つわりは治療法がないので耐えるのが日本流~アメリカには特効薬が!
妊娠初期に多くの女性が苦しむ「つわり(悪阻)」。
平安時代以前の文献にも見られるほど昔からあった症状であるにも関わらず、今なお原因が明らかではなく、「気の持ちよう」と片づけられてしまうことも少なくありません。
特に日本では「つわりは耐えるもの」という考えがまだまだ根強く、海外と比べて薬の開発も進んでいない現状があります。
つわりの原因はまだ明らかになっていない!
船酔いのような吐き気や食欲の減退(もしくは増進)、匂いへの過敏性など、つわりは「なったことのある人にしか分からない」ほどつらいものです。特に朝起きた後の空腹時に症状が強くなる傾向が見られるため、英語ではつわりを「morning sickness」といいます。
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原因として今のところ有力なのは、「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンの分泌増加です。実際、hCGの分泌量がピークを迎えるのが妊娠9~10週ですので、もっともつわりがつらい時期と重なっています。
しかし妊婦さんを対象とした調査の結果、hCGの分泌量とつわりの程度に関連性が見られなかったため、医学的に確定されるまでには至っていません。
他によく言われるのは「体が赤ちゃんを異物と勘違いし、アレルギー反応が出る」というものです。また「もっとも大切な時期に母親が無理をしないよう、わざと具合悪くさせる」説や、「溜めこんだ毒素の排泄」「自律神経の乱れ」などの説もあり、要はまだよく分かっていないのが現状です。
つわりの原因特定が難しいのは、「すべての妊婦さんに同じ症状が出るとは限らない」からでしょう。中にはまったく何の症状も出ないまま過ごせる、うらやましい女性もいるものです。それが一部の人々から「気の持ちよう」「甘え」などと片づけられてしまう理由だともいえます。
つわりで治療をおこなうのは、脱水症状などが見られる場合
しかし当然ながら、つわりは気のせいなどではありません。「横になったまま1日を過ごす」「トイレから出られない」などなど、人によっては生活に支障が出るほどつらいものです。
それにも関わらず産婦人科で相談しても、薬を出してくれたりするところはほとんどありません。「そのうち良くなりますから、がんばってください」としか言われず、がっかりしてしまう妊婦さんも多いでしょう。
一般的に治療を必要とするつわりは、たとえば1日に何十回も嘔吐して水分も取れないような場合、もしくは体重が5キロ以上減った場合などです。このように重いつわりには「妊娠悪阻」という病名がつき、基本的に絶食して点滴治療を受けることになります。
逆にいうと、治療を必要としないつわりは病的なものと見なされず、「やり過ごすしかない」のが実情なのです。
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つわりが「がんばってください」で済まされる2つの理由
なぜお医者さんはつわりを治療してくれないのか?その理由の1つは「安易な薬物の使用を避けるため」です。
確かに吐き気止めの薬はたくさんありますが、つわりがピークを迎える妊娠初期は、胎児の体が形成されるもっとも重要な時期です。
特に日本は昔、吐き気止めとして妊婦さんに投与していた薬が胎児の奇形を引き起こして社会問題になったことがあり(サリドマイド事件)、それ以降は非常に慎重になったものと考えられます。
ですから今のところ問題が報告されていない吐き気止め薬に関しても、「なるべくこの時期には出したくない」と思う医師が多いのです。実際、産婦人科医は何かあるとすぐに訴えられてしまうという現状もありますので、仕方ないのかもしれません。
そして、つわり治療が進まないもう1つの大きな理由が「いずれ収まるものだから」です。つわりは確かにつらいけれども、病気ではないことは明白ですし、妊娠16週を過ぎるころには多くの妊婦さんが山を越えています。
中には安定期に入ってからもつわりが去ってくれないケースもありますが、最悪でも「産めば治る」のは確実です。
症状がつらい時にはブルーになっていた妊婦さんも、いったん収まれば嘘のように元気になり、食欲も戻ります。まさにこれが「今だけだからがんばって!」と言われるゆえんなのです。
実はある!?つわりの特効薬
とはいえ「今つらいんだから、どうにかしたいの!」という妊婦さんには、漢方薬という選択肢もあります。漢方薬も薬ですからきちんと医師や薬剤師の処方を受ける必要がありますが、実際に使用実績も豊富で、安全性は高いとされています。
妊婦さんの体質や症状にもよりますが、たとえば「小半夏茯苓湯」は吐き気止めの効果があり、多く処方されている漢方です。他にも喉のかわきやむくみがひどい人に処方される「五苓散」などもあります。
ちなみにアメリカでは最近、「Diclegis」というつわりの治療薬がFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を受けました。食事療法などでは改善されないつわりを対象とした処方薬です。
アメリカではもともと「Bendectin」という薬も販売されていたのですが、安全性に疑念が残るとの理由で1983年に回収されています。ですからつわりの治療薬としては、約30年ぶりに復活したことになります。
アメリカは日本と比べると、「薬で抑えられる症状は抑えて、はつらつと生きる」ことに重きを置く傾向が見られますので、こうした薬の開発も進んだのでしょう。日本はやはり、まだまだ「耐えられるものはできるだけ耐えよう」とするお国柄なのかもしれません。
しかし逆にいえば「安全性を第一」に考える国でもありますから、どちらが正しいとは一概に言い切れないのも事実です。
By 叶恵美
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