するように、確かにTROVEの服は一度見たら忘れないというほど強烈なインパクトはありません。むしろひと目見ただけでは、どこに同ブランドならではの特別さがあるのか判断がつかないでしょう。
ですが、よくよく見てみると気張らず着られる安心感と、ポケットの作りなど細かなところにおしゃれを感じることができるはずです。また、のんびりとした牧歌的な雰囲気もコレクションの様子から感じられるでしょう。
スポンサーリンク
男性は男らしくあるもの?新しい男性像とは??
ゆったりとしたファンタジックな服の作りや、デザイナーの創作姿勢から見えてくるのは、新たな男性像を作ろうとしているのではないかということです。それは今までの日本でよしとされてきた「男らしさ」とはまったく異なります。
現在でも多くの方々は、男性的な魅力とは「力の強さ」や「たくましさ」としており、見た目でも同じことを強調しようとする傾向にあるようです。例としてはがっしりとした造りのジャケットや無骨な感じのブーツが挙げられます。
ですが近頃の若者たちの中には、強さを表現した装いを好まない人々がいるそうです。ユニセックスな雰囲気をよしとするおっとりした男性たちは、正にTROVEが作りだす男性像と一致しています。
今までの男らしさを潰すのではなく、男らしさに幅をだす試み
つまりTROVEが作りだす服とは、これからの時代を担う新たな男性たちのイメージをデザインに落とし込んだものと言えるかもしれません。そして、だからこそ現在注目を集めるブランドのひとつになったとも考えられます。
ただ、デザイナーは男らしさを否定しているわけではありません。ただ服にもっとバリエーションがあればいいと考えているようで、「男性の服」が今よりも多彩になっていくためにデザインを工夫しています。
▲ですので同ブランドの服は、中性的な方しか着られないものではありません。上の画像のようなコートもあり、中に着るもの次第で「強い男」を好む人も楽しめる、多くのファッション好きに受け入れられるものと言えるでしょう。
TROVEの服は、ひと目で惹き付けられるほどの刺激的なデザインではなく、人によってはインパクトに欠けると感じるでしょう。ですが地味で面白味がないというわけではなく、ところどころに斬新な試みが見受けられます。
またデザイナーは、今まで人々が「かっこいい男性服」としてきたもののくくりでは服の幅が狭くなってしまうと感じているそうです。ですから何とかしてバリエーションを増やそうと、新たな男性像をデザインしています。
それは穏やかで優しげな印象を与える、今時の若者に見られる男性像です。ですが、決して既存の「男らしさ」を否定してはいません。ただTROVEは、「男らしさ」にも色んな形があってもいいことを示しているのではないでしょうか。
By 筒井
スポンサーリンク