イタリア人はケバブが大好き?~ドネルのお店が急増している理由
私はいま、イタリア中部のフィレンツェという街で暮らしています。
ここで見かける外国料理のお店といえば、数年前までは中華料理店と日本料理店くらいでした。
それがいまでは、ケバブのお店が驚くほどの勢いで増えています。
串焼きタイプもあるようですが、イタリアで主流なのは、大きな肉の塊を回転させながら焼くドネルというスタイルです。
日本でも、いまは新宿や六本木あたりでこういうお店をたまに見かけますね。フィレンツェでは、東京をはるかに上回るスピードでケバブ屋さんが増えています。
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1軒や2軒ならともかく、こんなに多いと競争に負けてつぶれるお店もでてくるに違いないと思っていました。
ところが意外なことに、昼食や夕食の時間ともなればどのお店も大繁盛。ますますケバブ屋さんはフィレンツェで増えそうな勢いです。
この外国料理のどこがそんなにイタリアでウケているのか……日頃の私自身の疑問を解決すべく、自宅周辺に山ほどあるこのお店を観察してみました。
フィレンツェでは、インド人経営のケバブ店が増えています
日本でケバブ屋さんを営業しているのは、たいていトルコ出身の方々だと聞きます。イタリアでもそうだろうと思っていました。
トルコはEU加盟を目前にしている国ですし、イスタンブールからローマまでは飛行機で3時間程度の距離です。
トルコ人がたくさん移住してきて、こちらで自国料理のお店を始めたのかと思いました。
ところが店頭でメニューや看板をよく見てみると、フィレンツェのドネル・ケバブ屋さんはほとんどがインド風をうたっています。店員さんに出身を確認したら、まちがいなくインドの方でした。
インドの人の移住先がなぜイタリアなのかという理由は……私にはわかりません。この国はヨーロッパで1、2を争う失業大国なのに、まったく不思議な状況です。
お仕事はうまくいってますか?……大きなお世話ですが、店員さんに聞いてみました。
「日によってちがうけど、夜はかなりいそがしいよ」
ここも繁盛しているのですね。自分たちで事業や飲食業を興しているインド人が、イタリアには多いようです。お店の中をさらに観察してみました。
お客さんのほとんどは外国人です
店内で食事をしている人、テイクアウトにする人、たしかにこの店はよく繁盛しています。でも客層の中心はどう見ても外国人です。
浅黒い肌をした、インドやパキスタン系の顔立ちのお客さんが一番多かったですね。アフリカ系のみなさんも大勢食事をしていました。
ドネルは、小アジア、アフリカ、インド方面でよく食べられる料理なのでしょうか。ケバブ文化圏で生まれ育った移民のみなさんが、なつかしい味を求めてここへ集まってきます。
アメリカ人や日本人のバックパッカーも、客の中に混じっていました。1人前のドネルの値段は500円弱です。これなら、切り売りピッツァやマクドナルドのハンバーガーの値段と変わりません。
いや、イタリアのマックは高いので、ビッグマックを食べるよりも安くあがります。これは旅行者にはうれしい値段です。
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ざっと見たところ、ケバブ店の客層の中心は移民と観光客のようです。いくつかのお店をのぞいてみたのですが、イタリア人の姿は見かけませんでした。
この国の人たちは、ケバブはあまり好きではないのですね。手早く安く食事を済ませたいなら、イタリア人なら切り売りのピッツァを選ぶのかも知れません。
イタリア人が興味をもたないとしても、流行っているからにはおいしいにちがいないのです。好奇心で、私もドネル・ケバブを買ってみました。
肉たっぷりのボリュームサンドイッチです
オーダーすると、薄いパンの中に具をぎゅうぎゅうにつめて渡してくれます。こちらのお店で使っている肉は、鶏肉と羊肉のミックスでした。
家で重量を測ってみたら330gもあります。はっきりと比べたわけではありませんが、これはビッグマックよりもずっと重いはずです。
ケバブを分解してみました。
薄い丸パンにはさまれていたのは、山盛りの薄切り肉、野菜、フライドポテトです。重量の内訳は、肉が150g、野菜類が50g、フライドポテトが30g、パンが100gでした。
ヨーグルトベースのソースが掛かっていて、肉でもかなりさっぱりとしています。
牛肉パテにマヨネーズを使うマックのバーガーより軽めで、ケバブは意外に食べやすいと思いました。
パンのボリュームが少な目なのはいいですね。肉と野菜をしっかり食べることができます。これ1コ個でおなかがいっぱいになりました。
安いのに満腹になって、栄養バランスも優れている料理……バックパッカーや、ファーストフード好きのアメリカ人に大ウケするはずです。
栄養バランスもいいメニューなのに、イタリア人の間でケバブが十分に受け入れられていないのは少し残念です。
でもこの国の人たちにはピッツァという最強のファーストフードがあります。イタリア人にとって、食の意識改革はかんたんではないのでしょう。
イタリアでケバブ店が増えているのは、移民と観光客が増えていることが理由のようです。
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