エスプレッソ好きのイタリア人はインスタントコーヒーを飲む?
1日にいったい何杯エスプレッソを飲むのか?と思うほど、イタリア人はコーヒーが好きです。
香り高くて濃厚な抽出液を、小さなデミタスカップで一気に飲み干すのが至福の瞬間だといいます。
イタリア人ならだれでもお気に入りのバールがありますし、自宅にも愛用のエスプレッソマシンを置いているのが普通です。
しかし、インスタントコーヒーを飲むイタリア人って、いると思いますか?スーパーでもこれが置かれているのは知っています。
でも改めて考えてみると、それを選んでいるイタリア人を見たことがあるかといえば・・・自信がありません。
スポンサーリンク
需要がまったくなければ売らないでしょう。
エスプレッソを好む国での、インスタントコーヒーの役割を探してみることにしました。
エスプレッソ用コーヒー豆売場のすみで、ひっそりと売られていたインスタント
スーパーのコーヒーコーナーは大きいのですが、即席タイプの販売スペースは端の一角だけです。面積は、全体の10分の1以下でしょうか。即席タイプが冷遇されているのが、これだけでもわかります。
メーカーの数と種類を比べてみました。このスーパーでは、15のメーカーのエスプレッソ用コーヒー豆を販売しています。
「クリーミィな泡がたつ」ものや「強いコクが楽しめる」ものなど、全52種類の挽き豆がありました。選ぶのが楽しくなるほどの充実ぶりです。
一方インスタントコーヒーについては、2メーカーの合計7種類の商品しか置いてありません。ネスレのものが5種類、スーパーの自社ブランド製が2種類という構成でした。
ほかのスーパーでも、同じような品揃えだと思います。挽き豆に比べると、需要が圧倒的に少ないといえます。イタリアのわずかばかりの即席コーヒー市場は、ネスレ社がほぼ独占していました。
品揃えについては、エスプレッソ用引き豆の完勝です。ではなぜインスタントの需要が、わずかにでも残っているのでしょうか。
値段を比較してみました。エスプレッソ用豆の価格はさまざまですが、平均すれば、1袋250gで約350円です。ネスレのインスタントコーヒーは、100g入り1瓶の平均販売価格は約600円でした。
エスプレッソを1回抽出するために、約15gの挽き豆を使います。つまり1袋で16杯程度コーヒーが飲めることになります。インスタントが1瓶で何杯飲めるかは難しい問題です。気分によって、粉を入れるさじ加減も変わります。
ネスレのラベルをよく見ると、「40杯飲めます」と書かれていました。こちらの会社はひとまず1瓶で40杯を想定していると見ていいでしょう。
エスプレッソは1杯で約22円、インスタントは1杯で約15円という結果になりました。差はあまりありません。自宅で飲むのなら、どちらを使っても経済的な負担は変わらないといえます。
コストから考えても、即席コーヒーのメリットは見つけられませんでした。そもそもイタリア人の大好きなエスプレッソを、即席タイプで淹れることができるのかという根本的な問題があります。
スポンサーリンク
実際にインスタントコーヒーでエスプレッソを作ってみると・・・
このデミタスカップの約半分弱が、エスプレッソの適量です。インスタントコーヒーをスプーン1杯分入れて試してみました。
きれいにできたと思ったのですが、飲んでも香りがありません。コーヒーの粉をスプーン2杯に増やしてみました。これだと、通常のエスプレッソに少し近づいたと思います。でも溶け残りがでてしまいました。
もう少し時間をおいたら全部溶けたのかもしれません。こちらの即席は、日本の製品のように瞬時に溶けるわけではないようです。
濃く作っても香りが増すわけでもないですし、おいしいとも思えません。妙に酸味の強い後味だけが残って口の中が気持ちわるいです。
この国のインスタントが、エスプレッソ用として作られていないことだけはわかりました。エスプレッソに使えないのなら、イタリア人はいったいいつこれを利用するのでしょう?
いったい、いつ使う?そのヒントはラベルの写真!
インスタントは、こちらではカフェオレ専用と考えられているのではないでしょうか?
こちらはミルクが写っていませんが、マグカップを使っている点は同じです。
スプーン2杯をマグカップに入れ、温めたミルクを注ぐと、たしかに普通のカフェオレができました。
エスプレッソを作る実験をしたとき、即席コーヒーに香りがほとんどないのが気になりました。カフェオレだとミルクの匂いが強いので、コーヒー自体の風味のなさは気になりません。
おじいさん世代は、今でもエスプレッソとビスケットで朝食を済ませます。でも若い人ほど、カフェオレとブリオッシュという、少しボリュームのある組み合わせを好んでいます。
売場の片隅で細々と売られているインスタントは、フレンチ朝食好きのイタリアの若者向けなのだと思います。ラベルを詳しく見てみると、販売元は「ネスレ・イタリア」ですが、原産国はフランスになっていました。
自国の食事文化に大いなる自信をもつ国ですが、朝食だけはフランスの影響が入り込んでいるなと、瓶を眺めてひとまず納得しました。
スポンサーリンク