大人気の『ゼロ円引越』、IT企業が持ち込んだ異色のサービスとは?
引越業界もデフレ化が進んでいますが、とうとう「ゼロ円引っ越し」まで広まっています。
以前、知る蔵でも「100円引っ越し」を紹介しましたが、それよりさらに上(下?)です。
(過去記事→「100円で引越!29歳の社長が業界にもたらした、激安サービスとは?」
しかし、この0円、100円の両サービスとも「ただのデフレ」ではありません。デフレ時代を逆手にとった新しいモデルです。
IT企業だから思いついたビジネスモデル
実は、0円引っ越しを広めた「リゲインジャパン」は、もともと引越会社ではありません。
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SE(システムエンジニア)の派遣、SEOのコンサルティングなどをしている会社で「バリバリのIT企業」なのです。
その業務の一貫として「フレッツ光の契約促進」がありました。
これをしていて、リゲインジャパンが気づいたことがあったのです。それは、
「回線契約は、引っ越し時が一番多い」
ということです。ということは、
「ウチが引っ越しも手がけたら、もっと回線の契約を取れるのでは?」
と思ったわけですね。つまり「引っ越しのための引っ越し」ではなく「回線のための引っ越し」だったわけです。
初回は赤字でも、長期的に不労所得を生み出す
この「回線を契約したらタダ」というのは、100円パソコンなどでもよくある手法です。
そのパソコンを売った瞬間は赤字でも、契約期間ずっと接続料を払ってもらえるので、長期的には黒字、しかも「不労所得」が生まれるわけですね。
それも金額がわからない不労所得ではなく「毎月○日に○○円入る」と完全に計算できる不労所得です。
(不労所得のお金が入るのは、リゲインジャパンなどの代理店ではなく大元のプロバイダで、リゲインジャパンに入るのは一時金としての報酬です)
何にせよ、これがプロバイダにとってどれだけありがたいか、言うまでもないでしょう。
予測できないはずの未来が、少なくとも財政面では予測できるわけですから、あらゆる計画で誤差が少なくなります。
だから、この100円パソコンのようなモデルは、携帯の契約などあらゆるところで使われているんですね。
そして、それを引っ越しにも導入したのがリゲインジャパンというわけです。
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本業の4倍の売上で、「こっちが本業」に
リゲインジャパンの売上比率は、「インフラ系…8割、SES…2割」です。
(SES=システムエンジニアサービス)
もともとリゲインジャパンのメイン事業はSESでした。
それがフレッツ光の回線契約を手がけたことから徐々にその割合が増えて、引っ越しへの参入でとうとう「元・本業の4倍」の売上に達しているわけです。
これを見ても「当初の事業に固執しない」ことの大切さがわかります。
企業の目的はあくまで「社会の利益」「顧客の利益」であり「その業種」ではないのです。
■「我々の事業は何か?」(ドラッカー)にも通じる
ドラッカーの有名な言葉の一つに「我々の事業は何か?」というものがあります。
ここで「SESです」と答えていたら、今のリゲインジャパンはなかったわけです。
SESにこだわらずフレッツ光の販促にも参戦し、「要は回線の契約さえできればいいのだ」ということに気づき、引っ越しという一見無関係なものを結びつけたのです。
「回線の契約さえ」というと利益の鬼のようですが、要は「お客さんが求めているものを、求めている時に」ということです。
それを実現する手段がたまたま引っ越しだった、というだけです。
松下幸之助はこういう経営のことを「融通無碍の境地」として経営の理想の形としていました。
(宮本武蔵の戦い方でいうなら、刀を弾かれたら、すぐに接近して素手で相手を殴り倒す、というようなものです。別に「剣での戦い」にこだわる必要はないのです)
リゲインジャパンだけを賞賛しているわけではありませんが、こういう自由自在な発想をするということが、経営者には必要なのです。
半年以上先のことはわからない
リゲインジャパンの大川社長はインタビューの中で「半年以上先のことはわからない」「計画を立てるのはせいぜい数ヶ月まで」と語られています。
(参考記事→ドリームゲート「業界初の試み「タダ引越」。繁忙期には数百件の申し込みが舞い込む!」)
「社長は何年も先まで見通している」と考えている人にとっては、これはかなり意外なのではないでしょうか。
すべての社長がこういう時間感覚とは限りませんが、大手でも予想より遥かに下回る業績になって「大幅な下方修正」をしているのを見ると、確かにそうなのかも知れません。
(シャープの「亀山モデル」の崩壊が最たるものかも知れませんが)
リゲインジャパンは、インフラ事業(回線の契約促進など)に参戦したのも、わずか3年前です。
そこから引っ越し事業が本格化するまで1年かかっていますから、まだこの方法で成功してから3年経っていないのです。
それだけ若い企業だから「先のことはわからない」というのもあるのでしょうが、やはり今のビジネスの世界は本当にドッグイヤーになっているのだと思います。
半年前までは「斬新」と言われていたビジネスモデルが、半年後にはもう陳腐化している、そんなすさまじい時代になっているのでしょう。
逆にいえば、実力と精神力さえあれば、ドッグイヤー並みのスピードで頂点に上り詰めることもできるわけです。
どんな時代でも、それを味方にして生きたいものですね。
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