赤帽の歴史と成り立ち -引越ビジネスとして成立した理由
引っ越しでは大手の引越社を利用する人がほとんどですが、小規模な引っ越しで赤帽利用する人もいるでしょう。
この記事では、赤帽の歴史や成り立ち、なぜビジネスとして成立したのかなどを書きます。
赤帽の歴史 ~はじまりは1950年~
赤帽の歴史が始まったのは1950年です。すでに64年の歴史があるわけですね。
創始者は松石敏男氏。きっかけは、ある日路上で見かけた老婦人の姿でした。
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■大荷物を抱えて途方に暮れる老婦人を見て
松石氏が東京の路上を歩いていたある日、大荷物を抱える老婦人の姿を見ました。
その老婦人は何度もタクシーを呼び止めているのですが、タクシーは止まっても一言二言話して、走り去ってしまいます。
老婦人の荷物がタクシーに載りきらないため、乗せることができなかったのです。
タクシーにとっては仕方ないことですが、老婦人にとっても仕方ないことです。
というのは、当時の鉄道による宅配便は自宅まで届けに来てくれず、自分で駅まで取りに行く必要があったからです。
なので、おそらくこの時の老婦人は荷物を駅で受け取って、そこから自宅に帰る所だったんですね。
それで、こういうシチュエーションになっていたわけです。
(ちなみに、宅急便の登場はこれから26年後の1976年で、まだまだ先の話でした)
このような状況で松石氏は「もっと多くの人が気軽に荷物を送れるサービスがあれば」と思い、赤帽の創設を思いついたのです。
名前の由来(意味)は?
赤帽というのは、もともと鉄道で乗客の荷物の積み下ろしなどをする人のことでした。
英語ではポーターという職業で、日本では1896年から登場しています。
この鉄道の赤帽が日本で普及した頃、彼らの働きぶりに感動した松石氏の脳裏には、その印象が強く残っていました。
なので、自分が軽運送業を始めようと決めた上のエピソードの時に、名前も「赤帽」とすることに決めたのです。
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■松石氏を感動させた赤帽の姿
松石氏を感動させた鉄道の赤帽の姿は、一見ごくごく平凡なものでした。
一人の赤帽さんが荷物をおろした後汗をふく瞬間があったのですが、その時の動作がプロ意識にあふれていた、というものです。
荷物に自分の汗が少し落ちてしまったので、まずはその汗をタオルで拭きとってから、自分の顔の汗を拭きとったのです。
本当に小さなことで見る人が見なければわからないような一瞬の動作ですが、その動作を見て松石氏は「自分の疲労よりもお客さんの荷物を大事にすることを考えている」と気づいたわけです。
その職業倫理に感動して、彼は自分のビジネスにも赤帽という名前をつけたわけです。
なぜ普及したのか?
現代でこそ利用者が減っている赤帽ですが、もともとは宅配便のようなビジネスは赤帽しかなかったのです。
■宅配便登場前の荷物の運搬
宅配便が登場する前も、一応似たサービスはありました。
郵便小包(現代のゆうパック)と、鉄道小荷物というものです。それぞれ
・郵便小包…6kgまでしかダメ
・鉄道小荷物…駅まで受け取りにいかなければいけない
というデメリットがありました。
現代からすると不便この上ないですが、これが当時は当たり前だったのです。
「個人向けの宅配サービスがあればいいのに」ということは誰もが感じていたし、大手運送業者も気づいていました。
しかし、個人向けはコストが高い割に、小さい荷物が多いので大した利益にならないだろうと考えたわけですね。
なので、大手の運送会社はみんな二の足を踏んでいたのです。
そのせいで、冒頭で紹介した老婦人のように、「鉄道で手荷物を受け取ったけど、その後それを運べない」という人がたくさんいたんですね。
これを解決するには「個人用でも利益が出せる、小回りの利くビジネスをする必要がある」と松石氏は考え、現在の赤帽のスタイルを生み出しました。
■「庶民の庶民による、庶民のための運送業」
赤帽設立時からのキャッチフレーズで「庶民の庶民による、庶民のための運送業」というものがあります。
これは松石氏の理念を表すだけではなく、ビジネスモデルとして成立した理由も表しています。
赤帽は基本的に、各地の赤帽さんが「個人」で活動しています。
「赤帽の組織」に登録さえしてくれれば、あとは個人で自由に活動していい、というものです。
つまり、全国の赤帽さんたちも「庶民」だったんですね。
「近所のお兄さん(おじさん)」に電話をかけ、荷物を運んでもらい、お互いの交渉で決めたお金を支払う、という昔ながらのスタイルでビジネスが成立していたのです。
このスタイルだと、全国の赤帽をまとめる組織には、特にコストが発生しません。
また、個々の赤帽さんも自分一人分(もしくは家族分)だけを稼げばいいわけですから、さほど大きな売上を必要としません。
なので、個人用の運送でも十分ビジネスになったのです。
こうした「マイクロビジネス」は、大手では付けないようなニッチな部分を付いてビジネスをすることができます。
それを宅配便の26年前、運送の世界でやったのが赤帽だったのです。
その後インフラの発達や法律の変更で大企業でも個人向けの輸送をできるようになり、それで宅配便全盛の現代となりました。
しかし、赤帽がその前に果たした歴史的価値は、大きいといえるでしょう。
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