今でこそ、引っ越しをする際には専門業者を使うのが当たり前になりましたが、少し前までは専門業者というものは存在しませんでした。
一般の運送業者が引越しの業務を兼業として行なっていただけであって、いまとはサービス内容も質もまったく違ったと言っていいでしょう。
専門業者が登場し始めたのは1970年代半ばのことになります。
それから40年ほどの間に、日本の引越し専門業者はどんどん発展をしてきました。
現在では、荷物の梱包から開梱、さらには家具のセッティングまで行うサービスやクリーニングなど、さまざまなメニューやオプションがそろっています。
日本の引越し専門業者の仕事内容は、今や世界一充実していると言えるでしょう。
ここでは、その40年の歴史をたどってみたいと思います。
昔の引越しはとてもたいへんでした
引越しをするという行為そのものは、当然古代からありました。
住まいを変えるのは、原始人の時代から行われていたに違いりません。
奈良や平安の時代になると、貴族たちは出世すると天皇に許されて広い家に住み替えが認められたため、「引っ越し」が制度化されるようになります。その頃には現在と同じように「引き越し」と呼ばれていたようです。
江戸時代には商業の発達により人の動きが活発になり、裕福な商人たちは日当たりの良いエリアや、高台に居を構えるため引越しをするようになりました。
当時は、現代のように荷物を大量に積むことのできる自動車のようなものがあるわけではなく、もっぱら荷車に荷物を載せて人力で運ぶのが一般的でした。家財道具が多いお金持ちの場合はさぞや大変だったことでしょう。
大きくて人の力では運べないものなどは、馬を使うこともありましたが、主に人の力だけを使った引っ越しが、昭和の半ごろまで続きます。
1960年代の後半以降には、自動車が普及しはじめ、引越しにトラックを使うことが一般的になります。
物流の発達とともに荷物を運ぶ運送業者もどんどん増え、引っ越しの際にもこうした業者を活用するようになりました。
ただ、当時の運送屋はトラックを貸し出したり、車を運転するだけが主な仕事ですので、家具を梱包したり積み込んだりするのは、家族総出の作業でした。
友人や知人、近隣の人や会社の同僚なども加わって、大勢が手伝う一大イベントでした。
昔は住む場所を変えるというのは、想像以上に大変な作業が伴ったのです。
1970年代半ばに、専業の業者が誕生!
1973年に、中小の運送業者6社が「引越研究会」というものを立ち上げます。
これが現在の引越し専門業者の起源といえるでしょう。
専門化することによって、作業を効率的に進めるための技術やノウハウが蓄積され、作業員のスキルも上がって、サービスの質がどんどん向上していきました。
1985年には、クロネコヤマトが「引越らくらくパック」という商品の提供を開始しました。
それまで、荷物の梱包は家族や知人らに手伝ってもらって行なうのがあたり前だったものを、作業員がそれらの作業をすべて代行して行なうサービスを始めたのです。
この画期的なサービスが、現代の引越し専門業者のサービスを世界で最高レベルと言わしめるきっかけとなったといえるでしょう。
荷物を丁寧に梱包したり、運ぶための通路やエレベーターなどに養生をして傷をつけないように気を配るなど、引越し専門業者独特の細やかな仕事ぶりは、このころから徐々に発展していきました。
アーク引越センターは、全国にネットワーク展開し1994年には、サービスポイントが200を超えギネス認定されたという実績があります。
いまでは、これまで住んでいた部屋のクリーニングや、転居先の部屋のライフラインの整備、女性スタッフによる引っ越し梱包サービスなど、さまざまな専門業者ならではの新商品が登場しています。
最近では動画サイトなどに、日本の引っ越し専門業者の作業をする様子がアップされ、そのサービスの丁寧さや充実ぶりに世界中から驚嘆の声が書き込まれています。
そう遠くない将来、アニメやオタクなどのサブカルチャーだけでなく、日本の引越し専門業者が世界中から注目される日が来るかもしれません。
優れたサービスを提供するこうした引越し専門業者のおかげで、私たち日本人はいつでもどこでも電話1本ですべておまかせの引越しができるようになったわけですね。