
「対物賠償特約をつけるかつけないか」自動車保険を新しく契約するときや、更新時に補償内容を見直す際、掛け金を少しでも安くするために悩んでしまうポイントです。
しかし、実際の事故の事例を見てみると対物賠償は必須の項目であり、限度額も「無制限」を選択した方が得策だといえそうです。
他人の財産を守る保険です
交通事故を起こして人に怪我をさせてしまったとき支払われるのが対人賠償保険であったり搭乗者傷害保険、人身傷害保険などです。対物賠償特約は、事故でものを壊してしまったときに補償してくれます。言い換えれば「自動車事故で他人の財産」に損害を与えてしまったときに適用される保険です。
対物事故を軽く見ていませんか?
「対人事故」というと「ひとりの人間を事故に遭わせてしまったせいで、その人の将来を奪ってしまったばかりか、その家族の生活も奪ってしまうことになり、その償いにかかるお金は莫大なものになってしまう」と誰でもすぐに想像できます。
しかし「対物事故」となると、イメージとして「バックしていてブロック塀が一部壊れた」とか「ガードレールをこすった」「電柱にぶつけてこっちの車がヘコんだ」または「うっかりして前の車のバンパーをヘコました」くらいしか思い浮かばないため、掛け金の支払いを抑えるため削ってもいい項目だととらえがちです。
事故を起こすと負担が大きい
実際に起こした事故の例を見てみると、その賠償金額がとんでもないことになる場合が多いことに驚きます。
例えば「電柱にぶつけた」事例では、ぶつけた電柱が傾いてしまったら最低でも100万円以上請求されます。その電柱が光ケーブルなどの経由点になっていればその分を上乗せして請求が来ます。信号機を壊せば最低でも500万円、道路標識でも電光掲示のものなら1000万円請求されることもあるそうです。
カードレールをヘコませただけでも、ひとつのスパン(つなぎ目からつなぎ目まで)を交換するために最低30万円かかってしまいます。
コンビニエンスストアの駐車場でブレーキとアクセルをふみ間違えて、お店に突っ込んでしまったとしたら、店舗の修理はもちろん、修繕のため店を閉めている間に発生したはずの売上分を休業補償として支払わなくてはいけませんし、休業を強いられた従業員の給料も補償しなくてはいけないことになります。
警報器が鳴っているにもかかわらず踏切内に侵入して列車との衝突事故を起こした人は、列車の弁償金、線路の修復、遅延による鉄道会社、地域への賠償金額を見て絶望し、不幸な道を選んでしまうこともあります。
自賠責保険は対象外、頼れるのは任意保険だけ
よく勘違いされているのは「自賠責保険(強制保険)に入っているから、対物補償はそっちだけで十分だ」と思っている人です。もしそう考えているなら自賠責保険の保険証を見直してください。補償されるのは「対人」だけです。
任意保険で対物賠償特約に加入していない人は、他人の財産を破損した場合、全額を自分で負担しなくてはいけないことになります。
補償限度額を無制限に
対物賠償保険に入ってはいるけど補償限度額を低めに抑えて、その浮いた分で車両保険に加入しているとしたら、それは早急に見直すことをおすすめします。
車両保険は自分の財産である自家用車がなんらかの損害に遭ったときに補償してくれる保険です。自分の財産を守る前に、まずは他人に迷惑をかけてしまったときの保険をかけておくべきだと思いませんか。
車を運転していれば大なり小なり事故を起こしてしまいます。自分の車はいざとなれば手放せば済むことです。それよりも、他人の大切なもの、個人だけではなく公共物など、大切なものを壊してしまったときに十分な対応をとることができるように準備しておくことがドライバーとしての義務だといえます。
対物補償を無制限にしても、年間の保険料は数千円アップするだけです。補償内容を見直すときは車両保険を付け加える前に対物賠償特約を無制限にするようにしましょう。
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